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2024年もいろいろ大変だった 自動車業界ニュース振り返り(欧州編) EV低迷、関税、価格競争…

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2024年もいろいろ大変だった 自動車業界ニュース振り返り(欧州編) EV低迷、関税、価格競争…

欧州・英国の業界動向

2023年は電気自動車(EV)が主流となり、その人気は急上昇し、2035年の完全EV化という欧州の目標も達成可能なものに見え始めた年であったが、2024年は自動車業界を現実に引き戻し、まだ長い道のりが残っていることを示した年であった。

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ドイツなど欧州の主要市場における優遇措置の終了が引き金となり、EVの販売成長が鈍化した。このため、欧州連合(EU)や英国でますます厳しくなる排ガス規制への対応を迫られた自動車メーカーが、多くの地域で現在、市場需要を上回る台数のEVを販売しなければならないという矛盾した状況を生み出している。

中国との貿易戦争、重要な新規制の導入、不安定な地政学的環境が加わり、自動車業界にとって、この1年はまたも変革の年となった。この変革が、業界のEV推進のきっかけとなるか、あるいは困難な時代の始まりとなるかは、今後何年か経たなければわからない。

2024年も半ばを過ぎた頃、自動車メーカー各社はEVシフトの目標時期を再考し始めた。EVの販売台数の伸びは予想をはるかに下回り、2023年全体では28%の増加だったのに対し、欧州では前年比(1月~9月)でわずか6%の増加にとどまった。特に落ち込みが激しかったのはドイツ(29%減)であった。

ポルシェは真っ先に身を引いたメーカーの1つであり、2026年にはEVモデルのみになる予定だったカイエンが、少なくとも今後10年間は純エンジン(ICE)車およびハイブリッド車を設定して販売されることが確定した。

メルセデス・ベンツもEVの新潮流に合わせ、これまで廃止が予定されていたAクラスなどのモデルの寿命を延長した。チェコのスコダも同様で、新型EVの発売を延期し、小型のICEモデルの寿命を延ばした。一方、スズキは、eビターラに続く2台目の量産EVの導入時期を明言せず、市場を「注視」しているとAUTOCARに語った。

また、ボルボとフォードの経営陣も、2030年までにEVのみに切り替えるという公約を撤回した。

ボルボが発表を行った際、当時の副CEOであるビョルン・アンウォール氏は、AUTOCARの取材に対し、「完全電動化戦略に一貫性を保つためには、時間がかかることを受け入れなければならない。その場合、既存のクルマをもう少し長く販売し続けることは理にかなった判断だ」と語った。

フォードの電動化部門であるモデルEの最高執行責任者、マリン・ギャジャ氏も同意見で、「顧客が全面的に支持するまでは、何事にも全面的に取り組むことはできない。そして、それは世界中で異なるペースで進んでいる」と主張した。さらに同氏は、以前の目標は「あまりにも野心的」だったと付け加えた。

もちろん、こうした方向修正により、英国のゼロ・エミッション車(ZEV)義務化や、EU圏内で導入が予定されている同様の法律など、厳しい排ガス規制の順守がさらに困難なものになった。その結果、自動車メーカーは目標を達成するためにICE車の販売を制限することになった。

関税の混乱

こうした状況の中、同じ欧州の自動車メーカーは、中国製EVの販売増加への対応をめぐって、政府関係者と争っていた。BYDやMGといったメーカーは、主に中国政府からの多額の生産コスト補助のおかげで価格面でライバルを出し抜き、大きな市場シェアを獲得していた。

欧州委員会の解決策は、中国で製造されたすべてのEVに高額の輸入関税を課すというものだった。BYDと吉利汽車にはそれぞれ17%と18.8%の税金が課されたが、MGの親会社である上海汽車には、すでに支払っていた10%に加えて最高税率の35.3%が課された。

中国で事業を展開する欧米の自動車メーカーも影響を受けた。その中には、iX3やミニ・クーパーEVなどを中国で製造しているBMWや、ルノー(ダチア・スプリング)も含まれ、両社とも20.7%の追加関税を課された。

吉利汽車傘下のボルボは、関税を回避する目的もあり、一部のEVの欧州生産を今後さらに増やす計画を発表した。上海に工場を持つテスラは、中国での補助金がライバル企業よりも低いため、7.8%という低い税率で済んだ。

この関税は試験期間を経て11月に承認されたもので、少なくとも5年間は継続される。この措置は欧州の自動車メーカーに公平な競争の場を与えることを目的としているが、業界をリードするいくつかの企業は関税導入に猛反発している。

スコダの販売部門トップであるマーティン・ヤーン氏はAUTOCARの取材に対し、「関税で状況を解決できるとは思わない」と語った。ルノーのCEOであるルカ・デ・メオ氏は、全面的な貿易戦争が勃発する前に、中国の自動車業界と「合意を見つける」べきだとした。

