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さらばジャガーのエンジン車!──英国伝統ブランドの未来

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さらばジャガーのエンジン車!──英国伝統ブランドの未来

内燃機関を搭載するジャガーの複数モデルが、生産および受注停止になるという。ピュアEV(電気自動車)専売ブランドへと舵を切るジャガーの過去と今を小川フミオが語る。

魅力的なエンジンの数々

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英国の伝統的な自動車メーカー、ジャガーが、驚きのニュースを発表した。2023年9月に出されたニュースリリースによると、ジャガーは「F-TYPE」「XE」「XF」「XFスポーツブレーク」の生産および受注を終了するというのだ。

具体的には、F-TYPEは2023年11月21日、XE、XF、XFスポーツブレークは12月19日の受注分で“おしまい”という。

ジャガーは、1950年代以来、歴史に残るクルマを数多く手がけてきた。とくにジャガーの名車はエンジンと深く結びついている。

1948年には、最高速度120マイル(193km/h)に達すると謳った「XK120」で、世界中を驚かせた。この美しいスタイルのクーペのエンジンは、3.4リッター直列6気筒DOHCを搭載した。

1961年には、3.8リッター直列6気筒DOHCを長いボンネットの中に収めた、”世界でもっとも美しいクルマ”という評価もある「Eタイプ」でまたまた驚きを与えたこともある。

1971年には、5.3リッターV型12気筒を搭載したモデルが追加された。全長4.4mしかない2シーターのボディに、巨大な12気筒。エンジンが美しい外皮をかぶっているようなモデルだった。

1972年にはおなじ5.3リッターV12搭載のセダン「XJ12」が登場。日本市場では、当時、ジャガーの姉妹ブランドであるデイムラーの「ダブルシックス」も販売され人気を集めた。

並行して、1975年には2ドア・クーペの「XJ-S」がデビュー。このクルマにも5.3リッター12気筒が載せられていた。1981年に「HE(High Efficiency=高効率)ヘッドを搭載して出力アップ。同時期に、ジャガーカーズは、サー・ジョン・イーガン会長(1980~1990年)の指揮下、品質改良に本格的に取り組み、プロダクトの品質が大きく上がったのが私には印象的だった。

外科医を意味する英語「Surgeon」をもじってサージョン(組織にメスを入れるから)と呼ばれたイーガン会長期のジャガーは、XJ12/デイムラーダブルシックスがシリーズ3になり、XJ-Sが大きめのマイナーチェンジを受けた。

このころ私はよく、取材のためにダブルシックスやXJ-Sに乗った。新生ジャガーはみごとな出来で、トルクがたっぷりある12気筒と、シャシーのバランスもみごとと感じられ、ドライブが実に楽しかった。

12気筒とは別にXJサルーンにもXJS(XJ-Sからモデル名変更)にも6気筒モデルがあり、よく「(鼻先が軽い)6気筒と、12気筒と、どっちがいいか?」という話をしたのをおぼえている。

たいてい、なによりフィーリングがいいのは12気筒ということで、自動車ジャーナリストの談義は落ち着いたものだ。

このあとジャガーは、1996年にXJSの後継として「XK」シリーズを発表。このクルマは4.0リッターV8エンジンを搭載し、登場した。

このエンジンも、吹け上がりはそれほどシャープでないけれど、雰囲気があった。ふんわりとした、往年のEタイプを思わせる操縦性とよく合っていて、当時の、たとえばホンダ「NSX」(初代)のようなスポーツカーとはまったく別世界の乗りものだった。

時代はどちらからというと、硬派なNSXのほうに傾いていたように思うが、このころの初代XKシリーズは、やっぱり低回転域からトルクがたっぷりあるエンジンの印象とともに、実はいまでも私の憧れの1台である。

このように、ジャガーについて思い出すと、まっさきにエンジンのことが浮かんでくる。ほかにこういうメーカーは、BMWぐらいではないだろうか。

今後に期待!「(XE、XF、XJなど)BMWのラインナップのマネをしようとしても失敗。これは痛い教訓でした」

最近、私が会った本社の広報担当者は、上記のようにこのところのジャガーのモデル戦略を総括した。「4気筒は、やはりジャガーに向いていないんだろうか?」と、私は思ったものだ。

いっぽうでジャガーは、2023年7月に「FタイプV8」(これも私が好きなクルマ)のエンジンサウンドの録音データを、大英図書館のアーカイブに寄付したと発表。いい多気筒エンジンを作るメーカーだったのだ、ジャガーは。そんななか、ジャガーはエンジン車の生産終了を突き進む。「Fペイス」や「Eペイス」といったSUVはまだ生産されるようだが、将来的にはこちらも終売となるのだろう。

これからジャガーは、2025年の「ウルトララグアジュアリーEV」(ジャガー担当マネージング•ディレクターのロードン・グローバー氏談)の発表とともに、ピュアEVの生産に完全シフトするのだ。時代の趨勢のなかで、ICE(エンジン車)からBEV(ピュアEV)への移行は避けられないことなのだろうけれど、ジャガーのエンジンへの思い入れが強かった身としては、ややさびしいのだ。

が、いくつもの素晴らしいエンジンを手掛けてきたブランドだけに、ピュアEVもきっと素晴らしい出来栄えになるのでは? と、期待しかない。なにはともあれ、今後の新しいジャガーに要注目だ!

文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

12件
  • 今やインドの自動車会社。
  • エンジン…云々よりも、丸目4灯のXJサルーンは、おそらく「世界一エレガントで美しいセダン」だと思います…
    ゴツいアメ車のキャデラック、リンカーンとも、
    質実剛健!実用性、合理性、理詰めのドイツ車、スウェーデン車
    メルセデス・ベンツ、BMW、ボルボでもなく…
    英国的な貴族趣味だけど…まるで、流れるような…ネコ科のしなやかな身体つき…そう「ジャグァー」のような洗練されたボディーラインは、すばらしいです…
    逆にいえば…「乗る人」を選ぶかもしれません、
    「エレガントに…紳士的」に振る舞える人にしか似合わないでしょうね(笑)まさに英国紳士の乗り物かもです
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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