全長4400mm以内 コンパクトSUV
text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
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クルマにはさまざまなカテゴリーがあるが、最近注目されるのは、全長が4400mm以内に収まるコンパクトSUVだ。
2013年に登場したホンダ・ヴェゼルは、2014年には1か月平均で約8000台を登録するヒット商品になった。2016年にはC-HRがデビューして、2017年には1か月平均で約9800台を登録した。
直近ではダイハツがトヨタに供給するOEM車のライズが2019年に発売され、2020年1/2/6月には、小型/普通車の登録台数1位になった。
コロナ禍の影響を受ける前の1/2月には、1万台前後を登録している。
ライズの姉妹車になるダイハツ・ロッキーも、C-HRやフォレスターと同等の台数を登録した。
ダイハツは2016年にトヨタが100%出資する完全子会社になり、それ以降に発売されたブーン/トール/ロッキーは、軽自動車ではないが販売に力を入れている。この影響もあって、ロッキーも売れ行きを伸ばした。
ジムニーの人気も注目される。2018年に発売された時の国内販売目標は、軽自動車のジムニーが1年間に1万5000台(1か月平均1250台)、小型車のジムニー・シエラが1200台(1か月平均100台)であった。
それが直近の売れ行きを見ると、ジムニーが1か月に3500台前後、ジムニー・シエラも2000台前後を販売している。
ジムニーは目標値の約3倍、ジムニー・シエラは約20倍だ。
ここまで好調に売っても、納期は依然として長い。販売店によると「ジムニーの納期は今でも約1年、シエラも10か月は要します」という。
一番の魅力 小さくても「正統派」
なぜここまで小さなSUVが人気を高めたのか。
トヨタの販売店は、ライズの人気に関して以下のように返答した。
「ライズの需要には、ヴィッツ(今のヤリス)やルーミーといったコンパクトカーからの乗り替えと、RAV4やヴォクシーのような上級車種からのダウンサイジングがあります」
「いろいろなお客様のニーズが重なって売れ行きを伸ばしました」
「ライズは外観がSUVらしくてカッコ良く、5ナンバー車だから運転しやすいことが好調に売れる理由になっています」
今はSUVが人気だが、以前に比べると、野性的な雰囲気の外観が好まれる。ハリアーは都会的な上級SUVとして不動の地位を築いたが、悪路指向の強いRAV4の売れ行きも好調だ。
RAV4はハリアーと違って2WDのグレードが少なく、大半が4WDになる。
ハイブリッドの選択肢も限られるが、野性的な外観と悪路走破力を高める走りの機能が人気を呼んだのだ。
そしてライズとロッキーの外観には、RAV4を小さくしたような印象がある。5ナンバーサイズのボディも貴重な存在だ。
スズキ・クロスビーも5ナンバーサイズのSUVで、車内が広くファミリーに適するが、外観はミニバンやハイトワゴンに似ている。
その点でライズとロッキーには、正統派SUVのイメージがあり、後席と荷室も狭めながら実用性を併せ持つ。
SUVらしさ、実用性、運転のしやすさなどのバランスで人気を高めた。
古典的な悪路向けSUV回帰の傾向も
一方、スズキの販売店では、ジムニーとジムニー・シエラについて以下のように述べている。
「ジムニーとジムニー・シエラの納期は、発売直後に約1年に達しました。そこで生産規模を拡大しましたが、なかなか縮まりません」
「現行型は外観のデザインが従来型以上に人気を高めています」
ジムニー&ジムニー・シエラについても、ライズ&ロッキーと同様、外観の野性味とカッコ良さが注目されている。
もともとSUVは、大径タイヤなどによって外観に存在感があり、ワゴン風のボディで居住性や積載性も優れているために人気を得た。
ただし今は都会的なデザインのSUVが急増して、没個性の印象も受ける。そこで外観については、古典的な悪路向けのSUVに回帰する傾向が見られ始めた。
ライズ&ロッキーとジムニー&ジムニー・シエラは、この動向を踏まえた上で、日本で求められるコンパクトなサイズも満たしたからさらに人気を高めた。
高額化で200万円に収まる価格に共感
前述のトヨタの販売店からは、ライズの需要に「コンパクトカーからの乗り替えと、上級車種からのダウンサイジングがある」という話を聞けた。
コンパクトカーからの乗り替えがあるなら、コンパクトSUVが人気を得た理由として、価格の割安感もあるだろう。
例えばライズであれば、主力グレードになる2WD・Gは189万5000円だ。
コンパクトカーのヤリス2WD・1.5Gが175万6000円だから、ライズは若干高いものの同等の予算で購入できる。
軽自動車のジムニーは、全車が4WDを搭載して、最上級グレードのXCが187万5500円だ。
小型車のジムニー・シエラも4WDを搭載してJCは205万7000円になる。いずれの価格も180~200万円前後に収まる。
今は安全装備の充実や環境性能の向上によって、クルマの価格が全般的に上昇した。ミドルサイズSUVで人気の高いエクストレイルは、2Lノーマルエンジンを搭載する2WDのXi(2列シート)が304万5900円、4WDは325万6000円だ。
RAV4も人気の高い2Lノーマルエンジン搭載の4WDアドベンチャーが331万円になる。最も安価な2WD・Xでも274万3000円だ。
「お客様に購入予算を尋ねると、車両価格が200万円前後と返答する方も多いです」(販売店)
「昔から200万円が1つの基準で、今でも続いています」
300万円を超えるRAV4やエクストレイルが堅調に売れる一方で、200万円を想定するユーザーも多く、この予算にピッタリと収まるのがコンパクトSUVだ。
つまりクルマの価格が全般的に高まった結果、ライズ&ロッキーやジムニー&ジムニー・シエラが注目されている事情もある。
リセールバリューの高さも追い風に
直近ではコンパクトSUVとしてヤリス・クロスも発売され、2WD・1.5Gの価格は202万円だ。
ヤリスの同グレードを約26万円上まわるが、ヤリス・クロスでは、アルミホイールやインテリジェントクリアランスソナーが標準装着されてパーキングブレーキも電動式に上級化される。
これらを考慮すると、ヤリスと比べた時の実質的な価格上昇は15万円前後に収まる。
しかもヤリス・クロスは、数年後に高値で売却できるため、残価設定ローンの残価率(数年後の残存価値)もヤリスより高い。
その結果、残価設定ローンの月々の返済額は、同等の装備を採用した仕様同士で比べると、ヤリス・クロスがヤリスよりも少し安くなる場合もある。
こういった経済性のメリットも追い風になり、コンパクトSUVは今後ますます人気を高めるだろう。
日本では、カテゴリーを問わず、最終的には小さなクルマに行き着くようだ。
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