「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、日産 エルグランド(プロトタイプ)だ。
日産 エルグランド(2010年:プロトタイプ)
間もなく(編集部註:2010年6月現在)フルモデルチェンジの発表が予定されている日産のフラッグシップ ミニバン、エルグランド。その最終プロトタイプの試乗がテストコースで許された。細かいスペックは未発表だが、ほぼこれが完成形とのこと。
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8年ぶりのフルモデルチェンジは、少々待たされた感じがする。それだけに満を持しての登場となる新型は従来型までの商用車派性型ミニバンではなく、乗用プラットフォームにベースを変更。モノも人もたくさん積める箱から、乗員がゆったり寛げるリビングミニバンへと立ち位置を変えてきた。
エクステリア デザインでは、全高が従来型より95mmも低くなったが、全長と全幅は従来型はもちろんほとんどのライバルを上回るサイズで、長く・広く・低くの超ロー&ワイドと迫力満点。今までの壁が迫ってくるような押し出し感とは違うが、堂々たる風格は目を見張るものがある。これまでのファンからは賛否両論かもしれないが、これがミニバンの王者を目指すための回答なのだろう。
しかしインテリアは、いままで以上におもてなし度抜群で、さらに磨きがかかったしつらえとなっている。ただし、手が届くところに便利なものがすべて揃っているような日本的お茶の間感覚とは一線を画し、毛足の長いカーペットが敷き詰められたホテルのロビーとか、飛行機のファーストクラスのような、誰もにわかりやすく、また誰もが贅沢だと感じられるような高級感にあふれている。
特筆モノはシート。特に2列目シートに座ると、これまでにない空間が味わえる。というのも、この手のクルマのシートと言えば、わりと直角気味というか、足をきちんとフロアに下ろしたような姿勢で座るものが多いのだが、新型エルグランドはLクラスセダンの後席のように、少々足を前に放り出しシートに身体を預けて座るほうがシックリくる。
しかもオットマンは当然のこと、シートバックには中折れ機能が付いているので、首を起こすことなく頭も背もたれに預けた格好でDVDが鑑賞できる。この上マッサージ機能なんて付いていたら、もう言うことなしといった感じだ。ちなみに、オットマンは助手席にも装備されている。
運転席まわりの景色も、ミニバンらしからぬ空間が広がっている。ほとんどのLサイズ ミニバンは、インパネまわりはストンと壁のような感じになっているものが多いが、まるでセダンのように抑揚がある。スイッチ類に手が届きやすいという利便性的なメリットもあるが、伝わってくる雰囲気も、いわゆるショーファー的感覚とは違い、ドライブするんだという気分になれる。
そんな雰囲気に包まれながら、走り出してみる。大きさゆえの適度なロール感などはあるものの、箱型ミニバン的にユサユサ揺れることもなく、このサイズにしてはシャキッとしたリニア感のあるフィーリングだ。よくある直線番長型走り味とは違い、コーナーなども安心感を持ちながらスルリと入っていける。低重心化とリバウンドスプリングを使ったマルチリンク式リアサスペンションのおかげか、ライントレース性も高く爽快なハンドリングが楽しめる。
これには、3.5LのV6エンジン+エクストロニックCVTというパワートレーンが、スタート時の飛び出し感もなくトルク重視のゆったり型で扱いやすいのも効いているようだ。排気量は大きいが、そこは時節柄エコドライブアシスト機能や、クルマが積極的に燃費向上をアシストしてくれるエコモードも付いているので、経済面でもさほど心配はいらないことだろう。
ミニバンというとファミリーのカーライフが浮かぶが、友人の多い独身貴族や、DINKs、子育ては終わったけれどミニバンの便利さからはもう離れられないといったシニア層たちのニーズにも、応えてくれそうな仕上がりだった。
■エルグランド 350ハイウェイスター プレミアム(プロトタイプ) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4915×1850×1815mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2020kg
●エンジン種類:V6 DOHC
●排気量:3498cc
●最高出力:206kW<280ps>/6400rpm
●最大トルク:344Nm<35.1kgm>/4400rpm
●トランスミッション:エクストロニックCVT(6速マニュアルモード付き)
●駆動方式:横置きFF
●10・15モード燃費:9.4km/L
●タイヤ:225/55R18
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みんなのコメント
そのひと昔前の車をちょっとガワかえただけで現在も販売中
10年たちましたがフルモデルチェンジの予定もありません