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「走りのBMW」を築いた「ノイエ・クラッセ」! クルマの「高性能」の意味を書き換えた名作を振り返ろう

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「走りのBMW」を築いた「ノイエ・クラッセ」! クルマの「高性能」の意味を書き換えた名作を振り返ろう

高性能で高品位なモダンBMWの礎となった「ノイエ・クラッセ」

 100年に一度の大変革期を迎えたクルマ業界。ドイツの大手メーカーであるBMWも、電気自動車のラインアップを充実させるなど、さまざまな対応策を講じていますが、BMWといえば高機能で高品位な高性能セダンが本流を占めてきたのも事実です。今回は、そのモダンBMWの礎となったノイエ・クラッセを振り返ります。

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敗戦後「イセッタ」で力を蓄えたBMW

 今やドイツ国内だけでなく世界的にもトップ自動車メーカーのひとつとして広く知られているBMWですが、その社名、「Bayerische Motoren Werke AG(バイエルン発動機製造株式会社)」からも明らかなように、戦前にエンジンメーカーとして誕生した経緯があります。

 その後、2輪車の生産を始め、やがては4輪車の生産を手掛けるようになりました。ですが、第2次世界大戦で敗戦国となり、とくに基幹工場のあったアイゼナハが、旧ソ連に統治される旧東ドイツのエリア内にあったことで、ドイツ国内の他メーカーよりも大きな痛手を受けることになったのです。

 しかし、鍋や釜などの生活雑貨の生産から始め、エンジンの生産、2輪車の生産、と戦前と同じ手順を踏んで、なんとか4輪車の生産までたどり着くことになりました。そんなBMWは、戦前にはスーパースポーツを生産していたのも事実で、戦後にも再度、高級なスポーツカーの生産を試みていましたが、ドイツ国内の経済復興がいまだ途上だったことなどもあって、営業的には失敗の烙印を押されることに。そんなBMWのピンチを救ったのが、BMW「イセッタ」でした。

 イセッタはそもそも、イタリアの2輪車メーカーだったイソ社で開発されたもので、その特異なスタイルからバブルカーとも呼ばれていたマイクロカーでした。イソ社からライセンス供与を受けたBMWでは、まずはエンジンを自製のものにコンバートし、さらにはスタイリングにも手を加えるなど、BMWオリジナルとしてのイセッタに進化させていきました。

 そしてその究極モデルとなったのが、4人乗りの「BMW 600」です。ただし、BMW 600はイセッタを名乗ってはいませんでしたが、基本的なパッケージとしてはイセッタの延長でしかなく、新たなモデル=コンサバなクルマとして開発されたのが「BMW 700」でした。

コンサバな「BMW 700」で経営を盛り返してやっとひと息

 そのBMW 700ですが、ボディはBMWとして初めて採用したモノコック・タイプで、しかもエクステリアデザインはイタリアのカロッツェリア、ミケロッティが担当していて、いかにもマイクロカー然としていたBMW 600とは一転、文字通り「流麗な」2ドアクーペとなっていました。

 その一方で、エンジンは2輪車の「R69」をベースに開発された697cc(最高出力40ps)の空冷フラットツインをリアにマウントして後輪を駆動。サスペンションもフロントがデュボネ式、リアがコイルで吊ったトレーリングアーム式と、600のシャシーを、サイズを拡大するとともに正常進化させたもの。つまりエクステリアに対してシャシーの方は、ずいぶんとコンサバで、なおかつコンベンショナルなパッケージでまとめられていました。

 当初は2ドアクーペのみがリリースされていたBMW 700でしたが、やがてリアウインドウを立てて後席ヘッドルームを拡大した2ドアセダンも追加投入されています。ボディサイズ的には全長3540mm×全幅1480mm×全高1270mmでホイールベースは2120mm、車両重量も860kg(セダンは960kg)と、BMW600(全長2900mm×全幅1400mm×全高1375mm、ホイールベース1700mmで車重550kg)と比べて、とくに長さの面では大きくストレッチされていました。それでも現在の国内で人気の高い軽乗用車(ダイハツ「ミライース」の2WDモデルで全長3395mm×全幅1475mm×全高1500mm、ホイールベース2455mmで車重650~670kg)に比べても、それほど冗長・肥大化したとは感じられません。

BMWが本流中の本流となる1台「1500」をリリース

 バブルカーとも呼ばれていたマイクロカーのBMWイセッタから、コンサバなクルマとなるBMW 700へと大きく舵を切ったBMWが、次なる一手としてクルマの本流中の本流となるミドルクラスの4ドアセダン、「BMW 1500」を発表したのは1961年のフランクフルトショーでした。

 BMW社内でも「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse/独で新しいクラス=New Classの意)」と呼んで開発が進められていた4ドアセダンで、発売に際してはBMW 1500の車名が与えられています。車名通り、搭載されていたのは1499ccのM10型直列4気筒エンジンで、BMWの市販モデルとしては初のSOHCのカムレイアウトを持ち、最高出力は80psでした。

 開発の当初から80psの最高出力が開発目標とされていて、1.5Lという排気量も、目標達成のために決定されたとも伝えられていますが、OHVではなくSOHCのカムレイアウトを採用したのは、吸排気バルブをクロスフローでレイアウトするためだったとされています。OHVでクロスフローとしたケースも、他メーカーなどでもこれまでに幾つか試されていたようですが、構造をシンプルにするためにOHVではなくSOHCとなったようです。

サスペンション設計も画期的だった

 エクステリアのデザインは社内デザイナーのヴィルヘルム・ホフマイスターが手がけていて、シンプルでクリーンなルックスは、今見ても古臭くない秀逸なデザインに仕上がっていました。

 シャシーについても触れておきましょう。フロントサスペンションはマクファーソン・ストラット式で、BMWとしては初の採用となりましたが、ほかのメーカーを見渡しても、このBMW 1500がもっとも早い時期に採用されたケースとして知られています。まさにノイエ・クラッセというわけです。

 一方リアサスペンションは、BMW600で初めて採用し、700にも継承されていたトレーリングアーム式を進化させたもの。それまでは進行方向に直角だったアームの支点軸を、中心に向けて20度の前進角をつけたもので、これ以降は「セミ・トレーリングアーム式」の名で、BMW各車のみならず他メーカーのさまざまなクルマにおいても多く採用されることになる、リアサスにおいては代表的な形式のひとつとなっています。あと、これもBMWの市販モデルとしては初めて、ロッキード製のディスクブレーキがフロントに装着されていたことも大きなエポックです。

やがて「2002」を経て「3シリーズ」へと連なる系譜

 1961年のフランクフルトで登場し、翌1962年の10月に市販されると大きな反響を呼んだBMW 1500は、その後、1963年の9月に「1800」、1965年には「2000」と発展モデルが登場するとともに、1964年には1500の後継モデルとして「1600」が登場しています。また、後に登場する「3シリーズ」の原点となる、2000をベースにした2ドアモデルの「2002」も登場し、さらにパフォーマンスを高めた「TI(ツーリスモ・インテルナツィオナーレ/独でツーリング・インターナショナルの意)」が追加。また1969年には2000TIにクーゲルフィッシャー製の機械式燃料噴射装置を組み込んだ「2000tii」も登場、高性能な2ドア/4ドア・セダンマーケットにおけるBMWの強みをアピールすることになりました。

 BMWが奇をてらうことなく高性能のセダンを求めていった「解」のひとつが、このBMW 1500だったことは、疑う余地がありません。

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