もっと多くの人にクルマを楽しむ機会を!
ハンドドライブでクルマを運転する人向けのドライビングテクニック講習およびレース参戦も目指したスクールである、HDRS(ハンド・ドライブ・レーシング・スクール)。その2021年の最終回となるスクールが11月29日、千葉県・袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された。
車いすレーサー青木拓磨、長年の夢だった「ル・マン24時間レース参戦」を終え「激戦」を振り返る
車いすドライバーの青木拓磨選手が理事長を務める、一般社団法人国際スポーツアビリティ協会が主催するイベントだ。2輪ロードレース世界選手権(WGP)に参戦していたものの、1998年シーズン直前にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされた青木拓磨選手が立ち上げたもの。自身の4輪レース活動からのフィードバックも具体的に指導しながら、健常者・障がい者が分け隔てなくサーキット走行を楽しもうという趣旨のもと開催されている。
ハンド・ドライブでサーキット走行を楽しむ
レーシングスクールという名称の通り、現在も継続して参加しているうちの1名がレースをすることを目標にこのスクールに参加しているが、必ずしもレースに参戦することを最終目標としているわけではない。もちろん、アクティブクラッチやグイドシンプレックスなどの手動装置を搭載した日産マーチやホンダN-ONE のサーキット専用車も用意しているが、参加者が普段使用している自身のクルマを持ち込んで、サーキット走行を楽しむことができる。
もちろんサーキット走行の場合、身体をしっかりと固定する必要があるが、脊椎損傷の半身不随といった障がいを負った参加者では、踏ん張れないからこそ、シートに身体をしっかり固定することが重要。そのためシート位置やシートベルトについては入念にレクチャーがされている。
上腕だけで車両の操作をする車いすドライバーにとって、ハンドルの位置は非常に重要で、近すぎても遠すぎてもダメだという。ハンドル操作中に肩が浮いてしまうと、コーナーでGが掛かったときに身体が揺れてしまって正確な操作ができなくなってしまうのだ。シートベルトも多点式のほうが望ましいが、通常の3点式でもシートベルトをロックさせてしっかりと身体を固定。運転操作を的確に行える乗車姿勢を再確認できるイベントとなっている。
プログラムとしては、まず広場でのトレーニングというカタチで、パイロンスラローム、そしてフルブレーキングという操作の確認からスタート。アクセルとブレーキに加え激しいステアリング操作を行うスラロームはなかなか大変。身体をしっかり支えられない状態ではしっかり走れないのである。さらにブレーキ操作も腕力の問題になるのでそんなに簡単ではない。ここで基本的な操作が確認できれば、次はサーキットでの走行となる。サーキット走行は先導車による完熟走行に続き、3本の走行セッションが用意されている。
サーキット再デビューに向けての参加者の広がり
ほかにはない特色あるスクールなのだが、障がい者だけでなく健常者も参加が可能。ただ障がい者については、これまでは基本的には青木選手のような下肢障がいを持つドライバーを対象としてきた。今回初参加となったのが、国寄隆祐さん。双極性障がいという精神疾患を持つ参加者である。
以前はAライセンスまで所持していた国寄さんだが、この病気を機に一度はライセンスを返却。現在はJAFのメディカル部門との確認を経て、条件付きのBライセンスの発給を受けている。精神安定剤の服用や過度な負担は避けるようにすることで生活を安定させており、このライセンスに関しても立て直しを図り、ライセンスの再取得も視野に、今回試しに参加をしてみたという。
走行を終えて国寄さんは「久しぶりのレーシングコースということで、1本目は緊張してしまっていましたが、2本目からは少し心にも余裕が出てきて、ブレーキングポイントとかライン取りとか、周回を重ねていき、もっとうまく走れるように考えながら走行することができました。少し昔の感覚が戻ってきて楽しかったです。このスクールがサーキット再デビューの良いきっかけになりました。次は普通の走行会に参加したいです」とコメントしてくれた。
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