あらゆるコーナーでパワースライド
ダーク・グリーンが美しい、1953年式モーガン・プラス4のオーナーは、アンブローズ・ラングレー・プール氏。アメリカへ1度輸出され、英国には2023年に帰ってきた。その後、ボディは地金へ戻され再塗装。真新しい内装とソフトトップも与えられた。
【画像】2気筒から8気筒へ 4台のモーガン 最新のプラスフォーとプラスシックス、スーパー3も 全128枚
彼のプラス4は、スタンダード・ヴァンガード社製エンジンを積んだ最後の1台。モーガンは、1953年に1991ccのトライアンフTR2用4気筒へ切り替えたからだ。
傾斜した平面のラジエーターグリルが、見た目では最大の特徴。1954年には、ウォーターフォールと呼ばれる、滑らかにカーブを描いたグリルへ変更されている。突き出たヘッドライトやランニングボードなどに、戦前の面影が漂う。
ステアリングホイールが胸元へ垂直に伸びるものの、足もとには見慣れたアクセルとブレーキ、クラッチの3枚のペダル。大きいスピードメーターの横へ、燃料と水温、電流、油圧を組み合わせた補機メーターが並ぶ。
肘を外側へ突き出してステアリングホイールを回すスタイルが、クラシック感を高める。ヘッドライトのスイッチは、足で操作するタイプだ。
プラス4は、出だしから扱いやすい。エンジンはドライなサウンドを響かせ、モス社製4速MTのシフトレバーは短く、動きにムダがない。ペダル間隔が広く、ヒール&トウも簡単にできる。
旋回時のボディロールは最小限。車重は838kgと軽く、操舵へ正確に反応する。BFグッドリッチ社製のクロスプライ・タイヤは、あまりアスファルトを掴まない。あらゆるコーナーで、パワースライドさせて楽しめる。
基本的に1950年のプラス4と同じシャシー
創業者の死後、モーガンの経営を受け継いだのが息子のピーター・モーガン氏。パワートレインなどは、時代の規制へ合致するよう開発は重ねられたが、新しいプラス4 プラスは商業的に失敗。2000年から2018年までは、寄り目のエアロ8が提供されてきた。
しかし、近年まで同社を支えていたのは、古い技術をベースにしたモデル。その代表例が、1968年に発売されたモーガン・プラス8と、2004年に発売されたモーガン・ロードスターという2台だ。
ロードスターでは、2シーターに加えて2+2の4シーター・ボディも選択可能。当初は同時期のフォード・モンデオに載っていた、3.0L V型6気筒デュラテック・エンジンを搭載し、年式次第で206psから226psの最高出力を発揮した。
ご登場願ったレッドのロードスターは後期型で、エンジンは3.7L V6のデュラテック・サイクロン。最高出力は284psと、大幅に引き上げられている。
オーナーのジム・ロウ氏は、これを新車で購入。イタリアへ旅行するなど、積極的に乗って楽しんでいるという。
ダッシュボードのレイアウトは、プラス4に遠からず。スイッチ類は整えられ、悩まず操作できる。シートは調整可能になり、3スポークのステアリングホイールは小径に。より自然な運転姿勢を取れる。
このロードスターで特筆すべき点が、基本的には1950年のプラス4と同じ設計のZフレーム・シャシーを採用すること。細かな改良が施されていたとはいえ。
プラス4用シャシーへ3.5LのV8エンジン
加速は、猛烈と表現できるほど鋭い。7000rpmのレッドラインまで一気に吹け上がり、V6エンジンらしい粒の揃った咆哮が周囲を満たす。トルクが太く、高いギアのまま安楽に巡航できる。しかし戦前のクルマの雰囲気も漂い、不一致感が否めない。
乾燥した路面でも、加速の度にボディが震える。ステアリングはパワーアシストが強すぎ、切り始めで少し神経質。角度が増えるほど徐々にリモート感が増し、望まないキックバックも伝わってくる。
ブレーキは良く効くものの、ペダルの感触は不安定。思ったように減速できない。シャシーとパワートレインは、単独では有能といえる。しかし、両者の取り合わせが望ましいとはいえないだろう。
対して、ローバー由来の3.5L V型8気筒エンジンを搭載したプラス8の発売は、1968年へ遡る。技術者だったモーリス・オーウェン氏は、既存のプラス4用シャシーへオールアルミ製ユニットを押し込むという課題へ、見事に応えてみせた。
当初は、ローバーP5 Bというサルーンと同じ、157psの最高出力を発揮。電動ファンの採用などで冷却系が見直され、ダイナモからオルタネーターへ変更するなど、電気系統のアップデートも施された。
今回のトニー・テビー氏のプラス8のように、後期には燃料インジェクションを採用し、最高出力は192psへ上昇。ローバーによる開発のお陰で、後年には4.6L V8も設定された。トランスミッションも、長いモデルライフの中で4速から5速へ変更されている。
最も運転体験の魅力度が高いプラス8
トニーが所有するネイビー・ブルーのプラス8は、1968年の初期型よりシャシーが2インチ(約50mm)広く、アルミ製ボディは4インチ(約100mm)広い。ステアリングにアシストはなく、リミテッドスリップ・デフが組まれている。
キャビンはレザーで仕立てられ、ダッシュボードにはスピードとタコの大きなメーターが2枚。その間に、4枚の補助メーターが並ぶ。ステアリングコラムから伸びるレバーなどは、ローバー由来なことがわかる。
