三菱のフラッグシップSUVは2024年10月に大幅改良を受けて販売が開始された、この最新モデルは2025年春から欧州市場に導入することを念頭に開発されたという。欧州でのニーズにも応えるクルマの特性とはどのようなものなのか、確かめることができた。
アウトランダーPHEV、一部改良のトピックは「中身の刷新」
スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル。フロア下に駆動用バッテリーを搭載する電動化モデルの人気、視線の高さによる運転のしやすさ、存在感を高めるデザインなどによりラインナップが拡大してきたジャンルではあるが、そうしたモデルの中にはSUVの「S」の性能にフィーチャーして、全高の高さを感じさせないコーナリング性能を持つ車種も多い。
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こうしたキャラクター付けはSUVにおけるひとつの解とも思えるが、一方で2021年にフルモデルチェンジしたアウトランダーPHEVは「U」の特性を引き立たせ、また発売から3年近く経過した今回のマイナーチェンジで一層強めたように感じられる。
2024年10月に発表された改良メニューの中でも、エクステリアデザインの変更はそれほど大きくなく、ダイナミックシールドデザインや筋肉質な印象を与えるボディパネルなど、好評価を得ている印象を変えることなく、フロントグリル上段をブラックパネルで覆い、テールランプのアウターレンズをスモーク化するなどの変更を行っている。
一方で大きく刷新されたのがインフォテインメントディスプレイで、サイズを従来の9インチから12.3インチに拡大。Google Mapを使った目的地検索、そして(左手で行うことになる)文字入力など、機能面が強化されている。
三菱独自の路線をゆく、スタビリティ強化の方向性
さて、システムをオンにして街中を走り出すとエンジンが始動するようなシーンがほぼない。満充電の状態だったということもあるが、バッテリー容量を20kWh→22.7kWhに拡大し、EV走行領域をアクセルペダル開度や車速など多面的に拡大しているからだという。このバッテリーの刷新は、容量を拡大しただけではなく特性も大きく変わっている。
実は従来採用されていたバッテリーはEV向けに開発されたもので走行可能距離を伸ばすための特性を持っていたが、モーター駆動領域を拡大するためには出力面で不足があったのだという。そこで新型ではPHEV向けのより出力の高いバッテリーを搭載してモーターパワーを高めている。
とはいえ前後モーターは変わっていないので主要諸元上の最高出力/最大トルクはともに変化なし。それでもシステム総合出力は20%向上し、高速道路で追い越しするようなシーンをモーター駆動だけでカバーできるのだ。この仕様、より高速域での走行性能が求められる欧州市場で販売するための改良でもあるのだという。
パワーだけでなくスタビリティの強化も同時に行われている。ただし、三菱が追求するスタビリティは一般的に言われる「スポーティさ」とは少し異なるようだ。直進安定性は当然のように高いが、高速域でコーナリングやレーンチェンジするときにじわりとボディをロールさせ、しかし不安を感じさせることなく方向転換する。
この「じわり」がポイントで、運転中に頭を急に揺さぶられるようなことがなく、運転姿勢の安定にもつながっているように感じられる。そしてこれが乗員全員の快適性につながり、3列シート仕様も用意するアウトランダーPHEVらしい走りとなっている。
製品開発本部の上平 真氏は、「ショックアブソーバーからボディから全部使ってノーズダイブ、ノーズアップ、ロールをある程度許容してタイヤに荷重をかけ、そのうえで前後モーターによるS-AWCで駆動・制動力を最適化、安心・安定した走行姿勢を追求しました」と教えてくれた。
こうした特性、パジェロやデリカなどRV(多人数で乗って楽しめるクルマ)を開発してきた三菱らしさかもしれない。過去、初代パジェロを楽しんだ私にとって、車種を、そして時代を超えて今なお同様の楽しさを味わえるのは嬉しく感じたポイントでもある。(写真:佐藤正巳)
三菱 アウトランダーPHEV P エグゼクティブパッケージ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4720×1860×1750mm
●ホイールベース:2705mm
●車両重量:2140kg
●パワートレーン:4B12型 直4 DOHCエンジン+前後2モーター
●エンジン総排気量:2359cc
●エンジン最高出力:98kW/5000rpm
●エンジン最大トルク:195Nm/4300rpm
●モーター最高出力:前85kW/後100kW
●モーター最大トルク:前255Nm/後195Nm
●バッテリー総電力量:22.7kWh
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・53L
●WLTCモード燃費:17.2km/L
●タイヤサイズ:255/45R20
●車両価格:659万4500円
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