バラエティに富んだクルマたちがメキシコの経済を支える
島国の日本では“国境”というものはいまひとつピンとこないが、南カリフォルニアはすぐ近くにメキシコとの国境がある。
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ロサンゼルスからはクルマでだいたい3時間弱(渋滞とかもあるので)。レンタカーで国境を越えることはできないので、歩いて国境を越えてメキシコ側の国境の街“ティファナ”へ出かけることになる。数年前までは扉を通り抜けるだけでメキシコ側へ入国できたのだが、いまはメキシコ側も入国審査スペースを設けている。とはいうものの、“なんちゃって入国審査”的なもので、入国審査書類は係官が全部記入してくれるし、「何しにメキシコへ」と聞かれ、「ティファナでショッピング」と答えれば、「オッケー」というような、まさしく形式的なもの。以前は扉を抜けるだけだったので、アメリカからメキシコへの入国者管理ができなかったので、犯罪者の多くがメキシコへ逃亡したが、なんちゃってでも入国審査をすることで、出入国管理が以前よりは徹底できると考えているようだ。
さてアメリカから歩いて国境を越えてメキシコに入ると街の様子がガラリと変わるだけではない。アメリカでは見ることのできないクルマが多数走っている。アメリカ国内で正規販売される欧州ブランドは超高級車やスーパーカーを除けば、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、フォルクスワーゲン、ボルボ、ジャガー&ランドローバー、フィアット、アルファロメオなど、日本より限定的となるが、メキシコはルノーやオペルなども正規販売されており、言い換えればアメリカよりはバラエティに富んだラインアップとなっている。
筆者が初めてティファナを訪れたときは、街中で見かけるクルマは国境を越えて入ってきたアメリカからの中古車ばかりであったが(あくまで個人の感想です)、アメリカからの工場移転やアメリカの好景気を受け、ティファナもここのところは好景気が続いているようで、街もそれなり(あくまでも)に整備され、メキシコで販売されている新車に乗るひとも多くなっている。
そのため国境を越えただけで、アメリカ国内ではまずお目にかかれないクルマを多く見かけるのである。今回とくに驚いたのが“ダッジ顔”のミラージュ4ドア。日本ではハッチバックのみのミラージュだが、世界市場では4ドアセダンもラインアップされている。アメリカ国内でも“ミラージュG4”として正式にラインアップされているのだが、メキシコではなんと、“ダッジ・アティチュード”としてダッジブランド車としてラインアップされているのである。ティファナで信号待ちしていたらダッジ顔のミラージュがきて驚いてしまった。
またティファナ市内では日産キャラバンも多く見かけた。ハイエースとともに日本のキャブオーバーバンはアメリカ国内では正規販売されていないので、これもティファナならではの光景。これはメキシコでの乗り合いバス“コレクティーボ”として使われているため。ハイエースも一部あったが、圧倒的にキャラバンが多かった。
あとは忘れてはならないのは“日産ツル”。これは1984年からメキシコで現地生産されたサニーベースのモデルであり、最終型は7代目をベースに独自進化したバージョンが最近まで販売されていた。
メキシコでのいろいろなメーカーのサイトを見ていると、多くのメーカーで新興国向けモデルのラインアップが目立っていた。そのためホンダ・シティもよく走っていたりして、これもアメリカを走るクルマと大きく異なることにつながっているようだ。筆者のあくまで感覚だが、毎年メキシコでラインアップされている新車を購入して乗っているひとが増えているように見える。今年は富裕層が中心となるようだが、マツダ車を好んで乗っているように思えるほど走っていた。
当然ながらメキシコ側からクルマでアメリカに入ることも可能で、西海岸でメキシコ国境に最も近い大都市サンディエゴあたりでは、オペル車やルノー車(メキシコではダチア車もルノーブランドとなり、ルノー・ダスターとなっていた)がアメリカのフリーウェイを走っている姿は違和感以外の何ものでもないものを感じさせてくれている。
ティファナといえば、とかく治安が悪く怪しいイメージが先行してしまいがちだが、好調なアメリカ経済の恩恵を十分受けている感じを走っているクルマからも強くそれを感じた。
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