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トヨタ GRヤリスと ホンダ シビック タイプR。最尖端スポーツ、それぞれの異次元

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トヨタ GRヤリスと ホンダ シビック タイプR。最尖端スポーツ、それぞれの異次元

トヨタ GRヤリスとホンダ シビック タイプR・・・この2台、その本性をあらわにするためにはもはや、それ相応のラリー orサーキットシーンで攻めるしかない。だが一方で、ストリートシーンで走らせても、それぞれが描く「愉しさ」の理想像が見えてくるようにも思える。今、もっとも研ぎ澄まされた国産スポーツの雄たちと暮らす「日常」はきっとスパイシーでしかも、どこまでも味わい深い。(Motor Magazine2021年4月号より)

モータースポーツベースの市販車
古今東西、モータースポーツへの参戦を前提としたホモロゲーションモデルはいくつか存在する。だが、トヨタ曰く、GRヤリスはモータースポーツ車両をベースに市販車を作るという逆転的なアプローチで開発されたモデルだという。

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その車台は前部が欧州ヤリス系GA-B、後部がカローラスポーツなどに用いられるGA-Cをベースとする混成的な骨格で、立派なブリスターフェンダーが示すとおりトレッドはリア側が広く、全幅は1805mmに達している。

G16E-GTS型はまったくのゼロスタートからの開発で、現状搭載するのはGRヤリスのみだ。1.6L直列3気筒のボア×ストローク比は87.5×89.2とほぼスクエアで、現代のターボユニットとしては高回転型に躾けられている。

テストしたRZハイパフォーマンスのドライブトレーンはセンターデフに電子制御式多板クラッチを用いる4WDで、ノーマルが60対40、スポーツが30対70、トラックが50対50と、3つのドライブモードに応じて前後駆動力配分をリジッドに変更する。

ちなみに6速MTはアイシン、ブレーキシステムはアドヴィックス、デフ関連はジェイテクトと、主要サプライヤーはトヨタ関連が占めている。このあたりからも「自分たちで作ったスポーツカー」というキーワードへのこだわりが見てとれる。

細部のアップデートで鈴鹿最速のFFに進化
一方のシビック タイプRは、FIA-WTCR参戦用のベース車両という側面はあるが、順序的にはまず市販型シビックありきで、それをベースとしたエボリューションモデルということになる。

アメリカで製造したエンジンをイギリスへと運び、スウィンドン工場でアッセンブリー・・・というややこしい生産プロセスの関係で継続的な受注が難しく、2020年秋に発売されたマイナーチェンジ版のロットはすでに完売と、ホンダの公式HPでは知らせている。

スウィンドン工場の閉鎖も決まっており、このFK8型タイプRはおそらくそのまま販売終了ということになるだろう。ちなみに2020年秋に発表された北米仕様の新型シビックにおいては、タイプRの存在が表明されている。ちなみにこのシビックタイプRは、前期型に対してグリル開口面の拡大や電子制御ダンパーの再チューニング、ブッシュやジョイント類の特性変更などのアップデートを受けている。

性能向上の可視化としておそらくはFF世界最速に向けて再度のニュルアタックを目論んでいたのだろうが、それはコロナ禍で叶わぬものとなった。代わりに、というわけではないが、鈴鹿サーキットでは2分23秒台のFF一番時計をマークしたという。

目指す舞台とそこに登る手段は異なるとはいえ、共に速さのために磨き上げられた日本車たちである。奇しくも似通った価格にあるこのハイパフォーマンスモデルたちを公道で乗る・・・その意味を探すのが、今回の試乗の目的だ。

街中から高速を使って箱根へと移動すると、乗り心地に車格なりの差があることがわかった。上質や快適というキーワードでくくれば、利があるのはシビック タイプRだ。ドライブモードをコンフォートにしておけば245/30R20というタイヤをものともせず、細かなオウトツには鷹揚に反応、大きな入力ではバネ側の硬さで上屋が正直に揺すられるも、突き上げはきちんと角が取れていてその動きは丸い。

速度域によってはスポーツモードを使えばライドフィールにはフラット感がグッと高まる。後席や荷室空間もしっかり確保されているとはいえ、ファミリーカーに適するとまでは言えないが、先々代のFD2型あたりから比べれば夢のように動きがしなやかだ。

可変ダンパーなどのデバイスを持たないGRヤリスは、基本的に乗り心地はソリッドで、路面オウトツや轍などに対するリアクションも大きい。が、その硬さは不快なものではなく、往年のランエボやインプレッサあたりに比べれば低速域から望外に足がよく動く。

