■「ここまで進化するとは!」 新型ハスラーが見せた驚きの走りとは
まさか、ここまで進化するとは。筆者(桃田健史)はスズキ新型「ハスラー」の最上位グレードの「ハイブリッドXターボ・4WD」に乗って、心底驚きました。
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とにかく、走りがもの凄くパワフル。時速20キロくらいまでは、モーターがグッとアシスト。時速20キロから時速40キロあたりはターボがグッと効いて、そのうえCVTが実に伸びやかなのです。
車内で思わず「ディーゼルエンジンか?」と唸ってしまうほど、ど太いトルク感で、気分は自然とアゲアゲ、ワクワク。
気になっていた乗り心地は、ズッシリ&シッカリ。ハンドリングはスッキリ。
こうした優れた運動特性とアウトドアライクな内装が、じつによくマッチしています。内装面も、9インチモニター(メーカーオプション)やインパネを含めた色見も鮮やかで、遊び心をくすぐります。
筆者はこれまで、初代ハスラーの運動特性、とくに乗り心地について厳しい評価をしてきました。路面からの突き上げが強いのです。こうした声は、累計約48万台となったハスラーユーザーから指摘されてきました。
スズキ本社営業関係者によると「後席の乗り心地はなんとかならないのか」という声が多かったといいます。
また、ホンダ「N-BOX」の登場によって、軽の走りの水準が一気に上がり、スズキとしても新型ハスラーでは乗り心地やハンドリングなど、クルマの基本性能を上げる努力をするのは当然です。
新型ハスラーの技術的な背景については、筆者は2019年12月24日にスズキが都内で開催した新型ハスラー記者発表会に参加し、各部門関係者から詳しく話を聞きました。
その場には、さまざまな生活シーンや遊び方を見える化した展示があったのですが、やはりクルマは実際に走らせてみないと分からないものだと、今回の試乗でつくづく思いました。
※ ※ ※
今回の新型ハスラーの試乗は、スズキがメディア向けに千葉県内で実施した試乗会でおこないました。
用意された試乗車は、ハイブリッドXターボ・4WDと、ハイブリッドX・2WDの2台です。
試乗後、新型ハスラーの開発統括者である、スズキ四輪商品第一部・チーフエンジニア・課長の竹中秀昭氏と話をする機会がありました。
そのなかで「ハイブリッドXターボ4WDがメチャいい」「ノンターボの乗り味は少し硬めでは。車内の静粛性が高い分、時速50キロ前後でのこもり音がちょっと気になる」といった試乗の感想を伝えるとともに、いくつかの質問をぶつけてみました。
まず、新型ハスラーが目指したのはなにか、という点です。
竹中さんの言葉をまとめますと、初代ハスラーを企画した2010年代前半は、ハスラーが目指したアウトドアは一般的なユーザーにとって、少し遠い存在でした。
それが近年、自転車や衣料品において、本格的なアウトドアグッズを日常生活で使うようになりはじめました。
こうした時代の変化を受け、スズキ全体として商品企画・開発・デザイン・実験がワンチームとなり、実際にセレクトショップなどライフスタイル系の商業施設などに足を運んで、新型ハスラーのあるべき姿を探したといいます。
■ハスラー開発の鍵となった「機能感」
新型ハスラーのあるべき姿を目指すうえで、キーポイントとなったのが「タフさと力強さ」のバランスだと、筆者は感じました。
林業などのプロや長年にわたるコアなユーザーが主体となる、同社の本格軽クロカンモデル「ジムニー」ならば、ユーザーの声を徹底的に集めて細かく分類することで、商品の方向性はある程度定まるはずです。
一方、ユーザー数が累計約48万人に及び、またライフスタイル系のファッションアイテムという意味合いが強いハスラーの場合、いったいどうやって商品企画を進めたのでしょうか。
この点についてチーフエンジニアの竹中氏は、自身が2014年初頭に赤と黒のツートンカラーのハスラーを購入した際のユーザー目線を大切に、「ニッチマーケットに属するはずのハスラーが、なぜこれだけ売れたのか」を考えたそうです。
社内での協議も進めるなかで、竹中氏は「ハスラーは、それぞれのユーザーが自分で育ててきたクルマ」と再認識し、さらに「初代ハスラーをベースに考えて新型を作ると、結果的に初代と同じ(商品性)になってしまう」という見解に達しました。
ジムニーでは、“機能美”という言葉がよく使われますが、新型ハスラーでは“機能感”という認識で、デザインや走りを作り上げてきたといい、企画から開発までの道のりは、けっして緩やかではなかったといいます。
じつは、新型ハスラーは当初採用を検討していたデザインをゼロから見直しています。
パッと見では、ハスラーのデザインアイコンである丸型2灯ライトから、初代と新型は「いわゆる正常進化」だと思われがちです。
しかし、実車に触れ、そして走ってみると、デザインや走り、クルマ全体が醸し出す世界観として、新型には独特のものを感じます。
初代モデルのユーザーも、軽初体験という人も、これまでユーザーそれぞれが築いたハスラースタイルを裏切らない、新しいハスラーの世界を感じることができると思います。
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