来日したVWのキーパーソン、イマルダ・ラベー氏にインタビュー
2023年で日本正規輸入70周年を迎えるフォルクスワーゲン(以下VW)。積極的に電動化を進める同社は自動車産業の大変革期において、どのように電動化を進め、ブランドをどのように育んでいくのでしょうか? そして、日本市場へのアプローチは? ドイツ本社から来日したキーパーソン、セールス・マーケティング・アフターセールス担当取締役のイマルダ・ラベー氏に話を伺いました。
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イマルダ・ラベー氏とは
フォルクスワーゲン ブランド セールス・マーケティング・アフターセールス担当取締役(Member of the Board of Management of the Volkswagen Brand responsible for “Sales, Marketing and After Sales”)。
1986年から2013年まで、オペルとゼネラルモーターズで国際的な管理職につき、2013年からは、VWグループのシュコダオートドイツの取締役会などで要職を歴任。2016年以降、VWグループのグローバルなアフターセールス事業活動を統括し、直近ではVW OTLGの取締役会スポークスウーマンを務める。自動車業界における35年のキャリアにおいて、営業、マーケティング、アフターセールス、生産など国内外のさまざまな幹部職を歴任し、2022年7月1日より現職。
ICEとBEVのバランスはその市場にあわせて
──VWはいま積極的に電動化を進めておられます。一方で日本は欧州や中国に比べて電動化が遅れていると言われています。いまの日本のマーケットをどのように見ていますか?
われわれはパイオニアとして変革を積極的に推進していきます。しかし同時に、現在の日本市場にとって重要なのは、ICE(内燃エンジン)のポートフォリオを完璧なものにする戦略です。私たちは、「ICEパーフェクション」と「エレクトロモビリティへのトランスフォーメーション」と呼んでいます。
そして、この2つの側面をバランスさせ、VWブランドがより多くの人に愛される「Love Brand」であることに立ち返り、製品ポートフォリオの構築に取り組んでいく。これは非常に重要なことです。今回わたくしがこの場にいる理由は、日本市場特有の要件を理解し、どのような製品を市場に投入すればいいのか、それらに対応するためです。
VWは、ピープルズカーであり、どの市場においてもお客さまが望むものを提供するのが使命だと考えています。そして、電動化のペースはマーケットによって異なります。日本では(登録車における)BEVシェアは3~4%です。一方でノルウェーではもはやICEはほとんど売っていません。私たちの戦略は、市場にあわせてICEとBEVの両方のバランスをとっていくものです。
デジタル一辺倒ではなく日常での使いやすさを追求
──「Love Brand」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
お客さまがVWに長年抱いてきたイメージを反映したものです。テクノロジーが発展し、デジタル化が進んでも、お客さまがクルマに名前をつけたり、人生の伴侶としてクルマを愛することは変わりません。VWブランドの利点は、「ゴルフ」や「VWバス」など、歴史を通じて機能的なものだけでなく、ライフスタイルの要件にも対応した象徴的なモデルを生み出してきました。
そして今、「ID.」ファミリーは、電気自動車に乗りたい人たちのライフスタイルを表現し、それに伴うさまざまなニーズに対応しています。大切なことは、過去の財産を活用し、それらを未来につなげる、完璧なかたちで融合することだと考えています。
それを具体的にどのように表現すればいいのか? 私たちが最初に取り組んだのは、日常的な使い勝手と機能性でした。調査の結果、お客さまは世の中でこれだけデジタル化が進んでいるにもかかわらず、ダイヤルを使って直感的かつシンプルに操作するような機能を求めていることがわかりました。
ですから「ID.2 all」は、デザイン面では、このクルマを見た人が「いかにもVWだ」と思っていただけるよう、ゴルフなどのクラシックなデザイン要素を取り入れてあります。そしてユーザーエクスペリエンスという点では、例えばエアコンの温度調節であったり、オーディオのボリューム調整においてはハプティック(触覚による)が非常に大事ということで、スライダー方式をやめました。HMI(ヒューマンマシンインターフェース)が大事で、それがお客様の要望であると認識したからです。日常における使いやすさを取り入れることが、「Love Brand」につながっていくと思います。
ゴルフやGTIの電動化は、アイデンティティを真に反映できてから
──電動化時代におけるファントゥドライブについては、どのように考えますか?
私たちは、BEVもICEと同じで、運転する楽しさはとても重要だと考えています。先日新しい「ポロGTI」を発表したばかりですが、今後GTIのコンセプトはゴルフでも継続していきます。2024年には、(本社のある)ヴォルフスブルクでGTIライフスタイルをフィーチャーした大きなイベントを実施する予定です。最近、ポロGTIの運転する楽しさを伝えるソーシャル・メディア活動を行ったところ、みんな大喜びでした。たくさんのお客さまが、「これこそ、VWの象徴だ」と言ってくださいました。ですから私たちはこのファントゥドライブをさらに強調していきます。
──BEVになってもGTIは残るのでしょうか?
もちろんGTIは非常に重要であり、将来的に非常に明確な方向性を持っています。しかし、電動化については非常にいいアイデアがありますが、どうするのかについてはまだ時期尚早でお話しできません。当面はICEになりますが、GTIやRモデルについても、よりエモーショナルなものという位置づけで続いていきます。
──ではゴルフはどうなるのでしょうか?
ゴルフは残ります。VWといえばゴルフであり、ゴルフといえばVWともいえる代名詞です。もちろん、日本ではSUVの需要が非常に高まっており、「ティグアン」も人気の製品であることを認識する必要があります。私たちの戦略は、アイコン的な製品を維持しながら、将来的に電動化されたポートフォリオにうまく移行していくことです。
それを端的に表しているのが、アイコンを電動化した「ID. Buzz」です。私たちはアイコンと呼ぶ以上は、ブランドの遺産を継承しつつ、そして未来の価値にこたえられるものでなければならないという明確な基準を設けています。ゴルフのアイデンティティを真に反映した製品が完成してはじめて、私たちは電動ゴルフを発表するのです。それまでゴルフは電動化しません。
日本市場においては、来年末に次期型ゴルフを発表する予定です。ICEパーフェクション戦略の一環として、GTIも新たに追加し、次の時代へつなげることを約束します。ゴルフの電動化はその先の話になると思います。
また来年には、ティグアンも「パサート」も、同時にRラインなどのエモーショナルなモデルもアップデートします。これは私たちの戦略の一部であり、日本市場においては当面、ICEのポートフォリオのほうにバランスを置いていくことになります。
* * *
フォルクスワーゲン ジャパンが現在導入しているBEVは「ID.4」のみ。ID. Buzzが2024年末に国内導入予定というが、それ以外はまだ聞こえてこない。「ICEパーフェクション」はもちろん重要だが、ID.2 allなど「BEVトランスフォーメーション」にも期待したい。
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みんなのコメント
トヨタと同じくマルチパスウェイの考え方なんでしょうね。
中国、アメリカ、フランスの様な原発活用国のBEVと脱原発の国を中心とした水素の2分されるんでしょうね。