昭和は遠くなりにけり…だが、昭和生まれの国産スポーティカーは、日本だけでなく世界的にもブームとなっている。そんな昭和の名車たちを時系列で紹介していこう。
ミケロッティが手がけた初めての日本車。総生産台数はわずか60数台
プリンス・スカイラインスポーツ:1962年(昭和37年)4月発売
スカイラインスポーツは、日本車として最初にイタリアン・デザインを取り入れたクルマとして歴史に名をとどめている。同時にそれは、日本車としてはじめての本格的スポーツカーを志向したクルマとしても大きな意味をもっている。
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たしかに1959年(昭和34年)6月には、FRP製ボディを載せたダットサン・スポーツS211がデビューしてはいるが、性能的にはさほど見るべきものはなかったし、その発展型であるフェアレディ1500の登場は、62年10月のことだったからである。
1960年11月の第42回トリノ・ショーでプリンス・グロリアのシャシに、一匹狼のデザイナー、ジョバンニ・ミケロッティがデザインしたボディを架装した2ドア・クーペとコンバーチブルが出品されて注目を集めた。
デュアル・ヘッドライトを45度傾けた異色のフロントデザインを示した作品で、これは翌61年の東京モーターショーにも展示された後、62年4月から市販に移された。
第2次大戦後の世界の自動車界の大きな特徴のひとつとして、イタリアのカロッツェリア/デザイナーが自動車スタイリングについて主導的役割を強めたことがあげられる。
ピニンファリーナ、ベルトーネ、そして後にはジウジアーロがその任にあたるわけだが、ミケロッティも独特の造形感覚により多くの名作を残している。中でもトライアンフ社での業績は、量産車のトライアンフ・ヘラルドをはじめとして数多いが、スカイライン・スポーツも彼の重要な作品のひとつといってよい。
戦前の日本の乗用車に、今日的な意味での“デザイン”があったかどうか甚だ疑わしいが、戦後になっても少なくとも1955年のトヨペット・クラウン、ダットサン110のデビューまでは、デザイン不在の状態が長く続いた。
そして日本車のデザインに新風を吹き込んだのが、あくまでもヨーロッパ的なバランス感覚を重んじたダットサン・ブルーバード310(1959年)であることは衆目の一致するところだが、50年代のプリンスのデザイン・ポリシーはそれとはやや異なり、アメリカ車的な派手好みな傾向が目立っている。
初代スカイライン、グロリアにしても、ツートーンカラー、テールフィンなどアメリカの流行に忠実だったが、その性はスカイラインスポーツにも反映している。ヨーロッパのスポーツカーといえば2座もしくは2プラス2と相場が決まっていたのだが、クーペは5座、コンバーチブルは4座となっている。もっとも、ベースがグロリアだったのだから当然だろう。
エンジンはグロリアのGB4型で、直4のOHVで1862ccだが、吸排気系の改良により出力は94psに増大している。
ホイールベースは2535mm、全長×全幅×全高は4650×1695×1410mm(クーペは1385mm)で、重量は1365kg、馬力(SAE)当たり重量は13.6kg/psである。
前輪はウイッシュボーン/コイル独立懸架、後輪はドディオン・アクスルが採用され、ロードホールディングに優れ、最高速も当時の日本車最高の150km/hとなっていた。
第1回日本グランプリ(1963年5月)には、スカイラインスポーツも2台参加し、フェアレディ、MGB、トライアンフTR3/4あたりとせり合ったが、のちに日本を代表する名ドライバー、生沢徹のドライブでも10位に止った(優勝はフェアレディ)。
今から考えるとスカイラインスポーツの性格はやや中途半端だった。スポーツカーとしての決定的なパンチもなく、ポピュラー・スポーツカーとしての大衆性も見られなかった。何しろ値段はクーペで185万円、コンバーチブルは195万円と、クラウンの2倍、ブルーバードの約3倍と、まさに高嶺の花でしかなかった。
作られたのもわずか60数台だが、その後の日本の車づくり、本格的デザインの重要性を強く印象づけた点では、はかり知れぬ重要な役割を果した。しかし、不遇なパイオニアとして、2年後にひっそりと姿を消した。
スカイラインスポーツ(コンバーチブル) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4650×1695×1385(1410)mm
●ホイールベース:2470mm
●重量:1520(1350)kg
●エンジン型式・種類:GB4型・直4 OHV
●排気量:1862cc
●最高出力:94ps/4800rpm
●最大トルク:15.6kgm/3600rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:5.90-15 4PR
●価格:185(195)万円
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