トヨタが上海モーターショーで発表した新EVシリーズ「TOYOTA bZ」のパートナー企業に、中国で電気自動車(バスを含む)の開発・製造を行っている企業「BYD」の名前が入っていた。
トヨタ bZシリーズのパートナー各社。トヨタだけで、さまざまなボディサイズやスタイルのEVを開発するのは困難なため、それぞれ得意分野を持つパートナー企業と共同開発を進めていく
超小型モビリティの積載物の重量制限を緩和へ 物流の電動化にどう影響するのか!?
中国企業ということで、難色を示す読者もいるかもしれないが、日本でも京都や沖縄でBYD製のEVバスが多数導入されるなど、進出が進んでいる。とはいえ、あまり知らないという人のほうが大勢を占めるのではないだろうか?
BYD K9(電動バス)沖縄・京都などに導入。2018年の沖縄導入を皮切りに年々日本国内での採用例が増えている
今回は、BYDとはいかなる企業なのか? トヨタ1社でも進められそうなのに、あえてBYDと組んだのはナゼなのか? 中国事情に詳しい近藤大介氏が詳しく解説していく。
文/近藤大介(現代ビジネス編集部)
写真/TOYOTA、BYD
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■日本人の知らないBYDは中国では超メジャーな自動車メーカーだった!!
2021年4月19日から28日まで開催された「上海モーターショー」で、トヨタが発表した新EVシリーズ「TOYOTA bZ」の中国側パートナーに、BYDの名前があった。日本ではBYDって何? との声も上がっているが……。
2021年4月19日、上海モーターショーにて世界初公開されたトヨタ 『bZ4X』コンセプト。スバルと共同で開発したEV専用プラットフォーム「e-TNGA」を採用し、2022年に発売する予定
30年以上にわたって中国取材・研究を続けている私から見たら、中国では、BYDはトヨタよりも有名な会社だ。2018年春には、CCTV(中国中央広播電視総台)が選出した「中国ブランド18社」の中に、自動車メーカーとして唯一選ばれた。習近平政権が進める「中国ブランド強化策」によって、中国14億の家庭には、CCTVが制作したBYDを称える特集CMが流れている。
BYDは、漢字で書くと「比亜迪」。「ビーヤーディ」と発音する。「アジアの他社よりも道を開く」という意味に取れ、アジアでナンバー1の自動車メーカーを目指すという気概を感じる社名だ。
BYDは、1995年に王伝福(おう・でんふく)CEOが、香港に接する広東省深圳(しんせん)で創業した。現在55歳の王伝福は、2021年のフォーブス世界長者番付で118位、163億ドル(約1.8兆円)という途方もない資産を誇る立志伝中の人物だ。
王は1966年、安徽省の貧農家庭に生まれ、湖南省長沙の中南大学冶金学部を卒業。北京有色金属研究所で修士号を取得し、同研究所で金属を分析する研究者だった。
この頃、中国で一世を風靡していたのが、米モトローラの携帯電話だった。今後、中国で携帯電話が大量に普及していくと見込んだ当時29歳の王は、携帯電話のバッテリー電池を作る会社を創業した。これがBYDである。
■携帯電話の電池メーカーから電気自動車メーカーへ転身の大ばくち!!
私は3年前に、深圳のBYD本社を訪れ、王CEOと、その側近でエンジニア出身の丁海苗(ちょう・かいびょう)副社長(2000年入社)を取材した。彼らは、いまから約20年前の日本にまつわるエピソードを話してくれた。
「当時、私たちは自動車産業への進出をもくろんでいました。その際、行ったのが、ダイハツのシャーリーを解体して、自動車の構造を徹底的に研究することでした。日本車は、深く内部構造を理解すればするほど、その精巧さに感銘を受けたものです。
2003年、われわれはひとつの重要な決断をしました。それは、このまま自動車の開発を続けていても、永遠に日米欧のメーカーにはかなわないと結論づけたのです。それよりも、わが社の得意分野は電池です。それならば、電池を動力にして走る電気自動車(EV)を開発することにしたのです。
これは大きな賭けでした。もしも将来にわたって、ガソリン車の時代が継続していくなら、私たちは敗北者になります。しかし、EVが主流となる時代が到来した暁には、BYDは世界の先駆者になれるのです。その時は、もしかしたらトヨタがコダックになるかもしれません」
コダックは、世界最大のカメラフィルムの会社だったが、今世紀に入りデジタルカメラの時代が到来し、淘汰されてしまった。そのデジタルカメラでさえ、いまやスマートフォンの出現によって淘汰されつつある。
この時のBYD最高幹部へのインタビューで、「トヨタ」という名前は、もう一回出てきた。
「電気自動車を世に問うていった時のわれわれの心境は、1965年のトヨタと同じ心境でした。当時のトヨタは、自分たちはアメリカ市場で通用するのかという不安を抱えたまま、乗り込んで行きました。実際、アメリカ人は当初、日本の自動車メーカーに疑心暗鬼でしたが、やがて受け入れました。同様に、わが社の電気自動車も、やがて世界が受け入れてくれる日がくると信じています」
結論を言えば、BYDは「賭け」に勝ったのである。周知のように、世界の自動車産業は、脱炭素の波を受けて、いまや一斉にEVに向かいつつある。
2020年の中国国内でのEVの販売台数のベスト3は、BYDが1位で17万9054台、2位は上海通用五菱で16万5609台、3位がテスラで13万5449台だった(中国乗用車連合会発表)。BYDは、世界中で人気を誇るテスラ車を押しのけて、中国市場でトップに立っているのである。
特にBYDが有利な点は、もともと電池の会社なので、「EVの心臓部」と言える電池を、自社でまかなえることだ。この点は、テスラにしてもトヨタにしても、電池メーカーと提携しないとEVが作れないことを考えれば、大きな経費とリスクの回避になるというわけだ。
中国の自動車業界に詳しい中国大手紙の知人の中国人記者は、今回の上海モーターショーでのBYDとトヨタの提携に関して、次のように述べた。
「今回のマッチングは、BYDよりもトヨタ側からのラブコールによって成立した。トヨタは中国で、『広汽豊田』と『一汽豊田』を持っているが、今後のEV時代を考えると、どうしてもナンバー1のBYDとの提携を確保したかったのだ。
逆にBYDが欲しかったのは、『TOYOTA』という世界に通用するビッグネームだ。同じEVでも、『BYD』よりも『TOYOTA』の名前をつけて売ったほうが、世界市場に浸透していけるからだ」
長くトヨタを仰ぎ見ていたBYDは、明らかにトヨタに憧憬を抱いている。その意味では、私はBYD側もトヨタとの提携には、感極まるものがあったと思う。今後の両雄の「結婚生活」に注目していきたい。
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直ぐにでも発表され流石と思いきや、世間を煽るのが上手なトヨタ。