次のカーブを貪欲に追い求めたくなる
今回の試乗では、フランス南部、マルセイユへ続くナポレオン街道と、ニースへ続くヴァンス峠を走らせていただいた。ナポレオン街道は勾配がきつく、ヘアピンカーブや2速で抜けるような低速コーナーが多い。ヴァンス峠は、3速の高速コーナーが続く道だ。
【画像】フェラーリ・ローマへ大接近 アストン マーティンDB12 競合グランドツアラー DB11も 全127枚
かくして、アストン マーティンDB12は抜群の敏捷性を披露。タイヤのグリップ力は極めて高く、安定し流れるように滑らかな操縦性で、存分にワインディングを楽しませてもらった。
アストン マーティンのローレンス・ストロール会長と、以前にお話をする機会があったのだが、彼はあえて先代のDB11を遅いと表現していた。同社の技術者たちは、その発言へ応えたのだろう。DB11に勝るDBSより、DB12は断然速い。
4.0L V8ツインターボエンジンは、速度域を問わず間髪入れずにパワーを繰り出す。8速ATも、見事に調和している。とはいえ印象としては、スーパーツアラーという言葉からイメージするものより、グランドツアラー的ではある。
トルクコンバーター式だから、デュアルクラッチのようにキレキレの容赦ない変速をするわけではない。V8エンジンのサウンドも、かつてのV12エンジンのように鼓膜を打ち破ろうかという壮大な音響ではない。不足はない聴き応えではあるが。
ボディの剛性感は、DB11から7%向上したという数字以上に強固。高速コーナーでは、アグレッシブなスポーツカーのように活き活きと走る。まさに没入的で、次のカーブを貪欲に追い求めたくなるほど。
現実的な条件での快適性に感心
一方で、速度域が低いチャレンジングな道では、小さくないボディサイズが少々気を揉ませる。また電子制御のeデフと8速ATも、ヘアピンでスリリングな走りへ興じるには、若干特性が甘いかもしれない。
実際の敏捷性という点では、一層スポーティなアストン マーティン・ヴァンテージとの間に、明確な開きはあるようだ。あちらは、ひと回りコンパクトではあるけれど。
引き上げられた速さ以上にDB12で感心したのは、市街地など現実的な条件での快適性。アストン マーティンが新たに採用したダンパーは、能力の幅が相当に広い。特に低速域での洗練性は秀抜といえ、680psもあるクーペだということを忘れさせるほど。
乗り心地は終始しなやかで、我慢を強いることは皆無に近い。今回は高速道路を延々と走る機会はなかったものの、長距離クルージングを疲れ知らずでこなせそうだ。
加えて、インテリアの知覚品質も大幅に前進している。内装の素材は上質なものばかりで、居心地が良く、DB11とは隔世の差があるといっていい。
タッチモニターを獲得したアストン マーティンではあるが、操作性やレイアウトにはまだ向上する余地がある。エアコンなどに、実際に押せるハードボタンが残された点は高く評価できる。だが、最新モデルに相応しいデザインとまではいえないかもしれない。
出色のフェラーリ・ローマへも大接近
新しいDB12の開発は、見事に成功したと表現できる。このクラスのグランドツアラーでは、トップレベルの訴求力を備えていると感じた。
快適性や高級感を追求したベントレー・コンチネンタルGTと、比較できる洗練性を持ち合わせている。さらに、出色のフェラーリ・ローマへも大接近できている。
有能なミドシップ・フェラーリの登場によって、フロントエンジン・リアドライブのそれは少し影が薄い存在になっている。しかし、大陸を股にかけるグランドツアラーとして秀抜の完成度にあり、息を呑むような興奮のドライビング体験も味わわせてくれる。
筆者は、ローマがDB12の最大のライバルになると考えている。拮抗する2台での比較試乗は、きっと素晴らしい内容になるだろう。相手の方が、能力の幅という点で若干有利かもしれないが。
少し話がずれてしまったが、ハイエンド・ブランドとして不足ない技術を搭載し、セグメントのトップグループに加われるDB12の登場を、大いに祝福したい。長い伝統を持つアストン マーティンとして、相応しいモデルが誕生したようだ。
アストン マーティンDB12(欧州仕様)のスペック
英国価格:18万5000ポンド(約3238万円/予想)
全長:4725mm
全幅:1980mm
全高:1295mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1685kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:680ps/6000rpm
最大トルク:81.4kg-m/2750-6000rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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