アルファロメオのFR4ドアセダン、ジュリア(そしてステルヴィオにも)に2.2ℓディーゼルエンジン搭載モデルが追加・発売されたのは、今年(2019年)4月のことだ。ジュリアで選ぶべきは2.0ℓガソリンターボか、2.2ℓディーゼルターボか。
アルファロメオ・ジュリアのディーゼルモデルの試乗会へ、BMW320d(F30型最終モデル)に乗って出かけた。ジュリアとステルヴィオの2.0ℓ直4ガソリンターボ、2.9ℓV6ガソリンターボ、そして本稿のテーマである2.2ℓ直4ディーゼルターボの各エンジン搭載モデルが用意されていたが、今回はステルヴィオではなく、ジュリアに乗ろうと最初から決めていた。
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試乗のテーマはふたつである。
ひとつは、ジュリアで選ぶべきはガソリンかディーゼルか?
もうひとつは、アルファの最新2.2ℓ直4ディーゼルエンジンを積んだジュリアは、BMW320dやメルセデス・ベンツC220dのライバル足り得るか。
である。
JAIA(日本自動車輸入車組合)によれば、今年5月のデータでは輸入車のディーゼルエンジン搭載車の比率は27.0%と過去最高を記録している。メルセデス・ベンツもBMWも主力モデルでディーゼルを選ぶことができる。しかも、人気も高い。人気の理由は優れた経済性だけでなく、走りもいいから、である。
最初に乗ったのは2.0ℓ直4SOHCガソリンターボの2.0 TURBO スーパー(車両価格543万円)である。
ジュリアのラインアップは
2.0 TURBO(受注生産)200ps/330Nm:446万円
2.0 TURBOスーパー200ps/330Nm:543万円
2.2 TURBO DIESELスーパー190ps/450Nm:556万円
2.0 TUIRBOヴェローチェ 280ps/400Nm:587万円
2.0 TUIRBO Q4ヴェローチェ 280ps/400Nm:597万円
2.9ℓV6 BI-TURBOクアドリフォリオ 510ps/600Nm:1132万円
である。今回選んだ2台は、実質的なエントリーモデルである、スーパーのガソリンとディーゼルということになる。
全長×全幅×全高:4645mm×1865mm×1435mm
ホイールベース:2820mm
前軸軸重:800kg 後軸軸重:800kg
ディーゼルモデルは、前後重量配分50:50である。
まずガソリンのTURBOスーパーに乗る
アルファ ロメオ・ジュリア TURBO SUPER
車両価格:543万円
全長×全幅×全高:4645mm×1865mm×1435mm
ホイールベース:2820mm
車重:1590kg
エンジン
エンジン形式:直列4気筒SOHCターボ
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm
圧縮比:10.0
最高出力:200ps(147kW)/4500rpm
最大トルク330Nm/1750rpm
JC08モード燃費:13.6km/ℓ
サスペンション
F:ダブルウィッシュボーン式 R:マルチリンク式
タイヤ:F225/45R18 R255/40R18
最小回転半径:5.4m
ジュリアに乗るのは久しぶりだった。導入間もない2017年に試乗したときの印象は、正直言って「デザインはかっこいいけれど、ちょっと薄味」だったように記憶している。アルファにとって久しぶりの後輪駆動モデル、新しいプラットフォーム(ジョルジョ・アーキテクチャー)の第一弾だったから期待が大きすぎたのか、ともかくあまり好印象ではなかった。
その後、SUVのステルヴィオが入ってきて最初にドライブした時は、「なんだ、これ! すごくいいじゃん。シャキッとしていて身のこなしが軽い。まるでスポーティセダンを操っているみたいだ!」と驚いた。同時に、「ジュリアがこうだったらよかったのに」とも思った。
久しぶりにジュリアTURBOスーパーに乗った感想は、「ステルヴィオみたいになった」というものだった。欧州車はおうおうにしてそうだが、1年目より2年目、そして3年目というように年を追うごとに完成度が高まっていく。ジュリアも例外ではなかったということか。
