伝統を継承しつつスズキの本気を凝縮、売れまくりの新型を改めて解剖する
7月5日、約20年振りにフルモデルチェンジを実施した新型のスズキ・ジムニー。ラダーフレームや3リンクリジッドアクスルなど伝統の構造を継承しながらも、4WD性能が進化。スタイリングは、懐かしさを感じさせる意匠でジムニーらしさを表現した。軽4駆の老舗であるスズキの本気を凝縮した新型ジムニー。今回は、売れまくりの魅力を改めて振り返る。
「新型ジムニー」を憧れの独英クロカン2モデルに大変身させるボディキット
ジムニーファンに限らず、多くの人が待ちに待った20年振りのフルモデルチェンジ。型式がJB64Wとなった新型モデルは、見た目から走行性能、使い勝手まで想像以上に完成度が高い出来映えとなっていることで話題となっている。
開発コンセプトは、「本格的な4WD性能と無駄のない機能美を併せ持つ、世界に認められるコンパクト4×4」。ジムニーと言えば、初代がデビューした昭和45年から車名を途切れさせることなく製造・販売を続けている。その長い歴史の中で、”ジムニーと言えば軽四駆、軽四駆と言えばジムニー”というイメージを多くの人に根付かせてきた。だからファンが新型に期待していること、それは四駆(四輪駆動・4WD)としてしっかりとした性能を持っているか、に尽きたことだろう。今まで時代に流されず頑なに守り抜いてきたジムニーの伝統技術は、しっかりと生かされているわけだ。
頑丈で悪路での走破性に有効なラダーフレーム構造。エンジンを縦置きしたFRレイアウト。切り替え式のパートタイム4WD。耐久性があり、悪路でも足の動きが良い”3リンクリジッドアクスル式サスペンション”……。これらはジムニーを知る人にとっては、「やっぱりこれがジムニー」と納得してしまうおなじみのスペックである。だがそのまま継承するだけではなく、現代の技術を投入してさらに進化。ラダーフレームはねじり剛性を高め、エンジンは従来のK6AからR06Aに変更。そして4WD性能の向上を手伝ってくれる機能も採用された。例えば、万が一スタックした時に空転した車輪にブレーキを作動させ、反対側の車輪に駆動力を確保できる”ブレーキLSDトラクションコントロール”。さらに坂道での運転をサポートする、”ヒルホールドコントロール/ヒルディセントコントロール”など、「新型」を謳うに相応しい内容へと大幅に進化を遂げたのである。
【走破性の向上】3リンクリジッドアクスル式のサスペンション
足まわりも今までのジムニーと同じ、3リンクリジッドアクスル式を採用。構造自体こそ継承しているものの、各部品の最適化により乗り心地は大きく向上している。また、独立懸架方式と比べ、長いサスペンションストロークと剛性を出すことに成功。ゴツゴツした岩場などを走行する時も、優れた接地性能を実現し、高速走行でも安定感のある走りが楽しめるようになった。さらにブレーキLSDトラクションコントロールで悪路での運転のしやすさが大幅に向上したのも新型の魅力だ。
【燃費の向上】RA06を縦置きしたFRレイアウト
エンジンはK6Aターボから、アルトワークスなどに採用されるスズキの主力”RA06A”ターボに変更された。ストロークを長くし、低回転域の太いトルクでオフロードでの走行性能を向上。気になる燃費は5速MTが16.2km/L、4速ATは13.2km/Lとなる(WLTCモード)となる。また、エンジンを縦置きしてFRレイアウトとしたのも従来のジムニーと同じ。しかし、コンパクトかつ軽量となったエンジンは高い位置にマウントでき、激しい凹凸の路面を乗り越えるために必要な対障害角度を大きく確保させた。シエラと同様にアルミ製オイルパンや電動ラジエータファンを採用している。
【安全性能の向上】デュアルセンサーブレーキサポートを採用
最近のスズキ車に導入される、”デュアルセンサーブレーキ”を採用(XC標準装備、XG・XLはスズキセーフティサポート装着車にメーカーオプション設定)。今までの車線逸脱警報機能やふらつき警報機能などに加え、新型スペーシアに採用された標識認識機能も採用された。スペーシアは「車両進入禁止」だけだったが、ジムニーでは新たに「最高速度」と「はみ出し通行禁止」の標識も認識できるようになり、ドライバーにより安全な運転を促す便利な機能として大いに役立つだろう。
