マツダ・ロードスターには2種類の個性があり、ハンドリングをはじめフィールに訴える部分で大きな違いがあることをご存じだろうか。あまりこの点に注目している記事もなく、多くの人は気にしていない?のかも知れない。
マツダ側も2つの個性を明言していて「2種類あります」と言っている。それはMT搭載車とAT搭載車で異なり、最軽量のSグレード/MT搭載車も別枠の個性になっている。ややこしいが、A案とB案の個性と区分すると、MTモデルがA案で、AT搭載モデルと最軽量のSグレードMT搭載車がB案になっている。
例えば、トップモデルとエントリーモデルではハンドリングが異なる、乗り味が違うということはユーザーからすれば、価格も違うし装備も違うので、印象が異なっても不思議はないのかもしれない。しかし、ドライバビリティを売りにするライトウエイト・スポーツのロードスターで、そのようなことがあっても違和感がないものなのだろうか?
ロードスターはグレードによって、クルマの味が違うというのだ。このところのマツダはスカイアクティブを使うようになってから、2WDと4WDの違いも分からないほど、クルマの味は統一されてきている。CX-5もCX-3もアクセラ、デミオ、アテンザと、どれもグレード違いでのドライバビリティの違いを感じたことはない。それだけに味が違うロードスターには違和感を持ってしまうのだ。
他のクルマに目を向けてみると、ハイブリッド車とガソリン車で異なることはよくある。レクサスRCもそうだし、アウトランダーもそうだ。重量が大きく違うので、すべてが同じ範疇に入ってこない。したがって乗り味が違うということが起きている。だからロードスターにもあって当然ということなのか?
いろいろ、話を聞くと、ひとつにトランスミッション・トンネルの大きさがポイントで、ボディの下からの写真でわかるように、大きく太いブレースバーで補強されている。もちろんボディ剛性を大きく変えるパーツであり、このパーツがもたらす高剛性によってLSDが組み込まれ、リヤスタビライザーが装備され、意のままに操れるハンドリングを造り出している。もちろん要素はそれだけではないが。
ところがATミッションではミッションサイズが大きく、このブレースバーが装着できない、というのだ。そうなると、剛性はMTとは異なり、LSDとのマッチングも再検証となり、結果的にLSDやリヤスタビライザーを装着せず、ロードスターの初期モデルNA型、つまり原点回帰を目指す開発になったというのだ。
したがってブレースバーを装着したモデルはND型の本流というか、新型ロードスターの本来の姿であり、これがA案。一方で、NA型を目指したND型も存在することになったというのだ。これがB案だ。では990kgのエントリーグレードSはMTなのに、B案の乗り味になるのは、なぜか?
この点についてはウエイトの問題から、山本主査の強い意向で1000kgを切るライトウエイトモデルが必要だ、という思いからMT搭載としながらも補強ブレースバーを装着せず、LSD、リヤスタビライザーを装着しない、ATモデルと同じ乗り味のB案が存在するということになったと説明する。
このA案、B案の大きな違いはクルマの味が異なり、そのインプレッションはこちらでレポートしている。どちらもドライバビリティの楽しさがあり、好みの違いになるかもしれないというレベルの仕上がりだ。だから、この違いをしつこく考えることもないのかもしれないが、ここだけの話、開発エンジニアの中にも首をかしげる者がいるのも確かで、なぜそうしたのか?本当にミッションのサイズ問題なのかも疑問だ。
そもそもMTは専用に設計したものの、ATはアルテッツアや86/BRZに搭載しているATの流用であり、スカイアクティブではない。そしてミッションのサイズなど設計段階で分かっているハズだ。それが、「サイズが大きくてトンネル・ブレースが取り付けできなかった」という説明には合点がいかない。
本当の理由は何なのか?さらに言えば、プロトタイプ試乗会、発売前公道試乗会 において、マツダからこの違いに関し、一切説明はなかった。しかし、ある開発エンジニアに質問したところ、違いがあることは認めていたが多くは教えてくれなかった。
そして、発売前試乗会では、車両の割り当てで、偶然にもATモデルとSの2台で、つまりB案を2台乗ることになった。そして、試乗後「どうも新鮮さを感じない」と話したら、「このクルマに乗ってください」という試乗ラインアップとは別の試乗車を出してきた。
これが、走り出した瞬間に「さっき乗ったロードスターとまったく違う!」と感じたのだ。「スペシャルカー?なんだこれは?」という疑問を先ほどのエンジニアに投げかけると「こちらがわれわれが開発した新型ロードスターです」と説明していた。つまり、これが本来のND型でA案であることが分かった。
その数カ月後、正式に発売されてから公道での試乗会が再度行なわれた。この時、マツダからのプレゼンテーションで、「ダイナミック性能の2つの個性をつくりました」という話をしていた。
「だから、何だ!」という話ではあるが気になる新車ネタとして書いてみた。
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