ボディ寸法、全長×全幅×全高:4645mm×1865mm×1435mm ホイールベース:2820mmは、Dセグセダンではいまやさほど大きくないサイズだ。
スタイリングは、相変わらずかっこいい。ドアを開けてシートに腰を落ち着けて見える風景は、やはり艶っぽい。乗ってきたBMW320dがビジネスライクで、「仕事場にビジネススーツにネクタイ」なムードであるなら、ジュリアは、もっとお洒落でファッショナブルな装いが似合いそうだし、助手席には綺麗な女性に座ってほしいと思う設えだ。いつもスーツもネクタイもつけない、かといってお洒落な格好ができるわけでもない男が言っても説得力に欠けるが、ジュリアのインテリアは誰が見ても、「いいねぇ、きれいだね、おしゃれだね」と思わせる。
内装の質感が高い、というのとはちょっと違う。きっとデザインと造りが上手いのだ。これは日本のメーカーにはなかなか真似ができない芸当だ。
エンジン
エンジン形式:直列4気筒SOHCターボ
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm
圧縮比:10.0
200ps(147kW)/4500rpm
330Nm/1750rpm
2.0ℓ直4SOHC直噴ターボエンジンの注目点は「マルチエア(MultiAir)」を採用していることだ。FPT(フィアット・パワートレーン・テクノロジー)とシェフラーが共同開発したユニークな可変バルブタイミング&リフト機構を載せているのだ。排気側のカムシャフトで作った油圧で吸気バルブをコントロールするという、独自技術である。排気側にはカムがあるが、吸気側はない。だから、SOHCなのである。
TURBOスーパーは200ps/330Nmで上級の280ps/400Nmと比べたら見劣りがするが、それでも200psである。330Nmである。車重1590kgに対してまったく不足はない。箱根ターンパイクの登りはアルファ得意のアルファDNAドライブモードシステムをNのままでもぐんぐん上っていく。
D=Dynamic
N=Natural
A=Advanced
今度は、Dにしてみる。アルファの常としてDに入れると、本当に生き生きとエンジンは吹け上がる。とても気持ちがいい。ちょっとだけ不満があるとしたら、ステアリングの手応えがやや希薄なことくらいか。最近の新型車はおしなべてどんどんステアリングの手応えが薄く(軽く)なっている。そしてステアリングを切ると、キビキビとノーズが向きを変えてくれる。が、ちょっと過敏なモデルも多い。ジュリアは過敏ではないが、もう少ししっとりとしたステアフィールだと文句がないと感じた。
次は、ディーゼルのTURBO DIESELスーパーに乗る
アルファ ロメオ・ジュリア TURBO DIESEL SUPER
車両価格:556万円
全長×全幅×全高:4645mm×1865mm×1435mm
ホイールベース:2820mm
車重:1600kg
エンジン
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
排気量:2142cc
ボア×ストローク:83.0mm×99.0mm
圧縮比:15.5
最高出力:190ps(140kW)/3500rpm
最大トルク:450Nm/1750rpm
トランスミッション:8速AT
燃費
WLTCモード燃費:17.2km/ℓ
市街地モード:11.8km/ℓ
郊外モード:18.1km/ℓ
高速道路モード:20.6km/ℓ
サスペンション
F:ダブルウィッシュボーン式 R:マルチリンク式
タイヤ:F225/45R18 R255/40R18
最小回転半径:5.4m
次は、今回の目的だった2.2ℓ直4ディーゼルターボエンジン搭載モデルに乗った。トリムラインは、「スーパー」だからエンジン以外はほぼ同じ。エンジンを占めるバッヂもないので、前に乗ったガソリンターボと見かけは同じである。
エンジンをかける。車内に聞こえてくるのは、紛れもなくディーゼルエンジンの音だが、ボリュームは小さいのでまったく気にならない。外に出るとそれなりに聞こえるが、問題にならない音量・音質だと思う。少なくともBMW320d(F30型)と同じ程度である。
