■ターボがハイパワー化の必須アイテムだったころ
現在は、燃費などの環境性能向上にターボチャージャー(以下、ターボ)が使われていますが、1979年に日産が日本初のターボ装着車「セドリック/グロリア」を発売すると、各メーカーはパワーアップ目的でターボに注目します。
そしてパワー競争が加速し、昭和の終わりまでに高性能モデルが続々登場しました。
今回は、昭和の時代に一気に広まったDOHCターボエンジンを搭載するモデル3車種をピックアップして紹介します。
●日産「スカイライン2000ターボインタークーラーRS」
1970年代の排出ガス規制により「牙を抜かれた」といわれた5代目日産「スカイライン」でしたが、1980年に2リッター直列6気筒SOHCエンジンにターボを装着した「スカイライン2000GTターボ」を発売して、パワーを取り戻します。
そして1981年に発売された6代目では2リッター直列4気筒4バルブDOHCで150馬力(グロス)を発揮するFJ20E型エンジンを搭載する「スカイライン2000RS」が登場。
改めて「DOHC=高性能」という事実を広め、1983年にはさらにFJ20E型エンジンにターボチャージャーを装着し190馬力(グロス)まで出力を高めたFJ20ET型エンジンを搭載する「スカイライン2000ターボRS」も登場します。
これでも十分にハイパワーでしたが、さらに1984年には、ターボによって圧縮された空気を冷却して効率を高めるインタークーラーを装着し、最高出力205馬力(グロス)に高められた「スカイライン2000ターボインタークーラーRS」を発売し、2リッターでトップクラスに君臨。
次世代のRB型エンジンを搭載する7代目スカイラインにバトンタッチするまで、最強のスカイラインとして高い人気を誇りました。
●トヨタ「スープラ3.0GT」
1978年にデビューした初代トヨタ「セリカXX」(輸出名:スープラ)は、2.6リッター直列6気筒エンジンを搭載する北米市場を意識したクルマでした。
2代目セリカXXは直線基調のボディに「ソアラ」と同じ2.8リッター直列6気筒DOHCの5M-GEU型エンジンを搭載し、「国産200km/hオーバーカー」(市販車では180km/hでスピードリミッターが作動)の仲間入りを果たします。
しかし、3リッターV型6気筒ターボエンジンを搭載し、230馬力(グロス)を誇った3代目日産「フェアレディZ」には動力性能で及びませんでした。
そこで、1986年にセリカXXから輸出名と同じ「スープラ」に車名変更を伴うモデルチェンジをおこない、最高出力230馬力(ネット)を発揮する3リッター直列6気筒DOHCターボの7M-GTEU型エンジンを搭載する「スープラ3.0GT」が登場します。
ロングノーズでスタイリッシュな3ドアクーペは、低速トルクも大きく市街地でも快適に走れるなど、スポーティかつオールマイティなモデルでした。
市販車をベースとしたツーリングカーレースにも参戦するなど、高性能さをアピールし、若いファンの憧れの存在になります。
■64馬力規制のきっかけとなったスーパー軽自動車とは?
●スズキ「アルトワークスRS-X」
1979年に47万円と衝撃的な低価格で発売されたスズキ「アルト」は、軽ボンネットバンブームを巻き起こしました。
そして、軽自動車が日常の足として普及すると今度は高性能化が始まり、その究極の姿として、スズキは軽自動車初となるDOHCターボエンジンを搭載した「アルトワークス」シリーズを発売。
エンジンは550cc直列3気筒DOHCターボで、最高出力は64馬力(ネット)と、これ以降の軽自動車の出力規制のきっかけとなります。
バリエーションはビスカスカップリング式センターデフを採用したフルタイム4WDの「RS-R」と、2WDの「RS-S」や「RS-X」があり、とくに2WD車は610kgほどと軽量で、当時人気だったトヨタのAE86型「レビン/トレノ」を凌ぐほどのゼロ発進加速を誇りました。
アルトワークスの登場に他社も追随し、三菱は5バルブエンジンを搭載した「ミニカ ダンガンZZ」、ダイハツは「ミラTR-XX EFI」と、次々に64馬力を達成した軽自動車を発売します。
※ ※ ※
近年のターボエンジンは、直噴による緻密な制御によって自然吸気のようなフィーリングを実現し、ターボの存在を意識させないくらいに進化しました。
一方で、昭和のターボ車は「ドッカンターボ」といわれるほどパワーの出方が急激で、乗りにくいはずなのに楽しいとさえ錯覚させる魅力がありました。
いまのクルマは環境性能や安全性能を向上させつつ高い動力性能も発揮しますが、印象に残るような個性派は昔の方が多かったかもしれません。
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