そして日常的な速度域でもビシビシと伝わってくるのは車体の異様な剛性や摺動部の精度だ。路面入力をビンビンと一撃で減衰するモノコックのアコースティック感、幅広タイヤの上下動を余裕綽々で支える軸ブレのなさは、元を正せばBセグメントハッチバックのクルマから放たれるそれではない。

大袈裟でなく、役付きの911あたりを思い出すような質感が体や掌に伝わってくる。アシの動き自体はある程度速度が高い方が穏やかさを増すが、このいいハコ感を慈しみながら走れば、乗り心地自体が気にならなくなることも確かだ。

ハイパワーFFならではの「限界」を探る愉しさを実感
ワインディングロードでの振る舞いの印象はちょっと意外なものになった。まずシビック タイプRは設計や味付けうんぬん以前の、FFで320psを吸収するという商品企画自体が物理的に相当難しいハードルに挑戦しているわけで、それをなだめすかしながら走らせることに悦びが感じられる仕立てだ。

さりとて、踏めばあっさりトラクションを失ってどアンダー・・・的なものではない。どころか、タイヤのグリップ力や変更されたサスペンション設定、ヘリカルLSDそしてアジャイルハンドリングアシストなどの複合効果でもたらされるハンドリングは、ひとまわり以上は小さいGRヤリスにも増してシャープで、スロットルワーク如何で飄々とインを捉えにいく。

絶品フィールのシフトをコキコキと扱いながらこの範疇を巧く使いこなしていくと、その速さは相当なレベルに達している。が、最後はオーバーシュートのポイントを探りながらアペックスでも踏み抜くには至れない。ここから先はサーキットでどうぞという線引きがどうしても見えてくる。

寸止めというか生煮えというか、そんな「読後感」がなんとも惜しい。弾けきれない理由のひとつは、GT-Rにも迫る車格にあるのだろうが、この全幅があってこその規格外の運動性能であることもよくわかる。

公道でも満喫できる洗練されたハイパフォーマンス
GRヤリスはある意味、シビック タイプRのキャラクターとは真逆と言っていい。全幅はそこそこながら4mを切る全長のおかげで車格は日本の峠道でも収まりが良く、4WDにして1.3トンを切る車重のおかげでタイトターンでも必要以上に重さを感じることはない。一方で、クルマの動きは意外なほど腰が据わっていて、乗り手の曲げるという意志以上に先まわりすることもないようだ。

走りに介入するデバイスは駆動制御のみで、それもドライバーが任意で選択する仕組みとなっている。スポーツとトラックの運動性能の違いは明らかだが、峠道のようなところでははっきりとスポーツの方が楽しく、しかもコントローラブルだ。272psは十分実効的で持て余すものではなく、後輪で巧く頭を向けながらも前輪でしっかりと道先に導いて、車線に綺麗に収まりつつニュートラルに曲がっていくサマはなんとも気持ちがいい。

本来ならその痛快さに高揚しそうなものだが、GRヤリスのドライビングでは、常に傍らにその速さや挙動を冷静に見つめる自分がいる。クルマ自体の解像度が高くフィードバックも濃密で、自分の運転所作によってどのように動きの質が変わるのかという分析がドライブの目的へと転化されていく、その感覚が楽しめるか否かがこのクルマを持つ意味につながるのだ。

ともすれば日常も託することができるこの両車だか、その速さのレベルやクオリティは今までの水準では測れない境地に達している。あえて傾向の違いを定めるとするならば、シビック タイプRは走りを「極め」たい向きに、GRヤリスは走りを「究め」たい向きに、うまくハマりそうなモデルといえそうだ。(文:渡辺敏史/写真:小平 寛)

トヨタ GRヤリス RZハイパフォーマンス 主要諸元
●全長×全幅×全高:3995×1805×1455mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1280kg
●エンジン:直3 DOHCターボ
●総排気量:1618cc
●最高出力:200kW(272ps)/6500rpm
●最大トルク:370Nm/3000-4600rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●WLTCモード燃費:13.6km/L
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格(税込):456万円

ホンダ シビック タイプR 主要諸元
●全長×全幅×全高:4560×1875×1435mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1390kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1995cc
●最高出力:235kW(320ps)/6500rpm
●最大トルク:400Nm/2500-4500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・46L
●WLTCモード燃費:13.0km/L
●タイヤサイズ:245/30R20
●車両価格(税込):475万2000円

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