ターボとスーパーチャージャーを備えた強力な2Lエンジンに、前後2基のモーターと駆動用バッテリーを備え、満充電約40kmほどのEV走行も可能とするXC60最上級のPHEVモデル「XC60リチャージ T8 AWDインスクリプション」。このクルマを選んだ理由と実際の活用ぶりを教えてもらった。(Motor Magazine2021年8月号より)
納得させられた世界観が、自分の意識も変革させた
神奈川県在住の山口泰成さんは、2021年3月に納車されたばかりだというボルボの最新プラグインハイブリッドカー(PHEV)「XC60リチャージ T8 AWDインスクリプション(以下、XC60 T8)」を堪能している。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
山口さんはV70を3台乗り継ぎXC60 T5からXC60 T8に乗り換えたボルボ党で、夫妻ともハンドルを握っている。ディーラーの勧めで、このXC60 T8を試乗してみたところ、気に入った。
「(T5とは)加速感が全然違っていて、驚きました」
XC60 T8にはエンジンと前後のモーターが搭載され、走行状況をクルマが判断してそれぞれを駆動と充電に使い分ける。強い加速が必要な時には、エンジンとモーターそれぞれのパワーで4本のタイヤを駆動する。
「モーターだけで走る時の静けさや、その滑らかさなどにも驚かされました」
ハイブリッドカーの中でも「マイルドハイブリッド」と呼ばれる方式のクルマは、モーターがエンジンのアシストに限られるためにモーターだけで走ることはまずないがPHEVはモーターの力のみで走行することもできる。
バッテリーだけを動力源とするピュアEV(電気自動車)は、バッテリーに蓄えられた電気の量によって航続可能距離が左右されてしまい、充電環境の違いが使い勝手を大きく限定してしまうけれども、PHEVはエンジンも搭載しているので、いわゆる「電欠(バッテリー容量が空になって走り続けられなくなってしまうこと)」の心配がなく、そこが大きな長所となっている。
山口さんの奥様はXC60 T8の、インテリアのセンスとクオリティの高さが気に入ったという。
「V70に乗っていた頃から、私もボルボ流のスカンジナビアンデザインを気に入っていましたが、このクルマはとくに良いですね」
本革シートやドア内張りなどにはブロンドカラーが用いられ、パノラマガラスサンルーフの効果もあって車内が一層と明るく感じられる。オレフォス社製クリスタルシフトノブが美しいアクセントとなって、車内を引き締めている。
エアサスペンションとB&W(バウワースアンドウィルキンス)製ハイグレードオーディオも装備されているから、車内では快適かつ有意義に過ごしている。山口さんは自宅のPCやスマートフォンなどとインターネット経由でシームレスにリンクするAppleMusic(アップルミュージック)のアプリを使っているから、車内でもさまざまな音楽を、ほぼ無尽蔵かつ簡単に楽しむことができる。
長距離を走る時は、ACC(アダプティブクルーズコントロール)やパイロットアシスト(車線維持支援機能)などの運転支援機能も活用している。運転支援機能は確実に安全性を向上させ、ドライバーの負担を軽減させるので、山口さんも積極的に使っている。
最近のクルマでは、スマホを介したインターネットへの接続や運転支援機能など、これまでになかった新しい機能や装備などが日進月歩の勢いで進化している。XC60 T8はとくに進んだ機能を多く備えていて、すべてを使いこなせればカーライフが大幅に刷新されることは間違いない。
V70に乗り始めた時から奥様の関心と好みは、クルマ以外のことにも目が向かうようになった。スウェーデンからスカンジナビアン(北欧)デザイン全般へと広がり、名作椅子と謳われているデンマークの椅子デザイナー、ハンス・ウェグナーの「Yチェア」を購入して、愛用するにいたっている。
奥様も大のお気に入り。類まれな安心感を信頼
山口さんは、購入後すぐからプラグインハイブリッドカーに乗るメリットを享受し始めている。
「ガソリンスタンドへ行く頻度が、確実に減りました」
以前のXC60 T5では1カ月に2~3回は自宅近くのスタンドへ給油に訪れていたという。しかし、XC60 T8になってからは月に1~2回で、タイミングによっては1回も訪れないことがあるほどにまで減ったそうだ。モーターとバッテリーだけでも走ることができるのでガソリンの消費量が減ったためだ。XC60 T8の走行モードで「チャージ」を選ぶと、走行しながら充電することができる。
平日の朝は子供たちを駅へ送ることから始まり、次に奥様を仕事先に送ってから自宅に戻り、自分は自転車でオフィスに通っている。夕方にはその逆のコースを走る。日常的な買い物なども、そのついでに山口さんがXC60 T8を運転してこなすことが多い。
「近所ならば、モーターだけで走れてしまうことが多いですね」
XC60 T8は走行中にも充電されるが、夜間に自宅でフルに充電しておけば、翌日には約40kmをモーターだけで走ることが可能だ。ボルボの「プラグインハイブリッド車購入サポートキャンペーン」の充電器設置費用サポートを利用した工事がすぐに始まる予定だから、さらにPHEVのメリットを享受できることになる。
