2020年12月24日に登場した、現行日産ノート(E13型)。この間、ノートは続々と派生車を登場させ、気づけばノートファミリーは、発売前のモデルを含めると、5車種にも及んでいる。
フルモデルチェンジからそろそろ1年となるいま、活発な動きをみせていたノートについて再評価するとともに、ノートの今後についても考えてみよう。
【車名当てクイズ】この名車、迷車、珍車、ご存じですか? 第11回
文/吉川賢一
表作成/エムスリープロダクション
写真/NISSAN、奥隅圭之、中里慎一郎
[gallink]
クルマの仕上がりは申し分なし!! ただ、ガソリン車がないのはやはり痛かった
約7年ぶりにフルモデルチェンジが行われた現行ノート。発売日は2020年12月23日
ノートの最大のキーアイテムは、ノートで初採用となった第2世代e-POWERだ。先代から1.2Lのエンジン排気量は維持しながらも、モーター出力トルクを10%以上アップ。また、減速Gなどのコントロールによって、運転のしやすさがあがっている。また、発進時のフィーリングも素晴らしく、フィットe:HEVやヤリスハイブリッドとは異なる滑らかさは、ノートならではの魅力だ。
また、新開発の次世代上級小型車向けプラットフォーム「CMF-B」によって、ハンドリングや乗り心地もすっきりとした印象。全グレード最小回転半径4.9mと、取り回しも抜群に良い。路面突起との当たりの柔らかさ、といった乗り心地性能も高い仕上がりになっている。WLTCモード燃費も29.5km/L(市街地29.9、郊外32.6、高速27.6)と優秀。改良版プロパイロット(1.5と呼ぶことが多い)も装備され、クラスを超えた仕上がりで、評価も高い。
また、「小さなアリア」のようなエクステリアは、新世代を感じられるモノであった。インテリアも先進的で、メーターとナビゲーションを繋げた一体型バイザーレスディスプレイや、コンパクトな新しいシフトノブ、大型のコンソールボックス、それらを覆う表皮素材も、非常に質感が高い。オートホールド機能付のE-PKB(電動パーキングブレーキ)も全車標準搭載だ。インテリアが苦手だった日産とは思えない、質の高い仕上がりとなっており、このノートのインテリアを見て、日産車を見直した、という方も多いだろう。
いっぽう、現行ノートで最大の懸念点は、廉価なガソリンモデルがないことだ。先代のE12型ノートでは、ガソリン車が約145万円から買えたのに対し、現行では203万円~(S_2WD)。先代では、ガソリン仕様とe-POWER仕様を足すと月販1万台を超えるのが普通であった。2020年12月の現行モデル登場以降、1万台を越えたのは年度決算月(クルマが安くなるため多く売れる)である2021年3月の一度のみ。この1年の月間平均は6500台と、先代の6割ほどしか売れていない。
現行ノートの仕上がりぶりを考えると、ガソリンモデルが用意されていたら、先代同様の月販1万台は確保できたかもしれない。カーボンニュートラルに向けた日産の経営戦略とはいえ、他メーカーにあるガソリン車が欠けていることは、やはり、現行ノートの販売に大きな痛手となっていると思われる。
2020年12月の現行ノートの登場以降、月販1万台を越えたのは、2021年3月のわずか一度のみ。平均は6500台/月。(販売データ情報・出典先:一般社団法人日本自動車販売協会連合会)
続々と登場する派生車!! 特にノートオーラは秀逸
続々と登場しているノートの派生車について、確認していこう。まず、2021年2月にはノートの4WDモデルが追加。同時にノートAUTECHも発売された。同年8月には「ノートオーラ」が、10月には「ノートAUTECHクロスオーバー」が登場。今後は「ノートオーラNISMO」も登場することが発表されている。ハイペースで次々と登場したこれらの派生車たちは、それぞれ独立した役割を担っており、いずれもいいところをついている。
●ノートAUTECH(250万円~)
ノートのモデルチェンジから3カ月後の2021年3月に登場したノートAUTECH
湘南ブルーの鮮やかなカラーリングをまとったボディ(AUTECH購入者の50%はこの湘南ブルーを選ぶらしい)や専用アルミホイール、メッキ無しのシルバーエアロパーツなど、AUTECHでトータルコーディネートされたスタイリングは、先進的なノートのエクステリアデザインをさらに昇華させており、スマートでカッコよい。
インテリアも、青いレザレット(人工皮革)の前後シート表皮や、インパネのブルーの木目調「紫檀(シタン)」柄の塗装、そしてあちこちに使われている青いステッチなど、コーディネートセンスが抜群。街中ですれ違うと、どことなく、「おっ」と目につくきらびやかさがある。おしゃれでアクティブな、若々しい上質感は、ノートAUTECHならではの魅力だ。
●ノートオーラ(261万円~)
2021年8月17日に発売された上級モデルのノートオーラ