最新の排ガス浄化デバイス(尿素SCRシステムも搭載)を載せた上で190ps/450Nmのスペックは立派。450Nm/1750rpmの大トルクは走り出してすぐに感じる。同じターンパイクの上りを狙った通りのラインとスピードで走れる。ガソリンターボのDよりもディーゼルのNの方が力強く感じる。これはいい。ディーゼル、いい。
2.2ℓ直4ディーゼルターボ
排気量:2142cc
ボア×ストローク:83.0mm×99.0mm
圧縮比:15.5
190ps(140kW)/3500rpm
450Nm/1750rpm
ガソリンターボのレッドゾーンが6000rpmからなのに対して、ディーゼルは5000rpmから。しかし、だからと言ってディーゼルのエンジンフィールがガソリンに劣るかというと、ちょっと違う。ガソリンターボの小さい粒が揃って吹け上がっていく感じとは違うが、ディーゼルらしくない軽く回るアルファのディーゼルは別の気持ち良さがある。
DNAのDをセレクトしてみる。もちろん、よりスポーティなのだが、ガソリンのNとDの差より、ディーゼルのNとDの差の方が小さいように感じた。そして、ステアリングのフィールもディーゼルの方がよかった。ステアリングのギヤ比は11.8:1で同じだと思うのだが、ディーゼルの方が手応えがあるように感じた。
輸入車を選ぶユーザーは、そもそもディーゼルに対するハードルが少し低いかもしれない。BMW320dをマイカーに選んでいる筆者も同じだ。
トルキーで余裕のある走り、優れた燃費、そして日本特有の理由だが、安い燃料代。ディーゼルを選ぶ理由はいくつもある。逆にディーゼルを選んで失うものはなにか? ディーゼル特有の音と振動、そしてガソリンエンジンより高いプライスタグ、おそらくそれだけだと思う。
ジュリアの場合、音と振動は許容できるレベルだ(すでにディーゼルオーナーだからという事情も若干あるかもしれないが)。
プライスタグは、
ジュリア ディーゼル・スーパー:556万円
ジュリア 2.0ターボ・スーパー 543万円
と価格差は”わずか”13万円に過ぎない。わずか、と書いたのは、ガソリンとディーゼルの価格差は、30万円前後というのが通例だからだ。ジュリアの場合は、インポーターがディーゼルモデルに戦略的にリーズナブルな価格を設定しているのだ。
燃費はどうだろう?
ディーゼルモデルの燃費は
WLTCモード燃費:17.2km/ℓ
市街地モード:11.8km/ℓ
郊外モード:18.1km/ℓ
高速道路モード:20.6km/ℓ
である。一方のガソリンモデルは
JC08モード燃費:13.6km/ℓ
だ。モードが違うから直接比較しにくいが、先ごろ国交相と経産省が2030年度新燃費基準値を発表した際にJC08モードの20.3km/ℓがWLTCモードの17.6km/ℓという換算をしていたから、JC08モードの86.7%がWLTCモードと仮定すると
2.0 Turbo SUPER:11.8km/ℓ
2.2 Turbo Diesel SUPER:17.2km/ℓ
となる。
プレミアム(1ℓ=155円)
レギュラー(1ℓ=144円)
軽油(1ℓ=124円)
年間1万km走ったとして
ガソリンターボが847.5ℓ 燃料代は13万1363円
ディーゼルが581.4ℓ 燃料代は7万93円。
差額は、6万1270円
年間1万2000km走ったとして
ガソリンターボが1016.9ℓ 燃料代は15万7627円
ディーゼルが697.7ℓ 燃料代は8万6512円。
差額は、7万1115円
2.0ℓと2.2ℓの自動車税の差、尿素SCR用のAdBlue(尿素水)の補給が必要だとしても、燃料代の差は圧倒的だ。
車両価格差13万円は2年経たずに取り戻せるわけだ。この13万円差というのは、バーゲンプライスというしかない。
結論としては、ジュリアはディーゼルがいい、である。
試乗テーマその2の「アルファの最新2.2ℓ直4ディーゼルエンジンを積んだジュリアは、BMW320dやメルセデス・ベンツC220dのライバル足り得るか」については、稿をあらためたい。
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