これぞ現代のシトロエン「2CV」である。シトロエン「C3エアクロスSUV」に乗ったときもそう書いたけれど、こちらのフィアット「パンダ4×4」のほうがもっと似ている。私にとって、2CVに似ている、というのは最大の賛辞である。
【主要諸元(Succosa)】全長×全幅×全高:3685mm×1670mm×1615mm、ホイールベース2300mm、車両重量1130kg、乗車定員5名、エンジン875cc直列2気筒DOHCターボ(85ps/5500rpm、145Nm/1900rpm)、トランスミッション6MT、駆動方式4WD、タイヤサイズ175/65R15、価格265万8334円(OP含まず)。まずもって、エンジンがいい。「ツインエア」と呼ぶ排気量875cc直列2気筒ガソリンターボの、それこそ往年の2CVを思わせる、バタバタバタバタという空冷みたいなサウンドもいいし、アイドリング時にクルマがグラグラ揺れるほど大きな振動も、じつに味わい深い。
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ツインエアは、4バルブではあるけれど、2本の吸気バルブを油圧ピストンが自在に動かすことで効率を高めるという、フィアットご自慢の「マルチエア」という革新的システムを備えている。
搭載するエンジンは、875cc直列2気筒DOHCターボ(85ps/5500rpm、145Nm/1900rpm)。トランスミッションは6MT。ユニークな形状のハンドブレーキレバー。マルチエアとターボチャージャーのおかげで、最高出力85ps/5500rpmと最大トルク145Nm /1900rpmを発揮するわけだけれど、なぜこんなに振動がでかいのかといえば、2気筒、ふたつのシリンダーが単気筒エンジンのように、一緒に上下運動しているからだ。そうやって生まれる振動を打ち消すべく、大きなバランサーがついている。
この独特のメカニズムが、低回転時に2CVの水平対向2気筒のような、トットコ揺れながら走り出すフィールをつくりだしている、と思われる。無振動、無音の電気モーター時代にあって、振動とバタバタ音を発する、人間味あふれるエンジンなのだ。
JC08モード燃費は15.5km/L。タイヤサイズは175/65R15。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビーム。各所に「4×4」を示すロゴがあしらわれる。その振動は4×4化によって最低地上高が上がって、すなわち重心が高くなることによって、より強調されている。フツーのFWDのパンダより揺れる。少なくとも、そういう気分が味わえる。その揺れ具合はたいへん長閑で、古きよき時代の小型車をおもわせる。
優れた乗り心地ギアボックスは6速のマニュアルが奢られている。5速じゃなくて6速なんである。シフト・フィールはガッチャンガッチャン、鶴が恩返しで機を織るみたいな、って機織りしたことはありませんが、そういう感じ。確実ではあるけれど、ストロークが大きくて、精密機械というより民具の趣がある。
前後バンパーやアルミホイールのデザインは、4×4専用。豊富な小物入れが特徴のインテリア。楕円形状のメーターは、アナログ。インフォメーションディスプレイはモノクロ。走り出してしまえば、ツインエア・エンジンはなめらかにまわる。中低速のトルクがゆたかで、5000rpm以上まわることはまわるけれど、上までまわしてもあまり意味はない。でもまわりたがる。なので、思わずまわす。意味はないけど、楽しい。
乗り心地がいい。高めの着座位置も、ハンモックのような優しいシートの感じも、筆者の記憶のなかの2CVに似ている。乗り心地がいいのは、SUV化によって最低地上高が上がって、サスペンションのストロークが増えているためだろう。山道はチョロっと走っただけだけれど、ロールがでかくて、でも、ハンドリングはいい。そういうところも2CVみたいだ。
電子式ディファレンシャルロック付き。オーディオコントローラー付きのステアリング・ホイール。2CVと違うのは、2CVが1990年に生産中止になってはや30年の歳月が流れている点である。かたやクラシック・カー、こなた現役の生産車。実用車として考えたら、がぜんパンダに軍配があがる。現行3代目パンダは、2012年デビューだけれど、フィアットはまだまだ引っ張るつもりのようで、さる1月24日、500ともども、新たにマイルド・ハイブリッドをくわえると発表している。
2020年の導入も期待したい!なお、今回、筆者がご紹介したフィアット パンダ4×4は、2018年7月に100台が輸入された限定車、「フォレスタ(イタリア語で「森」の意)」である。前後左右にSUV風のしつらえがあって、専用の15インチのアルミ・ホイールを履いている。車高は65mmばかり上がっていて、それらの積み重ねが、タフでワイルド、ファニーな雰囲気を醸し出している。電子制御のAWDで全天候型。くわえて、繰り返しになるけれど、好きなひとにはなにものにも代えがたい6速マニュアル。価格は当時の輸入SUVで最も廉価な、税抜き233万円。
シート表皮はファブリック。運転席は高さ調整機能付き。リアウインドウの開閉は手動。ラゲッジルーム容量は通常時225リッター。リアシート格納時は870リッターにまで拡大する。フロアマットはパンダのロゴ入り。2019年7月には「Succosa(スッコーサ)」という限定モデルを80台販売している。“ジューシー”を意味するイタリア語で、ヴィヴィッドなシチリアオレンジのボディ色がその名前の由来だとされる。
というように、輸入元のFCAジャパンはパンダ4×4を忘れた頃に限定販売するのが、毎年夏の恒例のようになっている。2020年は、さてどうなのか? 果報は寝て待て。
余談ながら、筆者は3年前の2017年3月、ローマでパンダのレンタカーを借りて、フィレンツェまで300km北上し、さらにピサの斜塔を見てローマに戻る、という旅をした。3日間で800km。ツインエアではなくて、1.2リッター直列4気筒“ファイア”エンジンの5MTで、最初はツマンナイと思ったのだけれど、走るほどに印象が変わった。130km/hで巡航できて、意外と静かで乗り心地がよくて、信頼感が増していった。全開でガンガンいける。満タン法による燃費はリッターあたり14kmで、財布にやさしい。
そのパンダの1.2より、ツインエアの4×4のほうがより個性が強くてオモシロい、と、筆者は思った。2020年も、入れてくださ~い。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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