VWの上級SUVが新型にグレードアップ
新型VWティグアンが登場した。日本ではT-ロックとT-クロスが輸入SUV販売でトップ争いを繰り広げている。けれどグローバルでは少し状況が異なる。ここ数年、VWでもっとも売れているSUVは決まってティグアンである。それどころか、全VWのベストセラーがティグアンなのだ。
【最新モデル試乗】VWティグアンに、旅が似合う4WD復活。その万能ぶりは圧巻
ちなみにティグアンとT-ロック/T-クロスの立ち位置を説明しておくと、ティグアンは「SUVの保守本流」。対してT-ロック/T-クロスは「都市向きのクロスオーバー」と区分できる。
いまティグアンを保守本流と紹介したが、新型はご覧のとおり大幅に洗練された。無骨さは微塵もなく都会にも似合う装いを得ている。ボディパネルやキャラクターラインには微妙な曲面と曲線が盛り込まれ、スポーティで力強く、さらには未来的なニュアンスも加わった。
インテリアの進化にも目を見張る。その中心にあるのは15inの大型タッチディスプレイ。こちらはただ見やすいだけでなく、インフォテインメントのシステム全体を見直しことで操作性が大幅に向上した。
パワートレインで注目されるのは1.5ℓガソリン(130ps/250Nm)の1.5eTSIである。ヨーロッパでもともと設定されていたミラーサイクルエンジンをベースにしながら、バルブタイミングの可変幅をさらに広げたほか、48Vマイルドハイブリッドを組み合わせて効率の向上とドライバビリティの改善を図っている。
日本仕様の詳細はまだ決まっていないが、パワーユニットは1.5eTSIと2ℓディーゼルターボの2.0TDI(150ps/370Nm)が導入される見込みだ。
新型は安定したフットワークに軽快さをプラス。走りは静粛で、しかもスポーティ
国際試乗会が行なわれたのは南仏のニース周辺。まずは1.5eTSIを積んだエレガンスグレードに試乗する。
真っ先に印象に残ったのは、車内が静かなこと。マイルドハイブリッドゆえ、エンジンがかかっていない状態で走行することは基本的にない。それでもエンジン音やロードノイズ、風切り音などはほとんど聞こえず、静粛性は素晴らしい。
乗り心地は先代からいくぶん変化した。これまでのVWは、路面のザラツキや鋭角なショックをことごとく吸収。しかもボディはどっしりと落ち着いていて揺るがず、安心感と快適性が優れている点に特徴があった。
この、ある種の“落ち着き”はハンドリング面にも現れていた。スタビリティはあくまで高く、どれほど乱暴な運転をしてもリアが滑り出すことはなかった。むしろ、こうした安全性の高いハンドリングを生み出すために、安定感溢れるセッティングにしていたといってもいいくらいだ。
新型も、優しい手触りや安定感が引き続き感じられるのは共通。だがそれだけではない。乗り心地に軽く弾むような感触が認められるようになったほか、ハンドリングも安定一辺倒から俊敏さと機敏さを取り込んだ方向に軌道修正された。
こうした、軽快感溢れる乗り心地やハンドリングは、ヨーロッパ製ポピュラーカーで最近よく見られる傾向だ。それ自体に違和感は抱かない。ただし、「ドッシリ感」の権化のような存在のVWまでもがこのテイストを採り入れたことに、軽い疑問を抱いていた。
しかも、まずこのキャラクターに変化したゴルフ8やI.D.4は、軽快な足回りの方向性を完全には消化し切れていなかった。サスペンションの動きに洗練されていない部分がありボディなどに微振動が残る傾向が認められたのである。乗り心地の質感という点で、VWというブランドに似つかわしくないように私には思えた。
ところが、ティグアンはこの部分で大きな進化を遂げていた。伝統の重厚感に軽快さを付け加えながらも、サスペンションストロークの全域でしっかりダンピングが効いている。そのうえボディに微振動は残らず、質の高い乗り心地を実現していた。
これには、電子制御サスペンションのDCCがDCCプロに進化し、減衰力を伸び側と縮み側で個別に制御できる新しいダンパーを採用したことも関係しているはずだ。
ちなみに1.5eTSIは回転がスムーズないっぽうで、低回転域ではやや線が細い印象を抱いた。この弱点はマイルドハイブリッドシステムが巧みにサポートし扱いやすいエンジンに仕上がっていた。
今回は2.0TDIを積むRラインにも試乗した。基本的な印象は1.5eTSIに近い。ただし、TDIのほうが低回転域でより力強く、そしてRラインの足回りは一段とスポーティな走りを実現している。
電動化を強力に進めるフォルクスワーゲンには「もうエンジン車を積極的に開発する意思がないのか?」という不安を抱いていた。新型ティグアンに乗ってこれが杞憂であることが明らかになった。I.D.シリーズを含め、今後登場するVWの新型車には期待していい。
新型パサート・ワゴン・ショートインプレッション
新型パサートの国際試乗会は、新型ティグアンと同時開催された。理由は、MQB evoという新プラットフォーム/1.5eTSIエンジン/最新のインフォテイメント系などをティグアンとパサートで共用しているからだ。
パサートの印象もティグアンとよく似ている。室内の静粛性は素晴らしく、乗り心地は伝統的な重厚感のなかに軽快感を感じるタイプ。ただし、静粛性にしても乗り心地の快適性にしても、パサートのほうがティグアン以上に上質だった。
もうひとつパサートで特筆すべきは、ホイールベースが50mm延長され、これがそのまま後席のレッグスペースに充てられた点。これはMQBevoの採用により可能になったという。
パワートレインは1.5eTSIと2.0TDIにくわえ、1.5eTSIベースのPHEVも導入される可能性がある。ただし、セダン人気が低迷しているため、新型はヴァリアント=ワゴンのみが設定される見通しだ。
VWティグアン主要諸元
グレード=ティグアン2.0TDI Rライン
全長×全幅×全高= 4359×1859×1660mm
ホイールベース=2680mm
エンジン=1968cc直4DOHC16Vターボ(軽油仕様)
最高出力=110kW(150ps)
最大トルク=370Nm(36.7kgm)
トランスミッション=7DCT
サスペンション=前ストラット/後4リンク
ブレーキ=前ベンチレーテッドディスク/後ディスク
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.85m
最高速度= 207km/h
0→100km/h加速=9.4秒
※数値は欧州仕様
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みんなのコメント
ワーゲンの場合あまり冒険したデザインも しにくいだろうけど。