あのホットモデルがひっそり消滅!?
2018年12月13日にスズキの軽自動車、アルトの一部仕様変更が行われた。緊急自動ブレーキの性能が向上するなど、変更内容は歓迎できるものなのだが、最新のラインナップをよ~く見ると、現行アルトの登場から約4か月後に追加された「ターボRS」がひっそりと姿を消しているではないか!
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アルト ターボRSは、2014年発売の現行型に設定されたホットモデル。基準車の登場から約3か月遅れで登場。当初はアルト唯一のスポーツモデルだったが、後にさらにスポーツ性の高い「アルトワークス」が発売されたという経緯がある。なぜ、アルト ターボRSは消滅してしまったのか? スズキ広報部に聞いた。そのほか2018年にひっそりと消えたモデルも合わせて紹介したい。
文:永田恵一
写真:編集部、MITSUBISHI
ワークスより先に出たホットモデル「ターボRS」
現行アルトは最軽量モデルで車重610kgと超軽量だったこともあり、登場当初からスポーツモデルの追加が期待されていた。
その声に「待ってました!」と呼応するようにスズキは、発売直後の2015年の東京オートサロンにターボエンジンを搭載したスポーツモデル「ターボRS コンセプト」を出展。
その後、市販化が確実となり、組み合わされるトランスミッションが2ペダルのみとなるのは比較的早く明らかとなった。そして、結局5速AGS(オートギアシフト)のみの設定で2015年3月11日に正式発売された。
市販化されたアルト ターボRSは、今にして思うと“ライトなスポーツモデル”というコンセプトで開発され、ターボエンジンの搭載に加え、ボディ剛性の強化、専用サスペンションやスポーツモデルらしいパッションを感じる内外装を備えていた。なお価格はFF車で129万3840円(ここは重要なポイント)だった。
当時、大いに期待しながらアルトターボRSに乗ってみると、車重が軽いだけに加速は軽自動車離れしていたが、それ以外はAGSのシフトアップが遅く、ハンドリングもホットハッチなら備えてほしいシャープさに欠けるなど、期待が大き過ぎたこともあり、全体的にスポーツモデルらしさに欠ける期待外れの仕上がりであった。
ただ、価格が安いだけにMT待望論が強く起きたことも事実だった。
アルトワークスとの違いは?
アルトターボRSの登場後スズキは前述した声に即座に応え開発したのか、それとも予定通りだったのか定かではないが、2015年12月24日にクルマ好きへのクリスマスプレゼントとばかりに5速AGSに加え、待望の5速MTも設定する「アルトワークス」を追加した。
アルトワークスはターボRSと比較すると……
・数値上は僅かではあるが、最大トルクとアクセルレスポンスを向上
・サスペンションは専用チューニングで、ホイールもレーシーなデザインに変更
・レカロシートの採用に代表される内外装の変更
といった違いを持つ。「今度こそは」と期待してアルトワークスの5速MT車に乗ってみると、動力性能はギア比がクロスレシオとなることもあり、ホットハッチらしいパンチがあり、シフトフィールも良好。
ターボRSから一転、シャープさを得たハンドリングとちょっとコツコツした感じのある乗り心地も軽のホットハッチと考えれば絶妙のバランスだった。
さらに実用燃費も20km/L近く、トドメに価格はターボRSとそう変わらない150万9840円と激安で、振り返ると筆者も何度も「買ってもいいかな」と思ったほどだった。
スズキを直撃! アルト ターボRS 消滅の理由は?
では、なぜアルト ターボRSはなくなってしまったのか? 消滅した理由をスズキ広報部に聞いてみたところ、
「アルトのラインナップにおいて、ターボRSは実用的なライトスポーツモデル、ワークスはオーソドックスなスポーツモデルという棲み分けをしていましたが、今回の一部仕様変更で行ったグレード体系の見直しで総合的に判断し、残念ではありますが絶版となりました」という、ちょっと煮え切られない回答であった。
ワークスがある以上、趣味性が強く需要が多いわけではないスポーツモデルのアルトを買う際に「ターボRSとワークスのどちらにするか」となったら、ワークスを選ぶ人がほとんどと考えると、需要が減ったターボRSの消滅はやむなしか。消滅した率直な理由もそんなところだろう。
ただ、アルトターボRSは、中古車検索サイトを見ると現在数は10台程度と少ないながら、登録済未使用車が110万円程度から流通しているので、安全装備を妥協できるなら「普通のアルトの上級グレードを買うつもりで」という買い方ならアリだと思う。
マジェスタも消滅! そのほか今年ひっそり消えたモデルは?
2018年にアルト ターボRS同様ひっそりと消えたモデル(グレード・バリエーション)を振り返ると以下のとおり。車種そのものは現存しつつも消滅したバリエーションは意外に多い。
■クラウンマジェスタ
1991年の登場以来、クラウンの上級モデルとしてV8エンジン搭載車から、3.5L・V6ハイブリッド搭載車へと姿を変えたマジェスタ。クラウンが2018年のフルモデルチェンジで大変革したこともあり、ひっそりと消滅。今後マジェスタのポジションは現行クラウンの3.5ハイブリッド“Gエグゼクティブ”(718万7400円)が引き継ぐと思われる。
■N-BOX+
車いす対応車では遅れていたホンダが「使いやすい車いす仕様車を作りたい。でもトータルで売れなければ赤字となり撤退を余儀なくされ、最終的にお客様を裏切ることになるから、ベース車は車中泊などに使ってもらえるクルマとして数を稼いで存続させる」というコンセプトで開発されたN-BOX+は2018年3月に消滅。
しかし、車いす仕様は、電動ウインチを装備するなどさらに改良されたN-BOXの車いす仕様車が、車中泊ユースやバイクのトランスポーターはN-VANが、しっかり引き継いでおり、今頃N-BOX+はどこかで喜んでいるに違いない。
■パジェロショート
2018年2月に日本向けは消滅したパジェロの3ドアは、価格が安い上にスペシャリティカーのようなファッショナブルな魅力もあっただけに、ぜひ復活を期待したい。
■ミラ&ミラバン
「ATは怖いからMTしか乗れない」という主に高齢者向けにラインナップされていたミラ&ミラバンは2018年3月で消滅。
実用軽自動車のMTは安全のためにも必要な存在でスズキはアルトとワゴンRにMTを残しており、ダイハツもミライースとムーブあたりにMTを1グレードでいいから設定するべきだ。
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