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映画「007」の劇中に登場したスーパーカーは結局市販されず! 不景気で幻と消えたが爪痕は残した「ジャガーC-X75」

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映画「007」の劇中に登場したスーパーカーは結局市販されず! 不景気で幻と消えたが爪痕は残した「ジャガーC-X75」

 この記事をまとめると

■2010年のパリサロンで鮮烈デビューを果たしたジャガーC-X75

SSがあって次はX! AもBないのにC・D・E・Fがある!? ジャガーの車名が謎すぎた

■映画「007スペクター」のなかでは敵の乗るクルマとしてカーチェイスを披露した

■ジャガーはC-X75の限定生産を発表するも長引く不景気に酔ってそれは実現しなかった

 ジェームス・ボンドとカーチェイスを繰り広げたジャガーC-X75

 今回は、ジャガーが2010年のパリサロンで初公開したコンセプトカー、「C-X75」のストーリーだ。と紹介するよりも、多くの人にとってそれは、24作目のジェームズ・ボンド映画である「007スペクター」で、敵役のミスター・ヒンクスがドライブするモデルとして登場し、ボンドの駆るアストンマーティンDB10とローマ市内で迫力あるカーチェイスを演じたクルマと説明したほうが、より鮮明な記憶として呼び起される存在であるのかもしれない。

 C-X75は、ジャガーとウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングの提携によって誕生した、レンジエクステンダーを備えた2シーターのEVで、その流麗なエクステリアデザインは、かのイアン・カラムの手によるものだった。

 4輪それぞれに搭載されるエレクトリックモーターは、当時はまだ新興メーカーだったYASA製のもので、4基トータルの最高出力は582kW(780馬力)、最大トルクは1600Nmを発揮した。ちなみにこのドライブトレインには、全速度域で各ホイールを独立して制御する、いわゆるトルクベクタリングの機能が組み込まれている。

 ジャガーはパリサロンにおいて、このC-X75は、自らのデザインとテクノロジーの未来を示唆するコンセプトカーであると語ったが、それはたしかに見る者を納得させるだけの話題に満ちたモデルにほかならなかった。

 バッテリーを充電するレンジエクステンダーに、ディーゼル燃料で作動する2基のマイクロガスタービンを採用したのもC-X75での大きなトピックスだった。このマイクロガスタービンは、ブラドン・ジェッツの開発によるもので、EUのテストサイクルで1kmあたり28gという低いCO2排出量を誇りながら、最大航続距離を900kmとするのに十分な電力を生み出した。

 販売が実現しなかったのが残念でならないC-X75

 バッテリーのみで走行する場合のC-X75の最大航続距離は110km。また、マイクロガスタービンはディーゼル燃料のほかにバイオ燃料、圧縮天然ガス、液体石油ガスなど、さまざまな燃料でそれを作動させることが可能だった。

 ここから電力の供給を受けるリチウムイオンバッテリーの容量は15kWhで、重量は185kg。優れた環境性能に加えて、330km/hの最高速と2.9秒の0-100km/h加速を可能にする、以上が未来のジャガー製スポーツカー、C-X75の概要である。

 パリサロンでのコンセプトカーの発表から約8カ月、ジャガーはC-X75の限定生産計画を発表する。生産台数は250台とされ、それはやはりウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングとの提携によって生み出されるものとされていた。当時のジャガーは今後5年間で40にも及ぶ新製品を市場に導入するという、50億ポンドを投じた投資計画を推進しており、C-X75の限定生産ももちろんその一環に含まれていたのだ。

 生産型では例のマイクロタービンは搭載されず、その代わりに1.6リッターのツインチャージャー付き直列4気筒ガソリンエンジンをレンジエクステンダーとして搭載。エレクトリックモーターも前後アクスルに各々1基という2モーター形式に設計変更されたが、結局、終わりの見えない世界的な不景気によって、その生産計画は2012年末に中止とされることが発表された。

 だがC-X75はその後のジャガー車に大きな影響を与え、とくにそのデザインキューはFタイプやIペースに受け継がれた。

 ジャガーがC-X75の生産化のために製作したガソリンエンジンを搭載するプロトタイプは5台とされ、そのうち3台はオークションで売却、1台はジャガーミュージアムに、そして残りの1台は例の「007スペクター」の劇用車として提供されたという。

 ジャガーはまたそれとは別に劇用に7台(諸説あり)のC-X75を製作するが、こちらはボディデザインこそオリジナルのC-X75に忠実だが、そのメカニズムはV型8気筒エンジンの搭載など、オリジナルモデルとの直接の関連性はなかった。

 仮に世界的な不況の影響を受けずに、C-X75が予定どおりに限定販売されていたとしたら、それは間違いなくカーマニアにとってコレクターズアイテムのひとつとなったことだろう。

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