ヴィッツ改めヤリスはTNGAモデル最良の走り
トヨタ自動車がコンパクトカークラスの新型車として「ヤリス」を新開発した。これまで国内ではヴィッツの名で人気を博していたが、新プラットフォームであるTNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)を初採用しすべてを刷新。グローバルで展開されていた「ヤリス」の名を国内でも採用しグローバルカーとしての位置づけを明確化している。
新型トヨタ・ヤリス発表! クラスを超えた安全&運転支援装備を備えたコンパクトモデル
そのプロトタイプモデルに早速試乗する機会を得られたのでリポートしよう。
試乗会場は千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイだ。クローズドサーキットだがタイムアタックをしようというわけではない。さまざまな速度レンジで走行性能を安全に確かめられるのでテスターとしては有り難いのだ。
まずは1.5リッターHV(ハイブリッド)のメイングレードを試す。
今回HVに採用されたのは新開発の1.5リッター直列3気筒直噴ダイナミックフォースエンジンである。高圧縮比とロングストローク(97.6×80.5)にVVTiの可変吸排気バルブを備える。これに従来よりも30%パワーアップされた電動モーターを組み合わせHVユニットとしている。駆動用バッテリーとしてリチウムイオンセルユニットを後席下にレイアウトしている。
シフトレバーが電子式から機械式物理レバーに改められAT(オートマチック)モデルと同じシフトパターンで操作方式が統一された。レバーまわりはやや安っぽさが拭えないが、コンパクトクラスの世界スタンダードとして十分なコストパフォーマンスと信頼性を選択したようだ。
システムを起動しDレンジで走行開始。今回EVモードで130km/hまで走行できるという説明だったが、実際は55km/hほどでエンジンが始動した。すでに車速が乗っていれば130km/hでもEVモードになるという意味で、発進から130km/hまでEVで速度を上げられる訳ではないということだ。
走り初めて感じられるのはサスペンションの質感が極めて高いということ。ダンパーの反力が弱くタイヤがスムースに転動し、4輪の接地感に優れる。コーナーに入っていくとライントレース性がよく狙ったラインを正確に走行でき、グリップ限界も高い。強化されたパワーステアリングモーターとステアリングラックの剛性が上がったことでステアリング操作は軽く正確で振動もない。高級車クラスの操舵フィールに仕上げられていることに驚かされた。
徐々にペースを上げていくがサスペンションのストローク感が豊で車両姿勢も安定している。かなり攻めても破綻傾向にならず限界が高いと感じた。車体剛性が高くしっかりしたサスペンション保持がされていてTNGAの資質の高さに改めて感心させられた。この上質なハンドリング感はこれまでのTNGA採用モデルのなかで一番といえるレベルだ。
HVモデルには後輪用モーターを備える4輪駆動のe-FOURも設定があり試すことができた。とはいえe-FOURは発進アシストを主目的としていて50~60km/hまでしか機能しない。一旦走りだしてしまえば後輪が駆動力を出す場面は雪道やアイスバーン以外ではほぼない。
しかしリヤアクスルまわりはモーターとダブルウイッシュボーン専用サスペンションの採用などによりFFのHVより約50kg重くなるので、雪国の生活4駆専用と考えるべきだろう。
やや気になるのは後席広さ
次に1.5リッターガソリン仕様を試す。こちらも新開発の直列3気筒ダイナミックフォースエンジンを採用しているが、そのヘッドはD4でポート噴射と直噴を使い分けるトヨタ独自の方式が採用され、HV用エンジンと差別化されている。
ATはダイレクトシフトーCVTで発進ギヤ付きワイドレンジ仕様だ。CVTといってもステップ比が刻まれていてずっとエンジンを高回転にしたままの加速フィールではない。しかし3000回転を越えるあたりから3気筒特有なエンジン音がきになるようになり6000回転まで回すと音量もかなり大きくなる。車内だけでなく車外騒音レベルも高いようで遮音性能はHV車と大きく異なる。
1.5リッターガソリン仕様にはなんと6速MT(マニュアルトランスミッション)の設定があり、3ペダルのスポーティな走りが楽しめた。トヨタはこの新型ヤリス1.5ガソリン6速MT仕様をベースにワンメイクレースなども開催する意向だという。
どのグレード、モデルに乗っても足まわりの秀逸さは一様で、今回もっとも評価されるべき部分といえそうだ。
一方ホイールベースはアクアと同じ2550mmとなったが、ドライビングポジションの最適化とハイブリッドバッテリーをリヤアクスル前方に後席下に置いたため、後席の足もとスペースは十分ではなかった。
ホンダ・フィットや日産ノートがゆとりのある後席スペースを確保しているのに対し、ヤリスはマツダ2(デミオ)並みの後席スペースで前席優先思想と言える。こうしたパッケージングレイアウトがグローバルマーケットでどう評価されるのかも今後注目していきたい。
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