全国に20カ所の高齢者介護施設「アールアンドシー湘南」を経営している山口さんは、忙しく飛び回っている。飛行機での出張も多く、羽田空港へはV8エンジン搭載のドイツ製大型SUVを運転して行っている。XC60 T8とは対照的な、エンジンのハイパフォーマンスを訴求したモデルだ。
「乗り較べると、キャラクターの違いが良くわかります。私も運転していますが、言ってみればボルボは、妻のクルマでもあります」
奥様はXC60 T8を運転して、歩行者や自転車、他のクルマなどを感知すると、さまざまな音や表示のアラートが早目に発せられることに感心し、「このクルマならば事故を起こすことがなさそうだわ」と信頼を寄せている。
事業展開がうまく進んでいるようで、ご本人もそれを自覚してポジティブに仕事を進めようとしている様子がうかがえる。物腰は穏やかで言葉も丁寧だけれども、積極的な経営攻勢が功を奏している感じが、話していてこちらにも伝わってくる。
憧れを行動で実現させて知った世界が道を開いた
最初のボルボだったV70が、現在の山口さんに大きな影響を与えたことをご本人自ら認めている。「理学療法士として勤めていた病院の院長がボルボ240エステート(=ステーションワゴン)に乗っているのを見た時から『いつかは自分もボルボのステーションワゴンに乗れるようになりたい』と憧れていました。『なりたい』だけでなく『ならなければ』と決意しました」
『いつかは自分も~』と憧れることは誰にでもできる。山口さんが違ったのは、具体的な行動として将来に起業するための準備をすぐに始めたことだった。
そのV70は、まだ結婚前だった奥様に半分を出してもらって、やっとの思いで買った。
「分不相応かもしれませんでしたが、ドアを閉めた時の重厚感や高品質な感じなど、それまで乗っていたクルマと違っていて、いい買い物ができたと感激しました」
価格は530万円だった。
「ボルボを一台買うことはできるかもしれませんが、ずっと乗り続けて、時には買い換えたりできるようになるには自分の事業を発展させていかなければなりません」
現在50歳の山口さんが起業したのは、40歳の時だった。困難や苦労にも見舞われたのではないだろうか。
「4年前には、事業の拡大に伴って資金が追い付かず、経営難に陥ったことがあります」
乗っていたハーレーダビッドソンのモーターサイクルも、手放さなければならなかった。その後に業績を回復させることができたので、買い直した新しいハーレーダビッドソンの「ファットボーイ」に、いま乗っている。
他にない特色を備えると、次なる目標も見えてくる
高齢者介護施設を経営するにあたって、山口さんが心掛けて実行しているのは、他にない特色を出すことだった。具体的には、デイサービスにリハビリテーションを組み合わせて、理学療法士を常駐させることだ。身体機能回復に軸足を置いたデイサービスが評価され、アールアンドシー湘南はその業績を伸ばし続けている。
筆者の母親も地域のデイサービスを利用しているので、山口さんの取り組みはとても興味深く聞こえた。それに関連した話が広がっても、山口さんは専門家でもない筆者や取材スタッフたちの話に耳を傾け、掴むべきヒントは逃さないように対応してくれた。そうしたところにも、好調に事業を進めていっている経営者の勢いを見る思いがした。
「スウェーデンには、歩行器やバギーなど、高機能なリハビリテーション用機材が多く、私のところで使っているものもあります」
現在の施設の内容を充実させ、さらに施設数を増やすべく、東奔西走する日々は続きそうだ。
「モーター走行の良さが実感できたので、次は電気自動車に乗ってみたいですね」
2021年中に日本で発表される予定のボルボのピュアEV「C40 RECHARGE(リチャージ)」に山口さんも興味津々だ。ボルボが人生を変えるキッカケになったと明言する山口さんには自信とともに清々しささえ漂っている。PHEVによる電動化の効能が、また次の飛躍を生み出すキッカケになるのだろう。(文:金子浩久/写真:永元秀和)
取材エピソード(文:Motor Magazine編集部)
山口さんが初めてのボルボ車、V70を購入したのは千葉県に住んでいた時のこと。その販売を担当してくれたのがボルボの正規ディーラー、東邦オートの「ボルボ・カーズ千葉店(当時)」 セールススタッフだった武蔵哲也氏だ。その後、メンテナンスや買い替えなどで山口さんと武蔵氏との関係は長く続いたが、起業した山口さんは茅ヶ崎に転居。
しばらくして近くのディーラーである「ボルボ・カー鎌倉」に連絡を取ってみたところ、その電話を受けたのが、なんと同店の店長として赴任していた武蔵氏。こちらも東邦オートが運営する店舗で、久しぶりの再会を果たしたという。トップレベルのセールススタッフとして広く知られる武蔵氏は現在、「ボルボ・カー幕張」の店長として活躍されている。
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みんなのコメント
燃料で走っても、13km/L切ってて、これまたハイブリッドなのに燃費が悪い。
BEVとエンジンの良いとこ取りしてるようなこと言ってるけど、その実態は大量の電池、エンジン、トランスミッションもと、自動車で今ある全ての重量物を積み込んだ、極端に重い車。
当然、どのエネルギーで走ろうが、効率は市販車で最悪レベル。
良く考えてから買うべき。