現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 1967年11月、東京都杉並区生まれの少年が伊達軍曹になるまで[烈風編]

ここから本文です

1967年11月、東京都杉並区生まれの少年が伊達軍曹になるまで[烈風編]

掲載 更新 14
1967年11月、東京都杉並区生まれの少年が伊達軍曹になるまで[烈風編]

ほとんどの外車王SOKEN読者各位はご興味ないであろう筆者の半生記も、今回でおしまいである。正直、わたしはほっとしているし、読者各位もそうであろう。「やっと終わってくれたか!」と。

まぁとにかく今回は、15年前に超五流出版社を辞めて独立してから今日に至るまでの、わたくしの仕事遍歴およびクルマ遍歴についてである。

日時は覚えていないが、場所はよく覚えている。東京・下北沢の某居酒屋で、わたしは永福参謀長こと清水草一さんと酒を飲んでいた。そしてわたしが「来月いっぱいで会社を辞めることにしました。つきましては、恐縮ですが清水さんの連載も、次が最終回ということにさせてください」と告げると、のちの永福参謀長はしばしの黙考ののち、「……では軍曹くん、一緒に“会社”をやらないか?」と言った。

編集プロダクション「有限会社フォッケウルフ」誕生の瞬間である。

直接尋ねたわけではないので「おそらく」だが、ちょうとその頃、清水草一さんも「何か新しいこと」を始めてみたい気分だったのだろう。

資本金を折半して拠出し(や、清水さんのほうが多かったのかな?)、清水さんが「プレジデント」を名乗り、わたしが「エディトリアルプレジデント」なる肩書の名刺を作り、とにもかくにも有限会社フォッケウルフは船出をした。2005年11月のことだった。

ちなみに、現在の筆名である「伊達軍曹」というのはこの頃、永福町駅前の焼鳥店「串善」にて決定した。

わたしはライターではなく編集者であったため、筆名を使って前面に出るつもりはいっさいなかったのだが、清水プレジデントは「何か筆名を作ったほうがいい」と言う。

そのため、「そうですねぇ……わたしは東京出身ですが、先祖が宮城県なので、たとえば『伊達』でどうでしょうか? そして、伊達……軍曹? 意味わかんないですけど」。「うむ、軍曹というのはいいな! なんかこう威張ってない感じがあってイイと思う。では『伊達軍曹』で行こうじゃないか!」みたいな会話が、永福町駅前の「串善」で行われたのだ。

しかしその後6年間ほど、結局わたしはライターではなくエディターとしての仕事を中心に行ったため、「伊達軍曹」という筆名を使う機会はほとんどなかったのだが。

で、フォッケウルフがとりあえず船出をしたのはいいが、「仕事のアテ」など実はまったく無かったため、わたしは発足月、永福町にあった事務所の掃除ばかりをしていた記憶がある。清水さんは、たしかイタリアだかどこだったかで開催された試乗会に参加するため、長期不在にしていた。

掃除のしすぎでピカピカになった事務所には、京王井の頭線という電車のほか、会社員時代から乗っていたメルセデス・ベンツ190E 2.3-16というクルマで通っていた。

前回、「30代半ばまで190E 2.3-16に乗っていた」という旨のことを書いたが、それは記憶違いであった。わたしは38歳まで、それに乗っていた。なぜならば、買い替えるカネがなかったからだ。そしてなぜカネがなかったかと言えば、仕事がなかったからだ。自社の事務所をいくら掃除していても、売上は1円もあがらない。

しかし、なぜかちょぼちょぼ入ってくる仕事をこなしているうちに(たしか“営業”というのは、最初にベストカー編集部とCARトップ編集部に『会社作りましたので、何かありましたらよろしくお願いしま~す!』との挨拶に行った以外はしていなかったと思う)、ちょぼちょぼがズンズンになり、ズンズンがガンガンになり、わたしは儲かり始めた。

まぁ儲かり始めたといっても大したことはなく、前職である五流出版社の給料が悲惨だっただけなのだが、とにかくまあまあの月次収入が入ってくるようになった。

そのためわたしはクルマを買い替えた。

E46型のアルピナB3 Sというドイツ車である。

詳しいスペックは覚えていないが走行1万kmぐらい中古車で、価格はコミコミ600万円だった。
なぜアルピナを買ったかと言えば、「ドイツ車が好きだったから」というのがもちろんあるのだが、それと同時に「ナメられたくないから」という気持ちのほうが強かったように思う。

フリーランスのライターやエディターというのは、とにかくナメられがちである。もちろん人や会社によるのだが、大したことのない人間や会社ほど、フリーランスの人間を「乞食同然の何か」とみなし、ナメた態度をとってくる。「ほれ、1万円の仕事をくれてやるからオレのやり方に従えよ。1万円、欲しいだろ? お前なんて乞食同然なんだから」ってなもんである。

かなりいい年のおっさんとなった今でこそ、そういった言動をされても「あーはいはい」という感じでさほど頭には来ないが、まだ30代で血気盛んだったわたしは「ふざけんなテメー! ナメてっとぶっ●すぞオラーッ!」的なオーラを振りまいている若中年だった。