【デザインの向上】ムダな装飾を省いて機能美を追求した内・外装
<エクステリア>次に外・内装のデザインについて。新型はジムニーの持ち味を最大限に活用したいプロユーザー向けの「道具」として、合理的で無駄のない機能美を最大限に追求した。エクステリアで先代のJB23から大きく変わった点は、2代目ジムニーを連想させるスクエアなボディ形状になったこと。Aピラーの角度を立たせることで、ウインドシールドからの視界を確保し、運転のしやすさに貢献。またピラーを立てることで、雪などがフロントガラス周りに堆積しにくいというメリットがある。
また、バンパーの形状は走破性を考慮し、端の部分が切れ上がった形状に。気兼ねなく過酷な環境へと進めるようにバンパーの塗装を省略し、材料着色樹脂にしたのもポイントだ。さらにJB23で丸型だったフェンダーアーチは、タイヤ交換が行ないやすい台形に。テールランプは、バックドアからバンパーへと移設。荷室開口面積が拡大し、荷物の出し入れがしやすくなった。
ベルトラインは水平とし、クォーターガラスの面積を大きくして後部座席からの視認性を拡大。ピラーを立てたことでルーフが広く大きくなり、ルーフレールではなくドリップレールを採用して後付けベースキャリアの有効範囲が広がった。
ボンネットは2代目を彷彿とさせるクラムシェル・フード形状。堆積した雪を落としやすい利点がある。グリルは3代目JB23と同様に、5つの穴から構成される5スロットタイプ。
JB23の社外バンパーでも目にする、切り上がったフロントバンパーの形状。グレード”XC”はヘッドランプウォッシャーを装備する。
初代・2代目に採用された、必要最小限の丸型ヘッドライト。ターンランプは初代のようにライトから独立させ、2代目JA22を連想させるコーナー部から控えた位置にセットした。
ホイールサイズは先代と同じ16インチで、P.C.D.139.7mmの5穴という点も共通だ。シンプルなデザインが好印象である。
2代目もバンパー側に内蔵されていたテールランプ。ドアミラーは、サイドアンダーミラーを採用し、直前直左の視界を確保する。
<インテリア>インテリアは華美な装飾を避け、機能性を追求したシンプルなデザインとなった。インパネは水平貴重とすることで、車両姿勢を把握しやすい。室内寸法も見直し、前席のヒップポイントを30mm後方に下げつつ、前後乗員間距離を40mm拡大。大人4人乗車でも快適にくつろげるようになった。
機能的なレイアウトから生まれた造形の立体感で、力強さを表現したダッシュボード。シボの質感は部分的に変えており、グラブバーやドアグリップにはキズが目立ちにくくグリップ性を高めるシボを採用した。
シート表皮は撥水性に優れたファブリック。柄はモデル別に2種類設定する。
メーターは立方体のクラスターに必要な計器を収め、実用性を考慮。センターの液晶に数多くの情報が表示される。また、メーター周りなどのパネルは、美しい材料着色樹脂ヘアライン仕上げ。面反射を抑える効果もある。
ドア内張りは角張のあるシンプルな造形。下部は鉄板を見せることで、ワイルドさを演出する。また、後席のシートベルトは荷室をフラットにした時に便利な脱着式を採用。XC・XLには、後席シートベルトリマインダーを装備し、ベルト着用を視覚的に促す。前方に倒すことで、352Lという大容量の荷室空間が生まれることも新型ジムニーの進化したポイントだ。
小物の収納に便利な、ラゲッジボックスを装備(XC・XL)。工具を積めるツールボックスも用意している。
他にも誌面ですべて紹介しきれないほどの魅力を注入した新型ジムニー。ディーラーオプションもかなり豊富に用意されており、自分らしい個性を出すのも楽しめそうだ。
ジムニー(5MT/4AT) ¥1,458,000~¥1,744,200/¥1,555,200~¥1,841,400http://www.suzuki.co.jp/car/jimny/
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