冬真っ最中の今日この頃、人も寒いがクルマも極寒の中で寒さと戦っているのだ。特にエンジン系統では適温を保つのが難しい季節となる。ここで大活躍しているのが、クルマの冷えすぎを予防するグリルシャッターだ。今回はそんなグリルシャッターの働きをみていこう。
文:佐々木亘/写真:ベストカーWeb編集部
燃費向上の切り札はまさかの場所だった!! 誰も知らない所で頑張って偉いぞ!! グリルシャッター!!
■プリウスからスタート?エンジン内部の温度調整を司るクルマの中の効率の鬼
グリルシャッターはグリル開口部をシャッター式にして、暖機状態に合わせて自動開閉するというもので、古のラジエターシャッターと通ずるものがある
グリルシャッターが積極的に採用されるようになったのは、2015年の4代目プリウスの登場以降だ。
仕組みは、冷却のために使われるグリル開口部をシャッター式にして、暖機状態に合わせて自動開閉するというもの。
クルマ自身が熱ければシャッターを開け、寒ければシャッターを閉めているのだ。なんとも頭がいい。
現在ではプリウスをはじめ、クラウン・カローラシリーズなどがトヨタ車もそうだがそれ以外にも、日産セレナe-POWER、スバルのレガシィアウトバックやフォレスターなど、採用実績は多数。
特に暖機運転を苦手とする、HEV車への搭載が目立つ。
■グリルシャッターは冬場の燃費向上の切り札だった
HEV車で燃費を伸ばしづらい冬場。その原因は、車内の暖房がエンジン内部の熱を使ってしまう点にある。
暖房機能を維持するため、クルマはエンジン系統の温度を高く保とうとエンジンを動かす。
これが、温暖な時期よりも暖機(アイドリング)の時間を増やすため、燃費の悪化につながるのだ。
エンジンの温かさが暖房に奪われてしまうのに加えて、冬季は外気がエンジン周辺の熱を大きく奪っていく。せっかくエンジンが動いて熱を作っても、ラジエターが外気にさらされたままでは熱はどんどん逃げていくのだ。
さらに冷たい外気が走行風となってラジエターに当たる。冬のEV走行で、エンジンは想像以上に冷やされているのを知ってほしい。
こうした問題を一気に解決するのがグリルシャッターだ。暖められたエンジン内部の空気を、グリルシャッターを閉めることで外に逃がさない。さらに冷たい外気が直接ラジエターに当たり急冷されるのを防ぐのだ。
グリルシャッターは、エンジンにとって、脱ぎきしやすいダウンベストを着ているようなものだろう。
■空力性能も上げるってホント?でも自作は危険だからNG
前述のラジエーターシャッターもそうだが、自作したもので走ると最悪事故に繋がってしまう危険な行為だ
前述した断熱による燃費性能の向上に加えて、グリルシャッターは空気抵抗の低減にも効果を発揮する。
クルマには様々な風が当たり、クルマの中に入り込んでいる。グリルから入った風もどこかを通り外へ抜けているのだが、この時、車体内部と外部で空気の流量や流速の変化が起き、負圧が発生して空気抵抗が生まれるのだ。
こうした負圧の発生を、グリルシャッターが防いでいる。これは燃費向上にももちろんつながるが、クルマの走行性能に与える影響も大きい。
環境性能を高めながら、乗り味まで変化させてしまうのだから、小さなシャッターの担う大きな働きは侮れない。
一つ、グリルシャッターについて注意事項をお伝えしておきたい。外気によるエンジンの冷えが激しいからと言って、自作でグリルシャッターを作り、フロントグリルに貼り付けるという行為は、絶対にやめてほしい。
エンジンを冷やすために開いているのが、フロントグリルの本来の役割だ。冷却性能を自作の開閉しないシャッターで奪ってしまうと、エンジンのオーバーヒートなどのトラブルにつながってしまう。
表からは見えにくい技術。だが、その効果は計り知れないほど大きい。こうしたいい技術が今後も広がっていくことを期待したい。
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みんなのコメント
車に乗り始めたころは、冬の対策としてラジエーターグリルに段ボールを入れていました。格好悪かったけど。それと、バッテリーは古着を利用してぐるぐる巻きにしていました。
まあ、生活の知恵というやつです。
最近の車はそもそも燃費もよくなっているので、やっていませんが。ただエンジンオイルの性能向上もあって、何もしなくてもいい感じです。
ただ寒冷地仕様に、このグリルシャッターはあったほうがいいと思います。