愛車のエンジンオイル交換は、どこで行っていますか? ディーラーに任せっきりの方、オートバックスやイエローハットなどのカー用品量販店で好きな社外エンジンオイルの銘柄を選んで交換している方、自分でエンジンオイル交換をするという方、それぞれだと思います。
ここでふと疑問に思うことがあります。メーカー指定の純正オイルを入れるのがいいのか、それとも社外品の高性能オイルを使えばいいのか、ということ。
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そこでメーカー指定純正オイルが一番なのか? それとも社外オイルがいいのか、社外オイルのメリット、デメリットをモータージャーナリストの高根英幸氏が解説します。
文/高根英幸、写真/トヨタ、日産、ホンダ、カストロール、モチュール、AdobeStock(トビラ写真=ronstik@AdobeStock)
[gallink]
■純正オイルもロングライフ化により高性能になってきている
2020年2月に発売したトヨタ純正の0W-8のエンジンオイル(ヤリスHVやアクアほか)。低粘度のオイル品質規格「JASO GLV-1」認定を取得。常温での流動性能が高いエンジンオイルという特徴を持ち、燃費性能を約0.7%(従来の0W-16製品比)向上し、約25%の低粘度化
なにしろ、最新のトヨタヤリスハイブリッド/アクアに使われているエンジンオイルは0W-8。従来の0W-16でも驚異的な低粘度だったが、さらに粘度を下げることでオイルの撹拌抵抗を減らし、燃費を0.7%改善する効果があるそうだ。
超低粘度でも高い潤滑性能を長期間維持するためには、ベースオイルも添加剤もかなりこだわったものが使われていそうだ。
HV車やアイドリング機構装着車に推奨されているトヨタ純正キャッスルモーターオイル、0W-16W、0-20W。常温流動性能が向上したことにより、エンジン内部の動きがスムーズになったことで、エンジンの始動を繰り返すハイブリッド車やアイドリングストップ機能搭載車の燃費性能がアップ
しかし4Lで3900円という標準小売価格から判断するかぎり、ベースオイルは部分合成油(鉱物油をベースに水素化分解することで品質を安定させたもの)を使用し、FM剤(摩擦軽減剤)として有機モリブデンを添加して潤滑性能を確保しているらしい。
ハイブリッド車の場合、走行中にもエンジンが停止しているため、エンジンの始動停止を繰り返す回数が多いシビアコンディションエンジンオイルに対する要求も高い。正直言って、コスパを考えれば純正オイルが一番ではないか、というのが現在の状況だ。
日産純正ストロングセーブX 0W-8 GLV-1。e-POWERも発電時のみにエンジンが始動するシステム。エンジン稼働時間が短いため、低粘度オイルが必要なのだ
メンテナンスパックを利用しているユーザーは、ディーラーで定められた距離や時間によってオイル交換されているが、環境保護などを理由にオイル交換のサイクルは引き伸ばされていく傾向にある。
そのためエンジンを労りたいユーザーの中には、メンテナンスパックで定められたオイル交換の間に、ディーラーにて自費でオイル交換をしてもらったり、カー用品店や整備工場でオイル交換をしてもらっているケースも見かける。
これはこれで、賢い方法といえるが、交換するエンジンオイルの内容にも気を付けなければいけない。
ハイブリッド車ほどではないにしろ、最近のクルマのエンジンオイルはかなり厳しい環境に追い込まれている。低粘度化と低容量化という、潤滑性能とは相反する条件を追求されながら、摩擦を抑えて燃費性能を高めるよう設計されており、決して品質が安定した安いだけのオイルではない。
したがって純正オイルが大したことないオイルだと思って、カー用品店で粘度だけ同じレベルの安いオイルを入れるのは、絶対に避けるべきだ。
ならばディーラーでオイル交換すれば大丈夫かと言われれば、そうとは限らない。ディーラーでオイル交換=純正オイルとは限らないからだ。
スバルの純正オイルはスタンダードオイルの上に2種類のプレミアムオイルを用意している。左は0W-30、右は5W-40