ノートを上級コンパクトカーに仕立てた「ノートオーラ」。ボディ幅を広げて3ナンバー化し、第2世代e-POWERを、現行ノートからさらに、最大出力18%UP(85kW→100kW)、最大トルク7%UP(280Nm→300Nm)させている。
ノートとノートオーラの走りで、圧倒的に違うのが静粛性の高さだ。具体的には、フロントおよびサイドガラスを透過する音が、ノートと比べて圧倒的に静か。これは、フロントガラスの中間膜に遮音性能の高いものが織り込まれていることによるそうだ。
また、インテリアのクオリティが、ノートからさらに上がった。運転席目の前にある、12.3インチのフルTFTメーターは、欧州プレミアムコンパクトとも互角に戦えるほど、サイズも充分に大きく、かつ視認性も良い。本革ステアリングも標準装備だ。BOSEのパーソナルプラスサウンドシステムも、相当頑張ったと思う。合計で8つのスピーカーを駆使し、運転席で聞く音の臨場感が半端ない。機会があればこれはぜひ、味わってみてほしい。
ノートAUTECHがおしゃれで若々しい上質感であったのに対し、ノートオーラは「落ち着いた大人の上質感」。非常に良いバランスに仕上がった、上質なコンパクトカーだ。
●ノートAUTECHクロスオーバー(253万円~)
2021年10月7日に発売されたノートAUTECHクロスオーバー
ノートAUTECHとインテリアは共通とし、車高を25mm(そのうち10mmはタイヤ外径アップによるもの)上げて走破性を高めた、ノートAUTECHクロスオーバー。大径タイヤと専用16インチホイール、樹脂フェンダーモール、ルーフモールド、そして前後にクロスオーバー専用エンブレムを搭載。フェンダーモールを含めて全幅1700mmジャストに収め、5ナンバーサイズを死守している。
ノートAUTECHとの価格差は、なんと3万3400円程度。ノートAUTECHと、リフトアップしたノートAUTECHクロスオーバー、用途や好みで選べるというのは、購入希望者にとっては悩ましくもあるが、ありがたいことだ。ファクトリーカスタム車ならではのまとまり感を楽しみつつ、オシャレかつアクティブに乗って欲しい、というAUTECHの狙いにピッタリとマッチする一台となっている。
●ノートオーラNISMO(287万円~)
2021年8月に発表され、今秋の発売が予定されているノートオーラNISMO
ノートオーラをベースに、NISMOのレーシングマシンを思わせるド派手なエアロパーツの数々で武装し、低重心かつワイドアンドローなフォルムで発表された、ノートオーラNISMO。フロントオーバーハング・リヤオーバーハングの延長、サスペンションのローダウン、リヤスポイラー形状の最適化など、車両全体で、ダウンフォースを増大させた。タイヤは、超ハイグリップな、ミシュラン製パイロットスポーツ4(サイズは205/50R17)を装着。
パワートレインは、ベースとなるノートオーラと同じだが、味付けが大きく変えられており、ノートオーラのSPORTモードがNISMOのECOモード相当になるよう調節したうえで、NISMOモードを新設。この「NISMOモード」が、パンチが効いていて実に面白く、力強く伸びのある加速感を味わえるようにセッティングされている。
第2世代e-POWERのシームレスで強い加速力と、それに呼応するシャープで強烈なハンドリングをもつノートオーラNISMOは、クルマ好きをうならせる、極上なホットハッチに仕上がっている。
いまからでも、ガソリンモデルを!!
2021年11月以降は、ノートAUTECHクロスオーバーのほか、今秋の発売が発表されているノートオーラNISMOの台数も加算されはじめるため、今よりは販売台数が上向くだろうが、今のヤリスの牙城を崩せるとは考えにくい。
ノートのe-POWER専売が、「CO2排出量削減のための電動化戦略」であるならば、ノートだけでなく、軽自動車のデイズやルークスへも、早急にe-POWER技術を投入するべきだ。ダイハツが開発したシリーズハイブリッドの「eスマートHYBRID」は、将来的には軽自動車にも搭載予定だという。1~2年以内で行われる、タントのマイチェンで投入する可能性も高い。
日産は、軽EVで主導権を握ることを公言しているが、得意であるはずのシリーズハイブリッドで負けていいのか!? 軽のシリーズハイブリッド化を先にやるのは、日産であるべきだ。
そして同時に、販売台数を増やすため、いまからでも、ノートにガソリンモデルを投入するべきだ。エネルギー政策がフワフワと定まらない政府の環境戦略にまっすぐに従うよりも、国内市場により根を下ろすことのほうが重要ではないだろうか。
続々と派生車を登場させ、ひと段落、というところであろうが、そんな暇はない。ノートは、いまよりもしたたかに活動することが、求められているのではないだろうか。
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