レースは不測の事態、想定外の連続だ。特に2クラスが混合でレースを行うスーパーGTでは、トラブルやクラッシュなど、アクシデントが絶えない。傷ついたクルマを、夜を徹して修復するメカニック、その横で頭を抱えながら算盤をはじくチームオーナー……。そんな苦労を重ねたチームを、オートスポーツwebナビゲーターの水瀬きいが励ましつつ、その大変さを数字を目安に紹介します。
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【ブログ】レースクイーン経験者ならではの視点? 決勝日に見つけたあれこれ/水瀬きいのサーキット探訪記
■あの“ツノ”はまた走ります。CARGUY ADA NSX GT3の場合
サリュー! オートスポーツwebナビゲーターの水瀬きいです☆
昨年連載を開始して、チーム関係者の皆さまには評判サイアク、ファンの皆さんにはご好評をいただいた(笑)この企画がふたたび登場です! 今回はスーパーGT第2戦富士の会場で、4月7~8日に開催された第1戦岡山で、クルマがお怪我をされたチームに怪我の具合と、治療費をうかがってまいりました~。
まず1チームめは、第1戦優勝のKEIHIN NSX-GTにまさかの“ツノ”をつけてしまった、GT300クラスのCARGUY ADA NSX GT3です。チーム代表で、その時ステアリングを握っていた木村武史選手にうかがいました。
では木村さん、前戦岡山でGT500のトップを走っていたKEIHIN NSX-GTに、777号車のパーツがくっついてしまっていましたが……。どういう状況だったのですか?
「私のスティントだったのですが、周回遅れのGT300クラスのマシンに引っかかっていて、手こずっていたんです。その時に、最終コーナーを少し早くアクセルを開けてパスしようとしたら、オーバーステアが出てしまって。ブレーキを踏んで少し戻したら、うしろにいたKEIHINさんと接触しちゃったわけです」
そしてあのパーツがKEIHIN NSX-GTにくっついちゃったのですか?
「そうです。あれはリヤのディフューザーの真ん中のパーツなのですが、あっちに『ガチャン』とくっついちゃいました」
損傷を負ったのはそこだけということは、損害額は……!?
「そのパーツはKEIHINさんに返していただいて、そのまま使える状態だったのでかかっていないです」
なんとそのままなんですか! そのディフューザーのプレートがとれたことによって、何か変わりましたか?
「そのパーツが外れなかったらもっと速くなって、1位なんて獲れちゃったかも……!? なんて(笑)。外れたことも分からないくらいだったので、もしかしたらあれ自体要らないんじゃないか……? って程度でした(笑)」
今回の第2戦では木村選手、横溝直輝選手に加えてケイ・コッツォリーノ選手もドライブするので、3人体制ですね。
「そうですね。予選で誰がアタックにいくのかでモメてます。みんな乗りたくて(笑)。そして今回からなんと、みずほ銀行がチームのスポンサーに就いたんです。なかなか日本のレースで、メガバンクのスポンサードは聞かないですよね! マシンにもスーツにも大々的にロゴが入ります」
今回から1コーナーのスタンドも『CAR GUYスタンド』というネーミングになって、スゴい勢いを感じるCARGUY RACINGですが、木村代表はとても楽しく話してくださいました。ちなみに、CARGUYのキャンピングカーの中でコーヒーをいただいたんですが、めちゃくちゃ美味しかったです。ありがとうございました☆
■柴田選手、早く良くなってくださいね。RUNUP RIVAUX GT-Rの場合
続いては、決勝レース時にModulo KENWOOD NSX GT3と接触してウォールにクラッシュしたRUNUP RIVAUX GT-R。ドライブしていた柴田優作選手は、ドクターヘリで搬送され胸椎骨折により入院となってしまいました。
今回、GT-Rも修復され富士に登場しましたが、チーム代表兼ドライバーの田中篤選手にお話をうかがってきました。まず、第1戦でのクラッシュ後の車両の状況を教えてください。
「クルマは全損でした」
……なるほど。損害額はいかほどでしたか?
「3000万円近くですね。本当だよ」
では、修復に要した期間はどのくらいだったのですか?
「1カ月ですね。鈴鹿の公式テストには参加できず、今回の第2戦もギリギリ間に合ったので、予選前の公式練習がぶっつけ本番状態。セッティングもイチからだから、結構大変ですよ。明日の青木選手にすべてかかってるかな」
今回のクラッシュでの苦労話などはありますか?
