カタログに記載されているJC08モード燃費、WLTC燃費と実燃費はどれくらい違うのだろうか?
そこで、燃費自慢の4台を集めて、カタログ燃費と実燃費はどれほど違うのか、実燃費テストを敢行!
【ベストカー8月26日号注目記事】自動ブレーキ実地テスト 本当に止まれるのか!?
テスト車に選んだのはトヨタプリウス、日産ノートe-POWER、ホンダインサイト、そして編集部所有の初代プリウスの4台だ。
さて、燃費自慢の4台が、カタログ燃費とどれくらい違うのか? どのクルマが実燃費でナンバー1になるのか?
文/永田恵一
写真/平野 学
初出/ベストカー2019年7月26日号
燃費自慢のクルマ4台で実燃費テスト敢行!
テスト車:トヨタプリウス/JC08モード燃費:37.2km/L、日産ノートe-POWER/JC08モード燃費:34.0km/L、ホンダインサイト/JC08モード燃費:31.4km/L、トヨタ初代プリウス:10・15モード燃費/28.0km/L
関越自動車道は豪雨の影響で80km/Lで巡航。高低差最大30mの谷越え2回、楽には走らせないぞというコースは燃費は厳しかった。高速道路を降りた後の郊外一般道は信号も少なく、一定速度で走れる時間が長い。雨量も減り、下り坂で走れる時間が長い。雨量も減り、下り坂でバッテリーチャージもできたため、各車良好な燃費を記録した
燃費計測コースは、国交省がクリーンディーゼルの不正制御ソフトが使用されていないかを確認するための実路走行排ガス試験(RDE)ルートを踏襲したもの。
WLTCモード燃費の市街地モード、高速道路モード、郊外モードの走行モードに近い実走行環境となっている。
東京都調布市にある交通安全環境研究所をスタートし、東八道路、吉祥寺通り、甲州街道、山手通り、新目白通り、目白通りを経て、関越自動車道練馬ICに乗り、鶴ヶ島ICで降り、一般道を走り、熊谷運動公園に至る、市街地コース約27km、高速道路約30km、郊外一般道約30kmのコース。
基本的に周囲の流れに乗った走行を心がけ、エアコンは25℃のオート設定全車エコモードで走行した。今回は交通安全環境研究所のすぐ近くにあるガソリンスタンドで給油した後、テスト開始!
ルート1/市街地・一般道(交通安全環境研究所→練馬IC)
雨で気温は低かったが湿気で曇りが発生したため。デフロストを使う機会は多かった
まずは市街地コース。東京都調布市にある交通安全環境研究所から練馬ICまでの約27kmで調査した。計測前、編集部から交通安全環境研究所に移動するタイミングで初代プリウスのバッテリー上がりが発生! いきなり出鼻をくじかれる。
この燃費ルート、実は山手通りに出るまでの道が複雑。大雨と渋滞で隊列が組めないなか、各車なんとかルートを間違えず燃費計測を終えることができた。
雨の影響が非常に大きく実燃費は各車伸び悩む
今回は豪雨という悪天候により全体的に結果が伸び悩んだ。市街地編は都内の標準的な流れが20km/hといわれているところ、平均時速が15km/h(約27km移動するのに1時間45分かかった)という混雑。
さらに雨でデフロスト(曇り取り)も必要で、電動エアコンとなる初代プリウス以外の3台でもそれなりの負担になっていたと思う。
1997年登場の初代プリウスは、モーターで発進、20km/hあたりになるとエンジンが加わる。
走行中はモーターとエンジンの使い分けをクルマがマネジメントし、減速時は回生ブレーキを使って減速エネルギーをバッテリーに戻すという、現在と同じトヨタ2モーターハイブリッドの動きの基本がこの時にできていたことに改めて驚く。
初代プリウスから改良を積み重ねたのが現行プリウスで、全体的な効率が23年分向上しており(例えば発進後エンジンが加わるタイミングは40km/hあたりということもしばしば)、トップとなる22.5km/Lを記録した。
実燃費結果でプリウスに水を開けられた2台。インサイトは「プリウスほど燃費は突き詰めていない」というカタログ燃費を反映した結果。
また、ノートはワンペダルドライブによる減速に時間がかかる人もいることと、カタログ燃費通りの差が出たということだろう。
この区間はプリウスが圧勝!
