クルマ趣味は我慢の今だからこそ、思い切り楽しめる時に備えておきたいもの。そこで、アフターコロナに改めて味わいたい、この1年で印象に残ったクルマ達を紹介。ひと時、ともに楽しい妄想の世界に浸っていただければと思う。
12年にわたり造られた、孤高のスタイル
レーシングカーで公道を走る!──連載「西川 淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ 第2回」
まだまだ油断はできない新型コロナウィルス感染症を巡る状況。楽しいアレコレは、もう少しの辛抱だ。ではアフター・コロナにはどんなクルマで楽しもうか? 今回、候補にあげるのはマセラティグラントゥーリズモである。
そうは言ってもグラントゥーリズモ、実は生産は2019年11月11日をもって終了しており、もはや注文も受け付けていない。デビューは2007年だから、実に12年もの長い現役期間を全うしたかたちだ。
最後の思い出に……と、連れ出したのはグラントゥーリズモMCのラストエディション。改めてその姿を眺めて、今もそのデザインが強いインパクトを放っていることに、素直に感心させられてしまった。
2017年のフェイスリフトで最新のマセラティに共通の縦桟が入れられたフロントグリルは大きく口を開けていて、鋭い目つきと相まって、まるで鮫か何かのよう。サイドからリアにかけての造形は伸びやかで、いかにも華やかな雰囲気だが、とはいえ全長4920mm、ホイールベース2940mmもあるだけに、若干冗長というか大味な感は無きにしもあらず……という印象は、実はデビュー当時から変わっていない。
でも、それがいいんだよな……と、今になってみれば思える。贅沢? あるいはデカダンス? そんな匂いを濃密に漂わせる佇まいは、干支が1周以上した今になってみると、まさに孤高のものと言える。
古き良き”大排気量自然吸気エンジン
姿かたちだけでなく、このクルマは中身も見た目を裏切らない。2007年当時だって最先端だったわけではないエンジニアリングは、今となっては“古き良き時代の”と形容したくなるものだ。
その最たるがエンジンである。長大なボンネットの下に収まるのはティーポF136の型式で呼ばれる、V型8気筒で4.7リッターもの排気量をもち、しかも自然吸気の高回転型スポーツエンジンである。トランスミッションは6速AT。以前はシングルクラッチ2ペダルのMCシフトも選べたけれど、最後はこちらに一本化された。但し、それでもステアリングコラムに固定された大型のパドルを使えば、最短0.1秒での変速を実現すると謳う。
しばしば「フェラーリエンジンでしょ? 」と言われるこのエンジンは、確かにフェラーリの工場で生産されていたし、兄弟ユニットがフェラーリ430などにも積まれてはいたが、味わいは実はまったくと言っていいほど異なる。
フラットプレーンのクランクシャフトを使うフェラーリのV8は、等間隔爆発によりパワフルで、そして絶叫するかのようなハイトーンのサウンドを響かせる。一方でフラットプレーンは2次振動が避けられないことから、マセラティはスムーズさを優先させて、敢えてクロスプレーンを使っているのが大きな違いだ。
その違いは明白。フェラーリほどの炸裂感、パンチは無いが、トルクの密度感が高く、吹け上がりは滑らかで、回転の上昇につれて歌い上げるかのように音色を変化させていく。思わずアクセルを踏み込みたくなるというより、踏んでも戻しても感じられる艶めきに心満たされる。
組み合わせるのがトルコンATなのも、適度にまったり、しっとりと大人っぽい印象に繋がっている。460psなんて今や特筆すべき数字でもないが、おかげで容易に踏んで楽しめるという意味では、むしろありがたくもある。
フェラーリが先に主力を過給エンジンに移行させたのに対して、マセラティは結果的にこのティーポF136を長く使い続けることになった。しかし、その歴史にも終止符が打たれてしまった。後継車として近々デビュー予定のクーペ、MC20は何と電気自動車になる。
そこには芳醇な味わいがある
フットワークも、同様にいい意味でクラシカルだ。ボディ剛性などは今の基準で見れば大したことはなさそうなのに、走りに得も言われぬ一体感があるのは、いかにもイタリア車らしい。特にこのMCは、ダンパーを従来の電子制御式から敢えて減衰力固定式に変更しており、それが却って上下方向のピョコピョコとした動きの少ない、落ち着いた走りに繋がっている。10年以上も作って、電子制御外して、やっとまとまったのかよと悪態をつきつつも、爽快な走りに頬が緩む。しかもパワーステアリングは電動ではなく油圧式だから、ねっとりとした、要はアナログな感触がこれまた堪らない。
要するにアクセルを踏んでうっとり、ステアリングを切る時にうっとり、曲がりはじめて、またうっとりと、走っている間中、ずっと上気していられるのがマセラティ グラントゥーリズモ。電動化だCASEだと、ますます単なる移動手段としての道を邁進しつつある最近のクルマにはない芳醇な味わいが、そこにはある。機械を通して、生きる歓びを謳歌できる。そんなクルマだ。
前述の通り新車はもうオーダーできないが、モデルライフが長かっただけにユースドカーは割と豊富で、しかもリーズナブル。それこそ最後に買う内燃エンジン車に選んでもいいかも……なんて思いに駆られる1台である。
文・島下泰久 編集・iconic
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