アストン最後のV12ヴァンテージ
アストン マーティンは、2シーター・スポーツクーペのヴァンテージの記念すべき最上級モデルとして、「V12ヴァンテージ」の名を復活させた。標準のV8モデルよりも大幅に向上した性能を誇る。
【画像】アストン マーティンV12ヴァンテージ【V8モデルと写真で比較】 全92枚
新型アストン マーティンV12ヴァンテージは、333台のみの限定生産モデルで、そのすべてが発表前に販売されたという。価格は26万5000ポンド(約4140万円)からと、既存のヴァンテージF1エディションより12万3000ポンド(約1920万円)高く設定されている。
V12エンジンを搭載するヴァンテージは史上3台目であり、最後でもある。
DB11やDBSと同じ5.2LツインターボV型12気筒エンジンを搭載し、最高出力700psと最大トルク76kg-mを発揮する専用チューニングを施した。0-97km/h加速3.4秒、最高速度320km/hに達する。
「エンジンはすべてのアストン マーティンの心臓部ですが、これほどまでに重要なものはありません」と、同社は述べている。
8速ATは標準のヴァンテージから引き継がれたが、より速いシフトタイムと「ドライバーとの対話」を実現するために再調整されている。
随所に軽量化の工夫 剛性アップも
アストン マーティンのCEOであるトビアス・ムアーズは、V12ヴァンテージは同社の「ヒーローカー」であり、この最新モデルはその名の最後にふさわしいものであると述べている。
「2007年に最初のV12ヴァンテージRSコンセプトが公開されたとき、世界中のお客様やファンの皆様は、当社の最も小さく最もスポーティなモデルに、最も大きなエンジンを搭載するというアイデアを気に入ってくださいました。このレシピは長年にわたって改良され、大きな成功を収めてきましたが、本質は変わっていません」
「そして今、この血統にピリオドを打つときが来ました。それは、これまでで最も壮大にして、最も速く、最もパワフルで、最もダイナミックなV12ヴァンテージです」
標準のヴァンテージとの違いは、エンジンにとどまらない。パワーアップに伴い、根本的に再設計され、デザインを一新した。
フロントバンパー、ボンネット、ウィング、シル、リアバンパー、デッキリッドにカーボンファイバーを使用したほか、バッテリーと排気システムの軽量化によって、大型エンジンの重量を相殺しようとしている。
車重はおよそ1795kgで、標準モデルより165kgほど重くなっているものの、パワーウエイトレシオ(出力重量比)は1トンあたり390psと、20%向上しているという。
サスペンションのスプリングレートはフロントで50%、リアで40%アップし、トップマウントは13%、アンチロールバーはフロントで5%硬くなった(リアは41%柔らかくなっている)。ボディは、ストラットブレースと燃料タンクブレースをリアに追加し、8%の剛性アップを実現した。
ステアリングシステムの調整を行い、よりシャープな旋回性能を実現。また、軽量で耐久性の高いカーボンセラミックブレーキにより、制動力を高めると同時に23kgの軽量化に成功したという。
ダウンフォースは最大204kg増
大きく変貌を遂げたことは、その外観からも一目瞭然だ。フロントエンドには専用の(25%大きい)グリルとフルワイドスプリッター、ボンネットには馬蹄形の冷却用インテーク、リアエンドにはセンターエグゾースト、レーススタイルのディフューザー、大型リアウィングが設置されている。最高速度では204kgのダウンフォースが付加されているとのことだ。
インテリアでは、カーボンファイバー製シートが採用され、7.3kgの軽量化が図られている。
また、アストン マーティンは、オーダーメイドプログラム「Q」のパーソナライズにより、「同じクルマは2台とない」と強調している。
ムアーズCEOは以前、AUTOCARに対して、同社のV12エンジンがさらなる新型車に展開される可能性をほのめかしている。
「V12にはまだ可能性が残っていますし、V12ヴァンテージの存在からも、我々のスポーツカーにV12を乗せる余地があることはわかるでしょう」
アストン マーティンは、V12エンジン搭載車を製造している数少ないメーカーの1つである。
フェラーリは当面、12気筒エンジンをラインナップに残すことを約束しており、ランボルギーニは来年、アヴェンタドールの後継モデルにV12ハイブリッドを搭載する予定だ。ロールス・ロイスは2030年に完全電動化されるまでBMW由来のV12の販売を続け、メルセデス・マイバッハSクラスには引き続き6.5L V12が採用されている。
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