ルート2/高速道路(練馬IC→鶴ヶ島IC)
関越自動車道では大雨で視界がかなり悪かった
約30kmあるこの区間では、通常クルコンを100km/hに設定してクルージングするのだが、速度を出すと身の危険を感じるほどの大雨。
スタッフ一同、ここで無茶して死ぬ気はさらさらなく、80km/h程度で安全に巡航した。無事故で計測終了……。
インサイトがノートに対し強みを見せた
高速道路編も豪雨で速度こそ遅めだったものの、各種走行抵抗は強烈で実力より10%以上悪い結果だったと思う。
初代プリウスは当時よく指摘されたエンジンのパワー不足(58馬力)もあり、区間燃費はないが、高速道路では余力がなく辛かった。
現行プリウスは悪条件下でも後述する高次元なバランスが、トップとなる21.4km/Lという燃費を記録した要因だろう。
インサイト(19.4km/L)は構造的に高速道路などでの巡航中の燃費が悪化するのを防ぐためにエンジン直結モードを備えているが、ボディサイズや車重を考えるとエンジンが1.5Lと小さいことが燃費でプリウスに見劣りした原因に感じた。
ノート(17.7km/L)に搭載されているe-POWERのエンジンは直結モードを持っていないため、高速道路のペースになるとエンジンの負担が増え、燃費も伸び悩んだ。
高速道路でもプリウスが圧勝。一般道より1.1km/L悪かった
ルート3/郊外一般道(鶴ヶ島IC→熊谷運動公園)
雨量が減り交通量も少なくなったため各車良好な燃費を記録
この区間約30kmはとってもシンプル。小雨になり各車燃費の値もよくなっていく。日本車にとって50km/h程度での巡航が一番燃費はいいのか、各車とも燃費報告が楽しくなりテンションが上がる。
熊谷運動公園に到着し、無事計測終了。しかしその後の撮影で雨が再び本降りに。各員ズブ濡れ。この日はほんと、とことんツイていなかった。
プリウスがここでも圧倒! ほか2台も20km/L台に!
郊外路になると雨は小降りになり、ようやく標準に近い条件でテストができた。
全体的には4台とも市街地編に近い印象だったが、郊外の一般道ということで流れはスムーズかつ、回生制動でバッテリーを充電できる下り坂もありと、各車ベストとなる燃費を記録した。
初代と現行プリウスはフィーリングこそ似ているが、23年間の進歩でEV走行距離の延長、フットブレーキのフィーリングの劇的な向上などにより、現行プリウスは気を使わず走って25.0km/Lを記録。
インサイト(22.1km/L)は市街地、高速道路同様に、現行プリウスとはカタログ燃費通りの差がついた。
ノート(22.4km/L)は、郊外路だと当然ながら市街地ほどペースが遅くなく、約50km/hの巡航ペースになることも多かったこと、EV走行できる頻度も減少気味だった点が、コンパクトカーながらインサイトとイーブンの燃費となった原因だろう。
3区間最高の25.0km/Lを記録したプリウスがここでも圧勝
トヨタ、ホンダ、日産のHVの仕組みと弱点
ここで、今回実燃費を計測した3台に搭載されているハイブリッドシステムをおさらいしておこう。
トヨタプリウスのTHS-IIは駆動用と発電用のモーターを持ち、エンジンと2つのモーターの動きは動力分割機構によってマネジメントされる。
歴史が長いだけに熟成、低価格化も進み、完成度は抜群。弱点は強いて挙げるなら20年以上基本が変わっていないため飽きを感じてきたのと、重量級車だとメリットが薄いことだ。
ノートのe-POWERも2モーター式だが、THS-IIと違ってエンジンは発電専用に使い、タイヤは常にモーターで駆動。
エンジンの存在感がいい意味で小さく、静か、スムーズ、レスポンスがいいというEV的な走りが味わえる。弱点は、常にモーター駆動なので、EVと同じように速度が上がると燃費が悪化することだ。
インサイトに搭載されているi-MMDはe-POWERと基本的に同じだがエンジン直結モードを持ち、 e-POWER の弱点を解消したようなシステム。
高速クルージング時にエンジンが直接タイヤを駆動して効率を高める。弱点は、エンジン直結モードはクラッチを必要とし、その分コストがかかり、スペースも必要となることだ。
総合結果/実燃費1位はプリウス!