中国は当然のことながら、欧州自動車メーカーの同地域への供給を抑制することで対応しようとしており、その影響はすでに苦戦を強いられているフォルクスワーゲン・グループに現れている。アウディ、ベントレー、ポルシェを擁する同社は、税引き前利益が27億5000万ポンド(約5400億円)減少したと報告し、帳尻を合わせるために「難しい決断」を迫られた。その中には、大幅な雇用削減も含まれている。固定費(電気代や賃金など)の上昇に加え、最大の市場である中国での販売が10%減少したことが同社に大きな打撃を与えた。

低価格車の復活

最近まで、EVの開発は大型の高級車が中心であった。メーカーは初期投資の利益を最大限に引き出し、EVの生産コストの高さを回収しようとしていたからだ。

しかし、EVへの需要が低迷し、排ガス規制が強化されるにつれ、小型で安価なEVの開発に焦点を当てる必要性が明らかになってきた。

中国の自動車メーカーはすでに、2万5000ポンド(約500万円)以下のMG 4のようなクルマを発売しており、これがMGの2023年の売上高が13億ポンド(約2600億円)に達するきっかけとなった。

もちろん、国からの補助を受けずに小型EVで利益を上げられるかどうかは、他者の判断に委ねられる。

3月、欧州の自動車ブランドが苦境に立たされている中、デ・メオ氏は攻勢に転じ、欧州の規制は「客観的に高級モデルを優遇している」と批判した。同氏は、再び手頃な価格のクルマの開発を積極的に推進することで、バランスを是正するよう当局に求めた。

政府からの反応は何もなかったが、ルノー・グループはそれでも計画を進め、航続距離220kmで必要最小限の装備を持つEV、ダチア・スプリングを、1万4995ポンド(約295万円)という驚きの低価格で発売した。

重要なのは、これが欧州で最も安いEVであることだ。中国で製造することでこの価格を実現した。20.7%の輸入関税が課せられるにもかかわらず、生産拠点を欧州に移す計画はない。

ルノーはその後、フランス製で2万2995ポンド(約450万円)からの価格設定の5を発表し、フォルクスワーゲンは2万5000ポンド以下の「ID.2」と2万ポンド(約400万円)以下の「ID.1」を準備中である。

英国で新政権誕生

英国では2024年、14年間にわたる保守党の支配に終止符が打たれ、政権交代が実現した。10月には、新財務大臣レイチェル・リーブスの秋の予算案に多くの期待が寄せられたが、肝心な質問に対する答えは、彼女の光沢のある赤いブリーフケースの中には隠されていなかった。

労働党は選挙公約の一部として、自動車とドライバーに焦点を当てた数々の公約を掲げた。2030年のICE車の新車販売禁止措置(ハイブリッド車は2035年まで許可)を復活させるなどして、メーカーが今後10年間にどのようなクルマが売れるのか見当もつかないという状況下で「確実性」を提供するというものだ。

また、自動車保険料の高騰を抑え、充電ポイントの数を増やすことでEV購入者の支援を行うこと、さらに中古EVの普及を促進するためのバッテリー健康基準を導入することも約束した。

しかし、10月の秋の予算案は期待外れの内容となり、自動車業界の主要企業によるロビー活動にもかかわらず、EVの購入奨励策は導入されなかった。

EVに対する自動車税(VED)の導入を2025年4月1日以降に延期するよう求める声もあった。その理由の1つは、EVの車両本体価格が高いため、4万ポンド(約800万円)の高級車税の適用基準に該当するモデルが不釣り合いなほど多くなるというものだ。

代わりに英国政府は、ほとんどの新型ICEの自動車税を倍増させることで、逆の平等化を図った。また、燃料税も12か月間据え置かれることとなった。

ZEVの難題

本稿執筆時点において、ZEV義務に関する議論は大きな転換期を迎えている。まず、ステランティスは、小型商用車を製造するルートン工場の閉鎖を検討する理由として、この問題を挙げている。

カルロス・タバレスCEO(当時)は以前からこの結果を予期しており、この政策を「英国にとって恐ろしいこと」と非難していた。

数時間後、政府はZEV規制の再策定の可能性を認めた。ビジネス・貿易大臣のジョナサン・レイノルズは、現行の「引き継がれた」法律が「現在どのように機能しているか」について「懸念している」と述べた。

英国では2024年の大半にわたって、こうした議論が続いた。自動車メーカーは、多額の罰金が控えているにもかかわらず、EV販売比率22%という目標の達成に苦戦している。

2025年の28%という目標は特に困難に見える。実際、目標達成のためにICE車の販売が抑制されているため、混乱がさらに拡大している。業界は今回の英国政府のコメントを歓迎するだろうが、政府の姿勢の変化はあまりにも小さく、遅すぎたのではないか。

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