ディーラーによっては純正オイルよりも価格の安いオイルを用意して、オイル交換のキャンペーンをすることで集客することもあるのだ。そんな場合でも粗悪なオイルは使わないだろうが、純正オイルより低価格な分、それなりのオイルであることを理解しておくべきだろう。
■化学合成油なら高性能、というのもひと昔前の常識
カストロールMagnatec HYBRID 0W-20 SN GF5。カストロールの独自技術により開発された高純度インテリジェント分子がエンジン内部に保護膜を形成し摩耗を抑える。ハイブリッド車やアイドリングストップ車専用のエンジンオイル
高性能なエンジンオイル、と聞くと化学合成油をイメージする人は多いのではないだろうか。確かに化学合成油はエンジンオイルの性能を引き上げたが、実は化学合成油にもいろいろ種類があって、メーカーによって表記も異なるため、非常に分かりにくくなっている。
一般的に使われる化学合成油はPAO(ポリ・アルファ・オレフィン)というモノで、これは石油由来のナフサや天然ガスを原料に作られている。化学的に高分子に組成されているため、非常に安定性が高く耐熱性、耐久性に優れているのが特徴だ。
それに対してエステル系と呼ばれる化学合成油は、植物油を原料にして高分子に組成したもので、ジェットエンジンの潤滑に使われるために開発されただけあって、耐熱性が高く潤滑性能にも優れている。
しかし化粧品の材料にも使われるなど潤滑油以外の需要もあり、ベースオイルが高いことから、当然価格も高くなる。
高性能なエステル系オイルは2L、5200~6000円前後と高価
部分合成油というのは、鉱物油をベースに高度な精製処理をして、分子構造を整えて品質の安定化を図ったものだ。鉱物油の分子は何種類もの炭化水素が混ざり合っているため、組成を均一にすることで性能が安定し、添加剤などの効果も弾き出しやすくなる。
なお部分合成油と聞くと化学合成油よりも性能で劣るのでは、と思われるかもしれないが、確かに耐熱性や耐久性は化学合成油のほうが高い傾向にあるが、オイル自体の潤滑性は鉱物油でも優れている。
鉱物油をベースにした部分合成油は、高い潤滑性に加えて安定性も高めた、コストバランスに優れた高性能オイルだ。
ややこしいのが半化学合成油という表記で、メーカーによってその内容がまちまちだ。鉱物油に化学合成油をブレンドしたモノもあれば、部分合成油を半化学合成油と表示しているものもあり、よく調べないとベースオイルは分からない。
API(アメリカ石油協会)のグレード表記があれば、グループIIが鉱物油ベースの水素化分解による精製油で、グループIIIがより高度な部分合成油、グループIVがPAOで、グループVがエステル系といったように、ベースオイルはひと目で分かる。
もっとも最近はグループIII+といったように、さらに細分化されているので、これも複雑化している傾向だ。
■低粘度化が進んでも潤滑性能は確保されている
エンジンオイルの粘度表示
広く使われているマルチグレードオイルの場合、粘度表示は、5W-30といったように2つの数字が組み合わされている。Wが付くほうの数字は冷間時など低温時の粘度を示し、後ろの数字は高温時の粘度を示している。
低温時は粘度が低いほど始動時などに抵抗が少なくなる。逆に高温時にはある程度の粘度がなければ、油圧が維持できなくなってしまう。以前は5W-40などワイドレンジな粘度のオイルが主流だったが、現在は全体として低粘度化が進んでいる。
粘度が高ければ油圧は高く、油膜も厚くなるため、油膜切れを起こしてしまう心配は少なくなるが、油圧ポンプでの駆動抵抗になり、クランクシャフトがオイルパン内のエンジンオイルを撹拌する際の剪断抵抗も大きくなる。
だから高出力を望まないエコカーのエンジンは、どんどん低粘度なエンジンオイルを採用するようになった。
最新のエンジンオイル規格ではSN級が最高級グレード
ガソリンエンジン車でも0W-20といった、高温時でも低粘度で潤滑性能をもつエンジンオイルを使うことが普通になってきたのだ。そのために純正オイルでも最近は添加剤を多用して潤滑性能を確保している。
粘度は流動性と油膜の厚さに関係し、粘度が低いほどサラサラで流動性は高いが、油膜は薄くなってしまうので油膜切れを起こして部品同士が直接接触することで摩耗する状態が起こりやすくなる。