3区間トータルの実燃費は1位がプリウス、2位がインサイト、3位がノートe-POWERという結果になった
1位/プリウス 22.9km/L(3区間のトータルの燃費)
カタログ燃費:JC08モード燃費/37.2km/L、達成率:61.6%
市街地:22.5km/L、高速道路:21.4km/L、郊外一般道:25.0km/L
2位/インサイト 19.6km/L(3区間のトータル燃費)
カタログ燃費:JC08モード燃費/31.4km/L、達成率:62.4%
市街地:17.9km/L、高速道路:19.4km/L、郊外一般道:22.1km/L
3位/ノートe-POWER 19.5km/L(3区間のトータル燃費)
カタログ燃費:JC08モード燃費/34.0km/L、達成率:57.4%
市街地:18.8km/L、高速道路:17.7km/L、郊外一般道:22.4km/L
4位/初代プリウス 満タン法で16.6km/L(3区間のトータル燃費)
カタログ燃費は10.15モード燃費/28.0km/L、達成率:59.2%
2位のインサイトに3.3km/Lの差をつけて1位に輝いた現行プリウス
3区間のトータル燃費はプリウスが22.9km/Lで1位となった。
この好結果は、プリウス自体の重量増などの不利がありながらもトヨタがプリウスをコツコツと改良し続けたことや、車格を考慮して1.8Lエンジンを選んだことの確かさ、空気抵抗の小ささとキャビンスペースの折り合いなどをハイレベルにバランスがとれた賜物だろう。
インサイト(19.6km/L)は次期フィットハイブリッドなどへの展開も考え1.5Lエンジンとしたと思われるが、インサイトのサイズを考えるとプリウスのように排気量を増やしたほうが燃費も向上するような気がする。
ノートe-POWERの19.5km/Lという燃費はインサイトとほぼイーブン。コンパクトカーであることを考えると物足りない。巡航用のエンジン直結モードを持たない点が不利に働いた。
クルマは燃費だけで選ぶものではないが、燃費でプリウスに迫るクルマが一台くらい登場するのを切に望む。e-POWERもi-MMDもTHSの歴史と比べるとまだ浅い。トヨタ以上のスピードでハイブリッド技術に磨きをかけてもらいたい!
過去に同じコースで実燃費テストを行ったクルマ
23年落ち初代プリウスは最新車に対抗できるのか?
初代プリウスの3区間のトータル燃費は16.8km/L
初代プリウス、最新型車にあるような燃費計がないため満タン法で計測したところ、なんと16.8km/Lを記録。
今まで38万km走り、出発前にバッテリー上がりを起こしたクルマが、豪雨という悪条件で出した数字だ。
今回計測した3台と比べても見劣りしない数字だし、過去計測したプリウス以外のクルマと比べてみてもその優秀さがわかる。
しかも今回、豪雨というかなり厳しい条件だし、最新車に充分対抗できるという結論で間違いないだろう。
これほど優秀なシステムをトヨタが無償開放したのだから、他社は遠慮することなく導入しては? メリットは有り余るのではないだろうか。
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