「怪我してる柴田選手がいちばん苦労してるかな。全治3カ月くらいで、いまはまだ病院のベッドの上で寝てるんじゃないかな。8月から復帰できるかな? ってところですね」
田中代表からは「3000万円近くかかったってことはデッカく書いといてね!」ということでしたので、損害額は3000万円!!!! とたくさんびっくりマークを付けておきます。
■レーシングカーに保険あるって知ってました? Modulo KENWOOD NSX GT3の場合
続いては、そのRUNUP RIVAUX GT-Rと接触してしまったModulo KENWOOD NSX GT3です。ドライブしていた道上龍選手兼代表にうかがいました。では、前戦のクラッシュの状況を教えてください。
「見てのとおり、360号車との追突ですね。外に2号車(シンティアム・アップル・ロータス)もいたからか、360号車のブレーキングポイントが違ったんですね。ブレーキングポイントの微妙な数百メートルって、僕らにとってはかなり手前の感覚であったりする。そこを避けようとしたんだけど、瞬間的に変に避けてしまったがために、相手の右リヤに当たってしまったから、相手が左にいってしまったんですね」
形はどうあれ追突で、柴田選手も負傷してしまったので、道上選手も謝罪されたそう。それで、Modulo KENWOOD NSX GT3のお怪我ですが……。
「もう顔面崩壊ですよ。鈴鹿公式テストには手術に成功して、元には戻ったけどまだ化粧していない状態でしたね。今回はお化粧してきましたけど。それに今回はボディまわりだけだったので、足回りまでいってたら、もっと費用もかかったかもしれないけど」
え~……それで今回の修理にはどれくらいの費用がかかりましたか?
「マンションは買おうと思ったら買えるくらいかもしれないですねぇ」
……むむむ。ではクルマだと、何が買えるくらいですか?
「ドイツ車……例えばメルセデスで言うと、下の方のクラスのAMGくらいは買えると思う(苦笑)。いや、もうちょっとかかるかな? 意外に高いなぁ……って感じでした」
ちなみに今回道上選手に聞いて、きいは初めて知ったんですが、今はレーシングカーの保険というものがあるんだそうで、今回もその保険を使って直したんだそうです。保険は2カ月ごとに加入で、クラッシュの時は使って、何も無ければ掛け捨て。でも多くのチームが入っているそうですよ。
「今は、走行会とかスポーツ走行で個人的に走る人もいると思いますが、その日だけ保険料払ったら、サーキットで事故した場合に保険がおりるものがあるんですよね。自分もたまに走るから入ろうと思ったら、入れなかったんですよ! というのは、サーキットに入ることを職業にしているから(笑)」と道上選手。
「サーキット走られる方は、高いクルマで走る人もいるだろうし、保険は入っておいた方がいいですよ! それにドライブレコーダーと保険は大事です! カメラは四方八方つけたいくらい(笑)」
とっても参考になる道上選手からのアドバイスでした。サーキット走られる方はご参考に!
■55万円は安いのかどうなのか……。TOYOTA PRIUS apr GTの場合
では今回のラストは、31号車TOYOTA PRIUS apr GTの金曽裕人監督にうかがいました。トップ争いを展開しながら、残念ながらリタイアしていまいました。何がどうなってしまったのですか?
「リタイアで終わってしまったのは、駆動系にトラブルがあったんです。レース中、(30号車TOYOTA PRIUS apr GTとHitotsuyama Audi R8 LMSに)ぶつかったことが要因にあったのもたしかだし、じゃあなんでそこが壊れたか……っていうとよく分からない部分があるんだけど」と金曽監督。
「まぁ、まずぶつかっちゃいけないよねって話ですね。しかもおカマ掘るなんて。いちばんダサかったのは、自分たちのチームで絡んでたところ。ハタから見たらアウディを“挟みっこ”したみたいで、ウチがすご~く悪く見える。ていねい~に深々と謝って来ました(苦笑)」
では、トラブルはすぐに治る程度だったのですか?
「すぐに治る程度でしたね。ただ、今までウチでそんなトラブルが起こるような部分じゃなかったので、非常にびっくりですよ。でも、もうこの間のテストも充分いけたから大丈夫」
というわけで、いつもの質問です。いくらくらいかかりましたか?
「また金の話や(笑)! 安いよ! 55万円くらい。60万円はいってないかな~? ってくらい。今回は、それぞれの“モノ”とか、管理とかいう問題ではなかったから、不思議な壊れ方をしたのはたしかだし、突然グッとクルマが止まったみたいな状態になってしまい、駆動系に負担がかかったんだと思う」
では最後に、スーパーGT第2戦富士のモットーを教えてください!
「当てない! ぶつけない!」
というわけで、31号車TOYOTA PRIUS apr GTはモットーどおり見事完走、しかも表彰台獲得です! さすがaprですよね。ではまた次回!
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