粘度が低いオイルで潤滑性能を保つのが、いかに難しいことか、これでお分かりいただけただろうか。そのためメンテナンスフリーでも、オイル管理にだけは気を配りたい。
確かに化学合成油でも最も高性能と評されるエステル系のオイルは、酸化安定性にも優れているようだが、輸入車ではすでに純正オイルでもエステル系の化学合成油を採用しているところもある。
特にロングライフを実現する目的でドイツ車メーカーが採用している傾向が強い。ということは、化学合成油だから高性能オイルだと思い込んで選択しても、実は純正オイルよりもグレードが低い場合もある、ということだ。
■オイル管理をキチンとしていれば10万kmを超えても好調
上からエンジンオイルを交換する時、今まで入っていたエンジンオイルを抜くのは上から機械によって吸い取る方式ではなく、できれば下抜きを行いたい(fotofabrika@AdobeStock)
要は「オイル交換なんて、どこでやっても同じだろ。重要なのはオイル交換の費用」と思っている人に、注意喚起をしたいのだ。オイル管理はエンジンにとっては重要だ。数千円ケチッただけで、後々大きな代償を払うことになるかもしれないのだから。
しかも1回のオイル交換で不調になったり、フィーリングが変わるのは、よほど粗悪なエンジンオイルを入れた場合だけだ。ほとんどは新油に交換したことで、フィーリングは好転するので、大抵の場合は気付かない。
それを繰り返し行なったことで、エンジン内部の摩耗が進み、結果としてエンジンの寿命を縮めてしまうのである。オイル交換を怠ることで起こるようなトラブルが、何度も低品質なオイルを使ったことでも起こるのだ。
オイル交換したばかりのエンジンは、回転フィールが滑らかになって、音が静かになったりして明らかに潤滑性能が回復したと感じるものだ。そうしたフィールが感じ取れなければ、それは純正オイルより潤滑性能が低いということになる。
安いエンジンオイルでついついオイル交換を引き伸ばしたことで、エンジンから異音(クランクプーリー付近から共鳴音が出てきた)が出てきた経験をもつ筆者としては、同じような経験をしてほしくない、という思いだ。
また純正オイルより高価で高性能なエンジンオイルを使えばいい、という単純な問題でもない。というのも、粘度表示は同じでも、実際の粘度は銘柄によって意外と異なるし、潤滑性能や安定性を高めるための添加剤の配合も異なる。
場合によっては純正オイル(こちらも化学合成油であれば)よりも性能が低い化学合成油も存在するからだ。
もちろん純正より高性能なオイルを使うことのメリットは存在する。それはサーキット走行などのシビアコンディションでもエンジンを労り、ダメージの蓄積を抑えることだ。極限状態でのエンジントラブルを防ぎ、その条件下では燃費も純正オイルより良好だろう。
デメリットはオイルの価格が高いことと、相性問題のリスクだ。オイル漏れなどのトラブルの心配はほとんどないが、純正オイルより燃費が落ちることも有り得る。それでもエンジンを守る効果が高まっていれば、トータルでは割高ではなくなるかもしれない。
純正より高性能なオイルだからと、長く使うのもお薦めできない。確かに耐久性が高いオイルもあるが、良いオイルは清浄性も高く、カーボンなどを内部に取り込む能力が高い。
汚れたオイル、金属粉などを吸収したオイルをエンジン内に循環させ続けるのは、やはり摩耗を進める原因になる。オイルの交換サイクルを延ばすことは、リスクを高めるだけだ。
ともかく、最近のクルマはエンジニアがあらゆる手段を用いて燃費を高める努力をしている。エンジンオイルも燃費のためにギリギリまで考えられているのだ。少しでも長く、愛車のエンジンを本来の調子のまま維持したければ、エンジンオイルだけは半年に1回を目安に純正以上のオイルに交換するようにしたい。
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みんなのコメント
面倒くさいってオイル交換のことじゃなく、
人としてってことだよ。
こういうネタにホイホイ釣られて
持論をアツく語る人ってちょろいよねw
日頃から相手の価値観より、自分の主張ばかりを
押し通しているでしょ。