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もし日本のクルマの半分がEVになったら仕事が激減する職種と生き残る道

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もし日本のクルマの半分がEVになったら仕事が激減する職種と生き残る道

 日本自動車工業会によると、日本で自動車に関連する産業で働く人は、およそ550万人。車両開発から生産、販売、アフターマーケットなど、さまざまな業種があるが、そのなかでもエンジンに関係する業務は非常に多く、とある試算では、新車販売のすべてがバッテリーEVとなった場合、100万人規模の雇用喪失が発生する可能性があるという。

 2022年の日本市場における新車販売台数(乗用車全体)に占めるEVの割合は1.71%(5万8813台)で、前年(0.59%)を大きく上回った。軽自動車である日産サクラ/三菱eKクロスEVの登場でかなり普及したとはいえ、世界の先進地域と比べるとまだまだ少なく、たとえば近年では中国で新車販売台数の約20%、欧州は約10%、アメリカは約5%の新車販売がEVになっている。

もし日本のクルマの半分がEVになったら仕事が激減する職種と生き残る道

 これが、日本でもいずれ50%まで増えるのか(本当に増えるのか?)、それまで何年くらいかかるのか、保有比率はどうなるのか、などを予想するのは難しいが、それでも「EVはいずれ今よりずっと増えるだろう」とは思うし、そのための準備はしておいたほうがいいだろう。

 ではもし、日本のクルマの半分がバッテリーEVになったら、どのような仕事がなくなってしまうのか。具体的な業種・職種を挙げながら、それらの仕事に従事する人々の生き残り策の事例についてもご紹介しよう。

文:吉川賢一
写真:NISSAN、TOYOTA、SUBARU、Adobe Stock、写真AC

エンジンパーツ専門業者

 真っ先に仕事に影響を受けるのが、エンジン補器類や燃料タンク、エンジン補器類などを専業で製造し、自動車メーカーへ納品してきた中堅・中小自動車部品サプライヤーたちだろう。特に、モーター駆動には不要となる吸気ダクトや排気管、オルタネーター、燃料タンク、トルクコンバーター、タイミングベルトなどは、最初に外されるパーツだ。このような需要に依存してきた業者(その下請け業者含め)は、すでに事業方針を変える決心をしていることだろうと思う。

 このような事業者に対しては、国から支援も用意されている。経済産業省は、自動車の電動化の進展に伴って、需要の減少が見込まれる自動車部品(エンジン、トランスミッションなど)の業者が、バッテリーEV部品製造への転換や、軽量化等の技術適応をおこなう業態転換・事業再構築の支援を、2022年8月より開始している。全国各地に支援拠点を設置しており、相談受付を開始しているそうだ。

トヨタは水素エンジンの選択肢も残すとしているが、インフラ整備など実現には難関が多くある(PHOTO:Adobe Stock_happycreator)

エンジンオイル、クーラント液などの製造メーカー

 エンジンがモーターに切り替わってしまうと、エンジンに必須のオイル類は不要となる。エンジンの冷却、潤滑、洗浄、防錆、密封が役割のエンジンオイルは不要となるし、エンジン内部を循環してエンジンを冷却するクーラント液も不要となる。

 ブレーキオイルやミッションオイルなど、バッテリーEVとなっても必要とされる油脂類はあるが、ギア1速でも十分な速度カバーレンジをもつモーター駆動の場合、トランスミッションの必要性は低く、ミッションオイルは最小限となるため、ミッションオイルへの需要は減る傾向になる。参考だが、日産R35 GT-Rのミッションオイルは10L必要だが、日産リーフでは、たった1.4Lで済んでしまう。

 オイル自体はあらゆる機械で求められる重要アイテムであり、オイルメーカーとしては、自動車以外へ転用する道筋を、既に立てていることだろう。

ガソリンスタンド

 そしてもちろん、日本のクルマの半数がバッテリーEVになってしまったら、ガソリンの需要はガタ落ちとなるため、ガソリンスタンドも、従来の通りの経営では継続不可能となる。

