今年10月中旬あたりから兵庫県知事がリアシートに乗る公用車が、レクサスLS600hLからトヨタのセンチュリーに買い換えられたことが波紋を呼んでいる。
そこで本稿では、知事が「乗れば必要性が分かる」というセンチュリーのどこが特別なのか、先代型センチュリーを1年半ほど所有した経験もある筆者が改めて解説したい。
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文/永田恵一、写真/トヨタ、奥隅圭之
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センチュリーってどんなクルマ?
センチュリーは、かつての日産 プレジデントや三菱 デボネア/ディグニティといったモデルもあったショーファーカー(専門の運転手さんが運転し、オーナーはリアシートに座るクルマ)で、現在新車で販売されるショーファーカーとしては日本唯一の存在である。まずは現行型で3代目となる歴代のセンチュリーを簡単に紹介したい。
●初代モデル(1967年登場)
初代センチュリーは、トヨタの創設者である豊田佐吉氏生誕100年の年に誕生した(販売期間:1967年~1997年)
初代センチュリーが登場した1967年は、トヨタの創設者である豊田佐吉氏生誕100年の年であった。初代モデルはクラウンの2代目モデルに設定されたクラウンエイトに搭載されたものを基とするV8エンジンを搭載し、改良を繰り返しながら30年間生産された。
●2代目モデル(1997年登場)
30年振りのフルモデルチェンジを行い、2代目センチュリーが誕生した。日本車では最初で最後となるであろう5LのV12エンジンを搭載。(販売期間:1997年~2017年)
30年振りのフルモデルチェンジとなった2代目センチュリーは、2代目セルシオをベースに初代モデルのイメージを残しながら洗練されたスタイルに移行。
エンジンは直6エンジンを2つ組み合わせた、日本車では最初で最後となるであろう5LのV12を搭載。「故障で止まることは絶対に許されない」というクルマだけに、エンジンに故障があってもV12エンジンの6気筒分となる片バンクで走行できる機能や燃料ポンプを二系統持つ点など、航空機並みのバックアップが備えられていた。
2代目モデルの初期型の価格は1000万円以下からで、エンジンや後述する生産方法などを考えたらこの価格は激安だった。なお宮内庁が管理し、センチュリーロイヤルという車名を持つ御料車は2代目モデルがベースである。
●現行型3代目モデル(2018年登場)
現行型センチュリーは、2代目から21年振りのフルモデルチェンジで誕生した。安全装備やハイブリット化による燃費、走行性の劇的向上を行った(販売期間:2018年6月~)
21年振りにフルモデルチェンジとなったセンチュリーの現行モデルは、5L・V8ハイブリッドを搭載していた先代レクサスLS600hLをベースとしている。これも「実績ある信頼性、耐久の高いものをベースに」という思想からである。
現行センチュリーは、安全装備やハイブリッド化による燃費、動力性能や操縦性に代表される走行性能の劇的な向上など、2020年代を走るショーファーカーに相応しい性能を得た。
価格は1996万2963円からで、箱根駅伝の先導車を務めた豊田章男社長のGRMNセンチュリーや、2019年の現天皇陛下の即位パレードに使われたオープンカーのベース車になった点も話題となった。
なぜセンチュリーはレクサスと比べても特別なのか?
