巧みにグリップ力を制御する四輪駆動
今回試乗したのは、トヨタ最新のクロスオーバー純EV、bZ4X。開発途中のプロトタイプということで、ボディは入念にカモフラージュされていた。具体的なグレードなども明らかではなかった。
【画像】本気の純EV トヨタbZ4X AWDプロトタイプ 欧州で競合する純EVと写真で比較 全128枚
それでも現代の純EVとして、量産へ移れる状態にかなり近いように感じた。一部の機能が未実装だったことと、サイドミラーやパノラミック・サンルーフ付近から、風切り音が出ていたことを除いて。
オフロードシステムも味見が許された。bZ4Xは都市部での走行が前提のクロスオーバーながら、プラットフォームを共同開発したスバルの四輪駆動システム、Xモードのトヨタ仕様が搭載されるという。
渡河水深は500mmもあり、ジープ・レネゲード・トレイルホークに匹敵する。意外にも、悪路への本気度は高い。
過酷に見えるオフロードコースへbZ4Xで挑むと、四輪駆動システムが巧みにグリップ力を制御することに感心させられた。タイヤ毎にスリップを感知し、前後の駆動用モーターが必要なタイヤへパワーを適切に伝達してくれていた。
最低地上高はそこまで高くないため、原野に分け入ることは難しいかもしれない。それでも、近年の不安定な気象状態を考えれば、心強いことは間違いないだろう。
次世代のトヨタへ期待通りのインテリア
インテリアの仕上がりも印象的。次世代のトヨタへ期待する通りといって良い。素材の質感は少し冴えないとしても、充分な高級感があり、組み立て品質も高いようだ。フロントガラスの付け根部分が低く、開放的な印象もある。
気になった点といえば、メーターパネルがやや高めで、ステアリングホイールが低めになるドライビングポジション。プジョーのiコクピットを想起させるものだった。
円形のステアリングホイールでは、上部のリムがメーターに掛かってしまう。もしかすると、ヨーク型ステアリングホイールを前提にデザインされているのかもしれない。
当然のように、ダッシュボード中央には12.0インチのワイドなタッチモニターが据えられる。エアコン操作用に、適切なボタン類が用意されていることは朗報だろう。
ワイヤレスでのアンドロイド・オートとアップル・カープレイに対応し、航続距離や充電ステーションの位置など、純EVならではの情報も得られるという。試乗車はプロトタイプということで、そのサービスは実装されていなかったが。
少なくとも、モニターの表示は高精細。操作への反応も良かったとは、お伝えできる。
リアシートは、長いホイールベースを活かし、リムジンのように前後長がある。身長の高い大人でも、ゆったりくつろげるだろう。フロアがフラットだから、中央に座っても足の置き場には困らない。
荷室空間は狭め。通常で452Lという容量は、キアEV 6の490Lなどと比べて小さい。テスラ・モデルYのように、フロントのボンネットを開くと別の荷室があるわけでもない。
不足ない実力ながら価格と航続距離に依存
プロトタイプの試乗となったが、トヨタ渾身の純EV、bZ4Xはこのクラスのクロスオーバーとして不足ない実力を備えているように感じた。乗り心地も良く、インテリアの設えも良好。トヨタだから、信頼性にも不安はないだろう。
それでは、各メーカーがしのぎを削る市場に影響を及ぼせるだけの仕上がりだろうか。それは、販売価格と航続距離によって変わってきそうだ。
今のところ、bZ4Xの正式な航続距離は明らかになっていない。暫定値として知らされた数字の限り、ややもの足りないとはいえる。英国価格も、月額のリースパッケージが用意されるとはいえ、少々高めだ。
四輪駆動のbZ4Xの場合、英国では4万8350ポンド(約749万円)から。一度の充電で480km以上走れる四輪駆動のキアEV 6の方が安い。
それだけに、今回は機会がなかったが、エントリーグレードとなる前輪駆動のbZ4Xへの期待が高まる。動的能力が四輪駆動を上回ることはないとしても、航続距離と価格競争力は良くなるはず。トヨタの純EV戦略を、強力に後押しできるのではないだろうか。
トヨタbZ4X AWDプロトタイプのスペック
英国価格:5万1550ポンド(約799万円/試乗車/予想)
全長:4690mm
全幅:1850mm
全高:1650mm
最高速度:161km/h
0-100km/h加速:6.9秒
航続距離:410km以上(予想)
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:−
パワートレイン:ツインAC同期モーター
バッテリー:71.4kWh
最高出力:218ps
最大トルク:34.2kg-m
ギアボックス:シングルスピード
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