 ガソリンスタンドは、1996年のガソリン輸入の解禁や低燃費なハイブリッド車の普及などの影響で、ここ10年で半数以上も減少しており、さらに昨今の原油価格高騰や円安の影響で、現状でもかなり経営は厳しいとされている。そのためか、すでに積極的な対策を進めているところが多く、フルサービス式からセルフ式へと変更(人件費の削減)はもとより、車検対応や保険の販売、中古車買取事業、レンタカー事業、カーコーティング事業、高級コーヒー店を併設、など、別業態を並行して始めるガソリンスタンドが増えてきた。なかにはエネオスのように、2年ごとに新車へ乗り換える「クルマのサブスク」事業を始めるなど、新事業にもチャレンジし始める事業者も登場している。

 また英国では、石油大手のシェルが、古いガソリンスタンドを改装したバッテリーEV専用充電ステーションを、2022年1月に営業開始している。9基の充電設備とコンビニエンスストア、コーヒーショップなど、顧客サービスも十分だという。日本にも、こうしたバッテリーEV専用ステーションが誕生する日は近いかもしれない。

ガソリンスタンドは、車検対応や保険の販売、中古車買取事業、レンタカー事業、カーコーティング事業、高級コーヒー店を併設など、別業態を並行して始めているところが増えている(PHOTO:Adobe Stock_Quality Stock Arts)

規模の小さい整備工場

 部品数が少ないバッテリーEVは、故障の際に修理や交換のできる部分が限られている。そのため、自動車ディーラーや大手カー用品店では、顧客を逃さないよう(リピートしてくれるよう)、様々なサービスを事業展開しており、昔ながらのコンパクトな整備工場では、よほどの「強み」がない限り、大手に太刀打ちできなくなる可能性がある。

 これら小さな整備工場で働く自動車整備士の人々は、スーパーカー整備や旧車の修復専業、カーラッピング技術、内装の清掃など、何らかの技術に特化し、大手との差別化をすることで、生き残る道を探しているところもあるようだ。

 また、出張整備サービスを始めるのもよいと思う。たとえば、整備士のマッチング事業を展開する「セイビー」は、お客様の修理要望に対し、修理スキルを持った自動車整備士をマッチングし、タイムリーに修理をおこなう事業をしている。故障修理(エンジン故障、エアコン故障、オイル交換、セルモーター交換など)や、パーツの取り付け(ドライブレコーダー、バックカメラ、カーナビ、ETCなど)、車検点検なども対応している。個人で整備工場を持つ必要はないため(整備場所は顧客の駐車場や、近隣整備工場を借りる、その段取りはセイビーが行う)、自動車整備士側としては、固定費が無くなり収入も増やせるそうだ。

部品数が少ないバッテリーEVは、故障の際に修理や交換のできる部分が限られているため、規模の小さな整備工場も成り立たなくなる可能性が(PHOTO:Adobe Stock_Satoshi)

◆      ◆     ◆

 先日行われた東京オートサロン2023では、トヨタが、水素エンジンにコンバージョンしたトレノや、バッテリーEVにコンバージョンしたレビンを出展。カーボンニュートラルに向けた本気度が伝わってきた。

 クルマ好き=エンジン好きであることが多いことを考えれば、エンジンがなくなる(少なくなる)ことは、我々自動車専門メディアに従事する者とっても死活問題。日本では、2035年以降もハイブリッド車やプラグインハイブリッド車は販売できるとされているため、(本稿のお題である)日本のクルマの半数がバッテリーEVになるのは、(このままバッテリーEV化が進んでいったとしても)ずいぶん先の話ではあるだろうが、現状のエンジンが、現状の需要のまま維持できるのはあとほんのわずかだ。クルマ好きとしては寂しい限りだが、「クルマ」というものを衰退させないためは、時代の変化には対応していかなければならない。

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みんなのコメント

110件
  • EVになって消滅するのは、自動車雑誌だったりして。
    EVなら、所有欲は無くなっててシェアリングで十分な気がする。
  • 海外にも拠点があるだろうし100万人どころじゃないのでは。整備士もかなり減るだろうし、ディーラーも多くはいらなくなる。ピラミッド型産業にとって良い事なんて一つもないでしょうね。しかもEVは価格では中国の車に日本車は勝てないですよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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