センチュリーは何が特別なのか? レクサス LSを基準に考えていくと以下のような点があげられる。
●よりフォーマルなクルマとしての性格
レクサスLSは、クルマの後方に向かってルーフラインが下がるクーペルックを持つ
具体的には、クルマの後方に向かってルーフラインが下がるクーペルックを持ちパーソナルなLS、威風堂々としたスタイルで黒などのダークカラーが似合いフォーマルなセンチュリーという棲み分けだ。
LSは自分で運転するクルマとも言い換えられ、公用車やショーファーカーに相応しいのは当然センチュリーである。
●世界有数、日本一の快適性
センチュリーのリアシートは、座り心地の良いシートと内蔵されるマッサージ機能などもあり、状況に応じて有効に使える
筆者は現行センチュリーにリアシートを含めて何度か乗った経験があるが、高速道路では隣の車線を走るトラックの走行音が気になるくらい静かで、ただただ滑らかにクルマが走り、良い意味で乗り心地も船のようにユッタリと実に快適だった。
それでいて、面白みこそ薄いものの、シッカリとしたハンドリングを備えているので、ショーファーカーに必要なイザという時の逃げ足も申し分ない。
リアシートもパンと張った座り心地のモケットシート、フンワリとした座り心地のレザーシートともに甲乙付けがたく、シートに内蔵されるマッサージ機能や充実したエンターテインメント機能により移動時間を休息・考えごとをするなど、状況に応じて有効に使える。
●日本のモノ造りの底力の象徴である
センチュリーが存在する理由の1つに生産技術をはじめとした「技術の伝承」というものがある。センチュリーは歴代ライン生産ではなく、現行モデルでは1日2台から3台が手押し車に乗せられ、熟練の職人さんによる手作りで生産される。
ライン生産ではなく、熟練の職人さんによる手作りで生産される。特に塗装に手が込んでおり、専用ブースでの作業に一週間、さらに仕上げに水研(磨き)が行われる
センチュリーの生産過程での代表的な凄さはまず塗装だ。センチュリーの塗装は非常に手が込んでおり、塗装ブースでの作業に一週間掛かり、仕上げには水研と呼ばれる磨きも行われる。
なおセンチュリーのボディカラーは黒ならばエターナルブラック(神威)といった日本語のサブネームも付き、こんなところにも和を感じさせる。またピシッと成形されたフェンダーも手作りだ。
さらにセンチュリーは生産されたクルマそれぞれの生産時の記録が工場に保管されるヒストリーブックというものに残され、完成後に走行テストも行われる(そのため納車時にはオドメーターがいくらか進んでいる)。
センチュリーのボディカラーは黒ならばエターナルブラック(神威)といった日本語のサブネームも付く。(写真:鳳凰エンブレムを手彫りしているところ)
筆者は現行センチュリーの生産過程を見学したことがあるが、「こんな風に生産している日本車があるのか!」と驚き、この生産過程と実物を見れば約2000万円という価格は安いと断言できる。
筆者は現行型とそれほど変わらない手間を掛けて生産されていた2代目センチュリーに乗っていたことがある。
必要性はまったくないクルマだったが、18年落ち走行約15万kmという中古車ながらまったく問題なく走る耐久性の高さ、V12エンジンやクオリティの高さ、自動車メディアで働いていてもなかなか乗ることのないクルマということもあり、いい経験と思い出になった。
公用車にセンチュリーは必要なのか
ここまで書いたように、いろいろな意味でセンチュリーは日本に必要なクルマである。
しかし、トヨタとゆかりある愛知県や静岡県などの知事の移動用なら分かるにせよ、絶対的な価格もありそれほどトヨタと縁深くない兵庫県知事用にセンチュリーというのは疑問だ。
井戸知事は移動用にセンチュリーが必要な理由として「壊れるようなクルマでは困る、兵庫県は坂が多いからパワフルな5Lのクルマが必要」といったことを挙げている。しかしトヨタ車なら信頼性、耐久性はどれも高い。
筆者なりに公用車に相応しいクルマをトヨタ車から選んでみると、フォーマルな使い方にも対応でき、3.5LV6ハイブリッドなら燃費と速さが両立しているクラウン、豪華なシートやエンターテインメント機能を持ち、多人数も乗れるので公用車の資質が高いアルファード/ヴェルファイア。
アルファード/ヴェルファイアは豪華なシートやエンターテインメント機能を持つ公用車の資質が高いクルマである
そして、MIRAIなどがあげられる。MIRAIは、インフラとの兼ね合いもあるが、国や地方自治体の要人こそこういったクルマに乗って普及を進めて欲しい。また外国からのお客様に対しても、燃料電池車というだけでセンチュリーの豪華さや造り同様に話題には欠かないだろう。
次期型MIRAIのリアシートは、3人掛けで、ショーファーカーに対応した仕様もあり、注目すべきクルマである
さらに次期MIRAIのリアシートは3人掛けで、ショーファーカーユースに対応した仕様もあり、価格もそう高くないようなので、オーナーカーとしてはもちろんショーファーカーとしても注目すべき存在だ。
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みんなのコメント
これって静粛性がないと言ってるレベルなんだけど・・。