ファンティック・キャバレロ フラットトラック125で走っていると、不思議な気分になる。なんだか、やけに速い。125cc水冷単気筒という小さくシンプルなパワーソースながら、流れの早い幹線道路で不足がないどころか、ときに余裕を持ってリードすることさえできる。
その理由はどうやら、異例にスムーズな回転フィールにあるらしい。何気なく乗っていても、液晶画面に表示される回転ゲージは頻繁に1万rpmを超える。楽々と1万2000rpmを過ぎて、さらに上昇しようとする。
一般に、バイクの単気筒エンジンは実用ユニットとしては十分だけれど、あまり「回りたがらない」ことが多い。無理に高回転まで引っ張っても、うるさくなるだけで甲斐がない。ところがフラットトラックのシングルシリンダーは、エンジン音のボリュームはアップするものの、音質は同じまま、表情も変えずにレブリミットまで回り切る。いい意味で電気モーターのようだ。その結果、ライダーは知らず知らずのうちにピークパワーを使っている。なるほど、速いわけである。
さて「ファンティック」とは聞き慣れない名前だが、1968年にイタリアで設立された2輪メーカー。やはりイタリアのメーカーである「ガレリ」に勤めていたスタッフが独立して、創業した。手始めにベルリッキ製のフレームにミナレリの50ccエンジンを載せた「キャバレロ クロス50」というスクランブラーを売り出したところ、手頃な値段と本格的なスタイルが受けて、若者の間で大ヒット。エンジンのバリエーションを、100cc、125ccと拡大。1970年には、メーカーとして年産1万台を超える規模に達した。
イタリアンブランドの常として、モータースポーツへの参加にも積極的だ。1975年にはファクトリーチームを結成。未舗装路のレースが得意で、トライアルやエンデューロで数々のタイトルを獲得した。ところが好調なレース活動とはうらはらに、会社が経営を誤り、1995年には工場を閉鎖することに……。2005年に復活して再びエンデューロの舞台で活躍するが、14年に再度倒産する。
その名はこのまま消え去るのか……と思いきや、ファンティックの名を惜しんだイタリアの投資家グループが手を差し伸べて、救済。以後、欧州、北米で売上を順調に伸ばし、2019年に日本に上陸した。
現在のラインナップは、伝統のモデル名を継承した「キャバレロ」と、オフロード用のトレールバイクたる「エンデューロ」の2シリーズに大別される。キャバレロには、同社の十八番であるスクランブラーと、北米市場での人気を見込んだフラットトラックの2モデルが用意される。
スクランブラーは、昨今のネオクシックブームの中心ともいえる車種で、オンロードスポーツをオフ用に転用したスタイルを採る。ファンティックには、“生粋のスクランブラー”を作ってきた強みがある。
フラットトラックとは、文字通りフラットなダートのオーバルコースを周回して順位を競うバイクのこと。ファンティックでは、スクランブラー同様、一般名詞を自社のモデル名としている。
キャバレロ スクランブラー、同フラットトラックとも、排気量は3種類。125cc、250cc、そして500ccから選べる。いずれも水冷4ストロークの単気筒だ。ギアは6段。2車は基本的に同じマシンだが、カラーリングやシート形状などが異なり、スクランブラーが、フロントに19インチ、リアに17インチのタイヤを履くところ、フラットトラックは前後とも19インチを装着する。ダートトラックではドリフト走行が多用されるため、コントロール幅が広い大径タイヤが好まれるのだ。
キャバレロ スクランブラーやフラットトラックは、もちろんストリートユースがメインで、前後19インチのフラットトラックは、路上ではユニークな佇まいを見せる。オンともオフともつかぬ正体不明のカッコよさと、なんというか、都会でファットバイク(自転車)を目にしたときのようなおかしみがある。
笑ってばかりもいられないのがシートの高さで、カタログ上は820mmだが、実際はもう少し高いと思う。オフ系のバイクなら柔らかい足まわりゆえ、シートに跨がればググッと下がって足つきが楽になるのだが、フラットトラックのそれは思いのほかしっかりしていて、ほとんど沈まない。身長165cm(短足)の自分だと、みごとに両足つま先立ちとなる。車重が130kg(乾燥重量)と軽いのが救いだ。
走り出してしまえば、ゆるい前傾姿勢で両手を肩より少し広げた自然なポジション。冒頭の通り、元気で滑らかなエンジンを駆使して、爽快に街を駆け抜ける。ARROWのデュアルパイプから排気音を響かせて、小排気量を使い切る楽しさがある。
ファンティックの125ccは、いやまヤマハグループの一員となったミナレリのエンジンに専用チューンを施したもの。スペックは公表されていないが、52.0✕58.6mmのボア×ストロークが、フレンチヤマハの“本気”マシン、YZF-R125と同じと聞けば、その性格がうかがい知れよう。
フラットトラックに乗っていて注意しなければいけないのは、リアのフェンダーがほとんど機能しないこと。すぐに外せるそれは簡素でレーシィだけれど、多少のオフもこなせるブロックの大きなタイヤを履いているからといって未舗装路を行くと、たちまちライダーの背中が泥だらけになる。フラットトラックで本来の居場所たるダートを試すときは、ライディングウェアも本気モードにしないといけないのだ。
前後19インチを履く個性的にしてスタイリッシュなファンティック フラットトラック。価格は、125が79万円、250が89万円、500が110万円となる。
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