■進化のスピードが著しかった1970年から1980年代のクルマたち
我々の生活に非常に密接しているクルマですが、いわゆる「マイカー元年」と呼ばれる1966年から数えればまだ50数年しか経過していません。
「ツインターボ」を聞かなくなったワケ 時代と共に変化し続ける「ターボ」という技術
しかし技術が進歩するスピードは非常に速く、毎年何かしらの新技術が生まれているといっても過言ではありません。
いまでは多くの車種へ当たり前に装着された装備に関しても、初めて搭載した「パイオニア」的存在のクルマが当然存在します。そこで今回は、そんな革新的技術を持って登場した昭和のクルマたちを紹介します。
●ホンダ プレリュード/4輪アンチロックブレーキシステム(ABS)
急ブレーキを踏んだときや雨や雪などの滑りやすい路面で、ブレーキロックを起こしコントロール不能に陥ることを防ぐアンチロックブレーキシステム。
今ではトラック、バス、トレーラーのすべての車種に装着が義務化され、乗用車でもほぼすべてに装着されているシステムですが、この4輪のブレーキを細かく電子制御でコントロールするものを日本車で初めて搭載(オプション装備)したのが、1982年に登場した2代目ホンダ「プレリュード」でした。
フロントエンジン、フロントドライブのレイアウトを採用しながらも、イタリアのスーパーカー並みに低いフロントノーズを持っていたプレリュードは、日本車離れしたスタイリングが人気となり、デートカーとしても一世を風靡したクルマとして知られています。
ちなみに当時は「ABS」という呼称が一般化しておらず、ホンダは「4w-ALB(4-Wheel Anti-Lock Brake System)」と呼んでいました。
●スバル ジャスティ/電子制御式無段変速機(ECVT)
変速ショックがなく、スムーズに加減速ができ、車速にかかわらずエンジンを効率の良い回転数で維持できる無段変速機(CVT)は、非力な軽自動車やコンパクトカーはもちろん、今では比較的出力の大きなクルマにも採用されています。
これをオランダのVDT社との共同開発によって世界で初めて実用化に成功したのがスバル(当時は富士重工)「ジャスティ」でした。
ジャスティ自体は1984年にデビューしたスバルのリッターカーですが、無段変速機(ECVT)を搭載したモデルが追加されたのは1987年2月のこと。
その後は軽自動車の「レックス」や「サンバー」などにも搭載され、日産「マーチ」や、フィアット「パンダ」などメーカーの枠を超えて供給されていきました。
当時はまだ登場したばかりでトラブルの発生も少なくありませんでしたが、ECVTがあったからこそ今のような完成されたCVTがあるといえるでしょう。
●いすゞ アスカ/電子制御式自動5段変速機(NAVi5)
CVTやトルクコンバーターを用いたオートマチックとは異なり、MT車と同じクラッチと変速機を持ちながらも、クラッチの断続と変速操作をクルマ側に任せしてしまう、いわゆる「2ペダルMT」や「ロボタイズドMT」と呼ばれるシステム。
1984年9月にいすゞ「アスカ」に初めて搭載されたNAVi5と呼ばれるものが、世界で初めて実用化されたものだといわれており、これはマニュアルトランスミッションを電子制御により完全自動化した全自動5段変速機です。
NAVi5はほかにも坂道停止時にブレーキを保持し、発進時にブレーキを自動解除する坂道発進補助機能や、より高度なオートクルーズ機能も有しており、機能的には現代のクルマにも匹敵する装備を備えていました。
しかし時代を先取りし過ぎたのか制御系の洗練が追いつかず、アスカと「ジェミニ」に採用されたのみに留まってしまいました。このときの経験が現在のいすゞのトラックに搭載されている「スムーサー」というトランスミッションに生かされています。
●ホンダ レジェンド/運転席エアバッグ
いまではすべての車種に当然のように装着されるエアバッグ。サイドエアバッグやカーテンシールドエアバッグ、ニーエアバッグといった乗員を保護するものから、歩行者保護用として車外に展開するものまで非常に幅広くなっています。
そんな万が一の時に人命を守ってくれるエアバッグを国産車として初めて採用したのは、ホンダのフラッグシップである「レジェンド」で、1987年9月におこなわれたマイナーチェンジ時に搭載されたものでした。
初代レジェンドは、当時のホンダのフラッグシップモデルというだけでなく、1986年に北米でスタートしたホンダの高級車ブランド「アキュラ」のフラッグシップを担うモデルとして開発されたクルマであり、北米向けモデルには当初からエアバッグが装着されてリリースされていたのです。
ちなみに1989年7月のマイナーチェンジでは前輪駆動車として世界初となるトラクションコントロールを搭載するなど、安全面にも力が入れられたモデルでした。
●日産 セドリック&グロリア/ターボエンジン
ターボと聞くと「モアパワーを求めて」というイメージを持ってしまう人も少なくないと思いますが、現代におけるターボとは、エンジン本体の排気量は小さくしながらも、出力は従来並みをキープするという「ダウンサイジングターボ」的な使われ方が一般的になりつつあります。
そんなターボエンジンを国産車として初めて搭載したのは、1979年12月にマイナーチェンジを受けた日産「セドリック/グロリア」でした。
スポーツカーではなくセダンに搭載されたひとつの理由としては、当時の運輸省が高出力のスポーツカーは事故に繋がるとして認可しない可能性を見越したもので、当時の広告などにも大排気量エンジンと同等の性能を維持しつつ、排出ガスの清浄化、燃費の向上、低騒音を達成するものとアピール。まるで現代のダウンサイジングターボと同じようなノリだったのです。
※ ※ ※
このように今は当たり前となった装備でも時代を先駆けとなったクルマがあり、当時は商業的に失敗といわれたり欠陥品といわれたりしたようなものでも、その失敗があったから今の成功があるというワケです。
今後も多くの新たな装備、技術が登場すると思いますが、数年後に生き残る技術は何になるのか見当もつきません。
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