この記事をまとめると
■トヨタはかつてガスタービンを利用したクルマを開発していた
小排気量ならレシプロを圧倒する性能! 試験車両でわかったロータリーエンジンの底知れぬ可能性とは
■ガスタービンは低振動でエンジンがコンパクト、さまざまな燃料が使えるメリットがあった
■音が大きく、加減速に向いていないほか燃費がイマイチだったこともあり実用化しなかった
ガスタービン車「トヨタGTV」は夢のクルマになるはずだった
トヨタのGTVをご存知だろうか? セリカやレビン&トレノにあったGTVではなく、モーターショーに出品されたコンセプトカーで、ガスタービンを使ったクルマのこと。GTVとは単純に「ガス・タービン・ビークル」の略だ。
ガスタービンとはジェットエンジンと言ってもよく、自動車でお馴染みのレシプロやロータリーとはまったく違う原理で作動するタイプのエンジンだ。ジェット旅客機の羽根に付いているのがそれで、原理はタービンで圧縮空気を作ってそこで燃料を混ぜて爆発を起こして、その排気がファンをまわして推進力や回転力を得るというもの。排気がまわすファンは、元の圧縮側にも繋がっているので効率もいい。ターボチャージャーの原理もこれに近いと言っていい。
ちなみにジェット戦闘機が炎を出して飛んでいくのを見て、火の噴射が動力になっていると勘違いしている人もいるが、あれは燃え残りのガスにもう一度火を点けてさらに推進力を取り出しているから。あくまでも内部のファンが超高回転でまわって、そこから得られる風で前に進んでいるというのは変わらない。
ガスタービンのメリットは効率がいいことと、小型でも高出力が出せること。回転も超高回転までまわすことができて振動が少ないのも魅力だ。使える燃料の種類が多くて、実際にジェット機に使われているジェット燃料は灯油に近いものとなっている。つまり、燃料費も安くすることができるし、高効率だから燃費もいい。
そうなると、クルマに積むといいだろうと思うのは自然な流れで、1960年代ぐらいからアメリカで積極的に試作されていたし、トヨタも興味を示して1987年の東京モーターショーにコンセプトカーとして登場させたのが、冒頭で見たGTVだ。
スタイルはちょっと間延びした2ドアクーペといったところで、ボディサイズは全長4725×全幅1790×全高1325mm。搭載されたガスタービンエンジンは小型の2軸式で、150馬力を発生した。ちなみに2軸式とは、圧縮のファンと出力のファンが別々になっていることからこの名前が付けられていて、回転数の変化が大きい自動車向きの形式とされている。
今から約60年前から構想されていた!
じつはトヨタはこれよりも前の1965年からガスタービン車の開発に力を入れていて、ガスタービンで直接動力を得るのがGTVが初だったものの、1975年の東京モーターショーにはセンチュリーのガスタービンハイブリッド車を、また1977年にはトヨタスポーツ800をベースにしたガスタービンハイブリッド車を出品している。ヨタハチについては現車が残っているので、目にしたことがある人もいるかもしれない。
ハイブリッドということは、直接駆動に使われるのではなく、ガスタービンは発電に使われて、作られた電気はバッテリーに溜めつつモーターを使って駆動させる仕組み。現在の日産のe-POWERのようなシリーズ式ハイブリッドだった。ただ、コンパクトなのはいいものの、エンジンとして特殊で開発が難航することが予想されたので、直接動力を取り出すことを目指して誕生したのがGTVということになる。
現状普及していないことからもわかるように、ガスタービン、つまりジェットエンジンのデメリットとして、高音のノイズが発生すること。また、負荷の変化に対応しにくく(そのための2軸式だったが)、燃費も悪化するため、自動車にはあまり向かないシステムという結論になり、1990年代に入ると開発は断念されたようだ。
現在ではバスのハイブリットに使用されているし、鉄道でも試作車が作られている。つまり、回転数の変化が少なかったり、騒音やコストの問題が解消できれば採用価値はあるし、燃料を選ばなかったり、高効率、つまり燃費がいいのは大きなメリットなだけに、今後また注目を浴びるかもしれない。
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