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海外ライターF1コラム:不名誉な記録に近づくマグヌッセンの現状と、出場停止事件の歴史

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海外ライターF1コラム:不名誉な記録に近づくマグヌッセンの現状と、出場停止事件の歴史

 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、現在のペナルティシステムが導入されて初めて、出場停止処分を受けるかもしれないケビン・マグヌッセンの状況に焦点を当て、過去の出場停止事件についても振り返った。

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海外ライターF1コラム:F1カレンダー24戦の椅子取りゲーム。新規参入を狙う国々と、既存GPの契約状況

 F1モナコGPは、ケビン・マグヌッセンにとって、お気に入りのレースのひとつだ。モンテカルロの狭い公道サーキットは、スピード感を増幅させると、マグヌッセンは言う。

「モナコでは、他のサーキットよりもマシンが50パーセント速く感じるんだ。だからここを走り終わってマシンから降りるときには、いつも最高の気分になる」

 しかし、そのお気に入りのサーキットで、マグヌッセンは今年、F1の歴史を作るかもしれない──悪い意味でだ。彼は、ペナルティポイントが溜まって出場停止になる初めてのF1ドライバーになる可能性がある。

 偶然にも、現在のペナルティポイントシステムは、マグヌッセンがF1にデビューした2014年に導入された。それまでは、ドライバーが出場停止のペナルティを受ける場合は、単一のインシデントによって処分を決められていた。しかし新システムにおいては、ドライバーが違反を犯すたびに、ペナルティポイントが科され、12カ月以内に12ポイントが累積した場合、自動的に1戦の出場停止となる。ペナルティポイントは科されてから1年後に自動的に失効する。

 このシステムが導入されてから10年が経過したが、12ポイントに達して出場停止処分を受けたドライバーはまだいない。だが、マグヌッセンはこの数カ月、記録的な速さでポイントを積み重ね、いまや出場停止の危機に瀕している。

 マグヌッセンはわずか2カ月で10ポイントのペナルティポイントを受けた。2024年シーズン開始時にはペナルティポイントはゼロの状態だったが、第2戦サウジアラビアでアレクサンダー・アルボンに対するアクションによるペナルティで3ポイントを科された。第5戦中国で角田裕毅との接触により2ポイントを追加された後、第6戦マイアミでは、大量のペナルティを受けた。スプリントでルイス・ハミルトンとバトルをするなかで、トラックリミットを何度も超えたため、3ポイント。日曜決勝では、ローガン・サージェントとの衝突で、2ポイントを科されたのだ。

 これほどの短期間にこれほど多くのポイントを貯めたドライバーは過去にはいない。マグヌッセンの現在の10ポイントのうち、最初にポイントが削除されるのは来年3月9日。つまり、2024年のこれからの17戦(そのうち4戦はスプリント・フォーマット)において、2ポイント以上追加されてはならない、差し迫った状況だ。次に2ポイント以上追加されると、マグヌッセンは、出場停止処分を受ける。ペナルティポイントによる出場停止となるF1史上初のドライバーになるのだ。

 攻撃的なドライビングスタイルで知られるマグヌッセンは、現在、来年以降の新契約を目指して戦っている最中であるだけに、これは非常に厳しい状況だ。今週末のモナコGPは、特に注意が必要だ。追い越しがほぼ不可能なモンテカルロの狭い公道では、伝統的に多くのペナルティポイントが科される傾向にある。

 現在のペナルティポイント制度が2014年に導入される前に、出場停止のペナルティを受けたドライバーが、少ないながらも数人存在する。印象深いインシデントについて振り返ってみよう。

 最も記憶に新しいのは、マグヌッセンの元チームメイトであるロマン・グロージャンだ。2012年ベルギーGPのターン1で多重クラッシュを引き起こしたグロージャンは、次のイタリアGPへの出場を禁止された。

 長年にわたり、FIAとスチュワードは、ドライバーの行動には介入しなかった。1978年、それがきっかけで一部のトップドライバーたちが自ら行動を起こした。彼らは、イタリアGPでロニー・ピーターソンが死亡したクラッシュの責任が、当時若いドライバーだったリカルド・パトレーゼにあると考えたのだ。パトレーゼは他にもいくつかのインシデントに関与しており、トップドライバーたちはアメリカGPに最後通告を行った。「あなたたちがパトレーゼのエントリーを拒否するか、我々が出場しないか、どちらかだ」というわけだ。

 ニキ・ラウダ、エマーソン・フィッティパルディ、ジェームス・ハントなどのスターがレースに出場しない可能性が高かったため、アメリカGPの主催者はパトレーゼを出場させないことを決めた。しかし、数年後、ミラノの民事裁判所は、パトレーゼには、ピーターソンの死に関する過失は一切ないとの裁定を下した。

■失格、出場停止等の処分を受けたF1ドライバーの例

●アル・ピーズ:1969年のカナダGPで、スピードが遅すぎたため失格。

●ナイジェル・マンセル:1989年のポルトガルGPでピットで逆走した後、黒旗を無視したため、スペインGPで出場停止。

●エディ・アーバイン: 1994年のブラジルGPで衝突を引き起こしたため、3回のグランプリで出場停止。

●ミハエル・シューマッハー:1994年イギリスGPで黒旗を無視したため、2回のグランプリで出場停止。

●ミカ・ハッキネン:1994年ドイツGPでの衝突が原因で、ハンガリーGPで出場停止。

●井出有治:2006年にスーパーライセンスを取り消された。理由は「経験不足」。

●ロマン・グロージャン:2012年のベルギーGPでクラッシュを引き起こしたため、イタリアGPで出場停止。

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