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V6/ボクサー4の「小さな」高級 ゴルフ VR6(Mk3) x インプレッサ・ターボ 初代から5代目 比較試乗(3)

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V6/ボクサー4の「小さな」高級 ゴルフ VR6(Mk3) x インプレッサ・ターボ 初代から5代目 比較試乗(3)

V6エンジンを積んだ前例のないゴルフ

1991年発売の3代目フォルクスワーゲン・ゴルフは、保守的な新世代だった。ゴルフ Mk2の仕様へ詳しい人なら、Mk3の走りを予想することができた。エンジンとサスペンション、トリムグレードなどの設定は、基本的にキャリーオーバーされていた。

【画像】小さなファミリーカーを指す代名詞 VWゴルフ 初代から5代目 最新の8代目も 全139枚

3代目で重視されたのは、安全性の向上と、廃車になってからのリサイクル性。排気ガスの浄化にも技術力は割かれた。それでも、前例のないゴルフも生み出されている。2.8L V型6気筒エンジンを積んだVR6だ。

VR6という新仕様は、フォルクスワーゲン・パサートとコラードで1年前にデビュー。小柄なエンジンサイズと聴き応えのあるサウンドで、大きなファンを獲得していた。そしてファミリー・ハッチバックへの搭載は、新たなカテゴリー創出へ繋がった。

このV6エンジンの特徴は、両バンクのシリンダーが、ヘッドを共有すること。パワフルさだけでなく、滑らかさと扱いやすさ、洗練性を追求したユニットだった。BMW 3シリーズへ近い運転体験を宿す、小さな高級ファミリーカーが目指された。

この考えは、同時期の日本でも取り組まれていたものだった。マツダと三菱は、前輪駆動の小型モデルを想定した、コンパクトなV6エンジンを開発。スバルは、レガシーのパワートレインをひと回り小さいボディへ詰め込んだ、インプレッサを生み出した。

洗練されたアウトバーン前提の特性

スバルは、1980年代には四輪駆動モデルで定評を築いていたが、まだ実用車が中心だった。しかし、水平対向エンジンに過給機を組み合わせたインプレッサ 2000ターボは、ワンランク上の洗練性と動力性能を獲得していた。

初代の特徴の1つが、北米で人気を得た4ドアサルーンに加えて、5ドアのスポーツワゴンが設定されたこと。ハッチバックとステーションワゴンの中間といえるプロポーションで、欧州市場が求める実用性を実現していた。

インプレッサ・スポーツワゴンの全幅や全高は、ゴルフ VR6 Mk3とほぼ同じで、前者の全長が110mm長い程度。1994年の英国価格も殆ど変わらなかったが、性格は明らかに違っていた。

フォルクスワーゲンの狙い通り、ゴルフ VR6は洗練されていた。最高出力176ps、最大トルク23.8kg-mを発揮する狭角のV6エンジンは、直列6気筒の点火タイミングを採用でき、アイドリング時からスムーズに回転した。

高速道路での利用が重視され、110km/h時の回転数は2800rpmと低め。そこからシフトダウンすれば、厚みのある排気音を響かせながら、リニアで力強い加速を披露した。

アウトバーン前提の特性は、シャシー設定にも表れている。安定性が高く挙動を予想しやすいが、反応はおっとり気味。ステアリングは重くスローで、サスペンションは柔らかめ。車重は2代目より増え、コーナーでの荷重移動が滑らかとはいい難い。

高速域でも、車内は快適。穏やかな気持ちで運転できるものの、カーブでは慣性の縛りを感じてしまう。

ゲームチェンジャーといえたインプレッサ

インプレッサは洗練度で及ばなくても、能力の高さには唸らされる。サスペンションのストロークは長く、荒れたアスファルトでも乗り心地は良好。路面変化による揺れは小さくないが、ボディロールは抑制されている。

四輪駆動システムは、フロントアクスルを軸にしてボディを旋回させる。フォード・シエラ・コスワースや、ランチア・デルタ HFインテグラーレのように。それなのに、スポーツワゴンのリアシート後方には、大きな犬を載せられる荷室も付いている。

低く屈んだ1994ccの水平対向4気筒ターボエンジンは、パワーとキャラクターでVR6に並ぶ。何しろ、かのEJユニットだ。

2500rpmからトルクが沸き立ち、4000rpmまで、現代的なスポーツカーへ劣らない勢いの加速を生み出す。活発に走るにはブースト圧を保つ必要があるとはいえ、回転フィールは上質。荒々しさは微塵もない。

この2台が積むエンジンはどちらも素晴らしいが、技術的に興味深いのはゴルフ VR6だろう。3代目の販売は少し苦戦したとはいえ、洗練という新境地へ踏み出した。

それでも、ゲームチェンジャーといえる存在だったのはインプレッサだ。比較的手頃な価格で、扱いやすいサイズに優れたパッケージングを実現している。実用性と動的能力を、ここまで高次元で叶えたモデルは他に例がなかったといっていい。

フォルクスワーゲンは、数年後にゴルフ VR6のシャシーを引き締めている。有能なインプレッサを参考にして。

協力:ロンドン・ロード社、クラシック・コネクション社

ゴルフ VR6(Mk3)とインプレッサ 2000ターボ 2台のスペック

フォルクスワーゲン・ゴルフ VR6(Mk3/1991~1998年/英国仕様)

英国価格:1万7545ポンド(新車時)/1万5000ポンド(約285万円/現在)以下
生産数:約480台(Mk3合計)
最高速度:222km/h
0-96km/h加速:7.1秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1155kg
パワートレイン:V型6気筒2792cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:176ps/5800rpm
最大トルク:23.8kg-m/4200rpm
トランスミッション:5速マニュアル(前輪駆動)

スバル・インプレッサ 2000ターボ・スポーツワゴン(1994~2000年/英国仕様)

英国価格:1万7999ポンド(新車時)/2万ポンド(約380万円/現在)以下
生産数:約74台(合計)
最高速度:220km/h
0-96km/h加速:6.1秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1213kg
パワートレイン:水平対向4気筒1994cc ターボチャージャーDOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:210ps/6000rpm
最大トルク:27.7kg-m/4800rpm
トランスミッション:5速マニュアル(四輪駆動)

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