3.5L V8エンジンは、期待通り意欲的で素直。ストロークの長いアクセルペダルを傾けると、瞬間的に回転数が上昇する。粘り強く、4500rpm以下でも充分に楽しめる。
モーガン・ロードスターほど速くはないようだが、V8らしいサウンドが心を満たす。積極的にシフトチェンジする必要はない。500rpmから、滑らかに加速していく。
プラス8は、当時の英国製スポーツカーで、32km/hから128km/hまでの加速が最速だった。車重1t当たりの最大トルクは、29.9kg-mとたくましい。
動的な印象は、設計の古いシャシーの限界付近でもがいている感じ。それでも、ロードスターのように超えてはいない。カーブでは、フロントアクスルが不自然に震えるものの、グリップ力は悪くない。
ステアリングホイールには充分な重さが備わり、キックバックは小さくないが、充分なフィードバックも伝わる。サーボレスのブレーキは、高速域では相応に踏む力が必要ながら、ペダルの感触は好ましい。
爽快に速く繊細。今回の4台のモーガンで、最も運転体験の魅力度は高い。
唯一といえる伝統ブランドの地位
3輪のモーガン・スーパースポーツと、初期のプラス4は、安価に刺激的な運転体験を与えるモデルだった。同時代のライバルへ劣らない魅力で、唯一といえる伝統ブランドの地位を築いた。それは、現代にも受け継がれているものだろう。
その後のロードスターとプラス8は、ハンドビルドの趣や戦前のスタイリングが、現代的なエンジンと融合。時代へ合わせた努力を感じるものの、客観的な評価でいえば、ロードスターは少し度を超えている。プラス8が、4台のベスト・バランスかもしれない。
協力:ビスター・ヘリテージ、スターターモーター社、OxMOG社
2気筒から8気筒 4台のモーガンのスペック
モーガン・プラス8(1968~2004年/英国仕様)
英国価格:1万5435ポンド(新車時)/5万ポンド(約1000万円/現在)以下
生産数:6130台
全長:3962mm
全幅:1600mm
全高:1320mm
最高速度:193km/h
0-97km/h加速:5.6秒
燃費:7.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:915kg
パワートレイン:V型8気筒3528cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:192ps/5280rpm
最大トルク:30.3kg-m/4000rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)
モーガン・ロードスター(2004~2019年/英国仕様)
英国価格:3万8250ポンド(新車時)/5万ポンド(約1000万円/現在)以下
生産数:2117台
全長:4010mm
全幅:1720mm
全高:1220mm
最高速度:225km/h
0-97km/h加速:5.5秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1000kg
パワートレイン:V型6気筒3726cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:284ps/6000rpm
最大トルク:38.6kg-m/4500rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)
モーガン・プラス4(1950~1969年/英国仕様)
英国価格:610ポンド(新車時)/4万5000ポンド(約900万円/現在)以下
生産数:6853台
全長:3683mm
全幅:1422mm
全高:1321mm
最高速度:136km/h
0-97km/h加速:12.8秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:838kg
パワートレイン:直列4気筒2088cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:68ps/4300rpm
最大トルク:15.4kg-m/2300rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)
モーガン・スーパースポーツ(1933~1939年/英国仕様)
英国価格:136ポンド(新車時)/5万ポンド(約1000万円/現在)以下
生産数:820台
全長:3150mm
全幅:1499mm
全高:−mm
最高速度:117km/h
0-97km/h加速:−秒
燃費:14.2km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:434kg
パワートレイン:V型2気筒990cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:42ps/4800rpm
最大トルク:−kg-m
トランスミッション:3速マニュアル(後輪駆動)
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