熱効率に優れるヒートポンプを採用
ご存知かもしれないが、英国政府は突然、電気自動車に対する補助金をストップした。新車価格で3万ポンド(約495万円)以下のBEV(バッテリーEV)が、1500ポンド(約24万円)の補助対象になっていたのだが、メーカーもユーザーも痛手といっていい。
【画像】小変更で航続距離をプラス シトロエンe-C4 BEVのクロスオーバーと比較 全140枚
しかし、欧州市場全体で支持を集めるシトロエンe-C4は、当初から補助金の対象外だった。2022年仕様としてフェイスリフトも受けており、人気は変わらずかもしれない。
とはいえ、今回シトロエンが施した変更には、エントリーグレードとミドルグレードの価格調整も含まれていた。e-C4のセンス・グレードなら、3万ポンド(約495万円)未満で乗ることが可能となっている。シトロエン側としても、肩透かしといえそうだ。
本来ならこのグレードを確かめたかったのだが、今回、英国シトロエンが貸し出してくれたのはトップグレードのシャインプラス。そちらは後日に取っておくことにして、発売から2年後に施された機械的な改良を確かめてみよう。
まず触れるべき変更点はエアコン。DSやプジョーなど、e-CMPプラットフォームをベースとするステランティス・グループのモデルと同様に、e-C4にも熱効率に優れるヒートポンプを用いたシステムが標準装備となっている。
ロングなギア比でエネルギー効率を向上
トランスミッションのギア比は、少しロングになった。加速性能は若干犠牲になるものの、クルージング時のエネルギー効率という点ではメリットがある。
実際、2022年仕様のe-C4の0-100km/h加速時間は10.0秒とうたわれている。一方で、フェイスリフト前は9.0秒がカタログに記載されていた。この違いは、ギア比がもたらすものだといえる。
また、最新版はA+ランクのエコノミータイヤも履いている。エネルギー効率を最大化し、航続距離を伸ばすために。
数字上は発進加速が若干鈍くなっているとはいえ、実際に一般道を運転してみると、e-C4が遅くなったと実感することはない。市街地の速度域なら、充分活発なダッシュ力を披露してくれる。駆動用モーターの最高出力は136psだ。
高速道路の速度域へ迫るにつれて、徐々に加速の勢いは鈍くなっていく。e-C4は、追い越し車線が得意とはいえない。日常的な利用では動力性能に不満を感じることはなく、運転もしやすい。
乗り心地は柔らかく、ステアリングフィールも軽く穏やか。コーナーへ侵入すると、ボディロールが大きめに感じられる。ただし、グリップ力や安定性を損なうほどの傾きではない。むしろ、快適性重視のシトロエンらしいマナーといえる。
個性に共感できれば運転を楽しめる
積極的に運転しても、予想外に楽しいとまでは感じることはないだろう。現代モデルとして、これほど柔らかく穏やかな性格付けが施されている例も珍しい。
一方で、e-C4で目的地まで素晴らしい時間を過ごせた、と感じるユーザーもいるはず。シトロエンという個性に共感できれば、自らが運転しているプロセスを楽しめると思う。
現代版、BEVのシトロエン2CVと呼ぶのは、いいすぎかもしれない。とはいえ、シリアスなフィーリングを追い求める現代モデルと比べれば、だいぶ近い側にあることは確かだ。
アップデートを経て、僅かながら航続距離も伸びている。スペック表では350-352kmがうたわているが、従来は349kmだった。高速道路や市街地などを交えた現実的な乗り方で、320km近くは1度の充電で走れそうだ。
今回の試乗ではフル充電の状態で、市街地の走行時は337kmがメーターパネルに表示されていた。高速道路を走らた後に充電すると、257kmへ短くなっていた。
2022年のフェイスリフトで獲得したヒートポンプは、冬場で特に効果を発揮するはず。ドライバーが何km先で充電することになるのか、小さくない違いを生むと予想できる。
シトロエンe-C4 シャインプラス(英国仕様)のスペック
英国価格:3万4995ポンド(約584万円)
全長:4360mm
全幅:1800mm
全高:1525mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:10.0秒
航続距離:350-352km
電費:5.9-6.9km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1561kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:50.0kWh
最高出力:136ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:−
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