しかし「ふざけんなテメー!」と言っても相手はなかなかふざけることをやめないため、わたしは「アイテムの力」に頼ることにした。

すなわち「クルマ」で相手を黙らせ、「時計」で相手をビビらせる。……今にして思うと浅はかというか若いというか、とにかくアレななわけだが、まぁ当時のわたしはそう思ってしまったのだ。

そのためアルピナB3 Sを買い、IWCの腕時計を買い、ロレックスを買った。そしてそれらを身に着けながら、ひたすら「オラオラオラ! ナメんなコラッ! オレはテメエなんぞより収入上だぞ実は!」とばかりに血圧を高くしていた。

しかし結論として、アルピナB3 Sは1年少々で売却することになった。

アルピナのローン支払いは月々10万円で、わたしはそれを普通に払えてはいたのだが、払いながらも「不安」で仕方なかったのだ。

「今は大丈夫だけど、この先仕事が減ったらどうしよう……?」

「で、仕事が先細ってアルピナを売るハメになったとき、走行距離が延びてるとまずいよな……」

「アルピナに月10万円も払うなら、その分を貯金しといたほうがいいのかも?」

等々とウジウジ考え続けてしまい、手元にカネがないわけではないのだが、考えるのは毎日カネのことばかり。

要するに「まだアルピナの器ではなかった」ということだ。

ある日唐突にそのことを悟ったわたしは、その日のうちにアルピナB3 Sを某店に買い取ってもらい、その某店で、当時はまた現行型だったR50型のミニを購入した。5MTのクーパーで、色はホワイト。走行距離は2万kmぐらいで、価格は覚えていないが――たしか100万円ちょいとか、そのぐらいだったように思う。

R50型ミニ クーパーは、もちろん悪いクルマではなく、むしろいいクルマではあったが、アルピナの強力な個性と比べれば「なんてことのないクルマ」だった。

だがわたしには、そのミニの価格を含む「なんてことのなさ」が気持ちよかった。自ら掘って自ら入った落とし穴から這い上がり、久々においしい空気を吸えたような、そんな気がした。

それ以前も、「手頃な価格の輸入中古車」に関するさまざまな記事を編集者として制作していたわたしではあった。しかしアルピナB3 Sからミニに買い替えたこの瞬間こそが、のちに中古車評論家・伊達軍曹として「手頃な価格の中古ガイシャこそがイチバンですぜ!」と張ることになり論陣の、本当の意味での“原点”なのだと思う。

またまた長い原稿になってしまった。これ以上、誰も興味がない半生記を長引かせるのも本意ではないため、後はコンパクトかつスピーディに進めることにしよう。

ミニの後は964型ポルシェ911のカレラ2を200万円ぐらいで買い、その後は100万円ちょっとのアルファ ロメオGTV、80万円ぐらいの初代メルセデス・ベンツSLK、70万円ぐらいのシトロエン2CVに乗った。

その後は250万円ぐらいのランチア デルタHFインテグラーレ エボ2を買い、やや疲れて先代のルノー メガーヌ R.S.モナコGP(300万円だったかな?)に買い替え、初代ルノーカングー(100万円ぐらい)で釣りにハマった。

そして初代マツダ ロードスター(これも100万円ぐらい)ときて、今現在は人生初の新車として(月賦で)買ったスバル XVに乗っている。……ここに挙げたモデルのほかに漏れているクルマもあるかもしれないが(わたしは忘れっぽいのだ)、まぁだいたいこんな感じである。

以上が、ざっくりとしたわたくしの半生記である。

これが読者各位のお役に立ったかどうかは甚だ疑問であり、たぶん何も役に立ってはいないと思うのだが、まぁ少なくとも「暇つぶし」には寄与できたと確信している。

本来は「清水草一さんの執筆姿勢から学んだこと」「わたし自身がこの15年間のフリーランス生活で獲得した知見」を書いたほうが、各位の人生のお役に立てたと思うのだが、こちらはクルマ媒体なので仕方がない。

話は以上である。

*前回の記事:1967年11月、東京都杉並区生まれの少年が伊達軍曹になるまで[少年編]

1967年11月、東京都杉並区生まれの少年が伊達軍曹になるまで[少年編]

1967年11月、東京都杉並区生まれの少年が伊達軍曹になるまで[青雲編]

1967年11月、東京都杉並区生まれの少年が伊達軍曹になるまで[青雲編]

[画像・ライター/伊達軍曹]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

[車検]費用が増える? 2024年10月より車検での[OBD検査]を本格運用へ
[車検]費用が増える? 2024年10月より車検での[OBD検査]を本格運用へ
ベストカーWeb
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
ベストカーWeb
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
Auto Messe Web
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
AUTOSPORT web
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
AUTOSPORT web
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
乗りものニュース
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
motorsport.com 日本版
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
AUTOSPORT web
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
AUTOSPORT web
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
AUTOSPORT web
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
くるまのニュース
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
AUTOSPORT web
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
AUTOCAR JAPAN
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
Auto Messe Web
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
AUTOSPORT web
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
AUTOSPORT web

みんなのコメント

14件
  • 私は共感した。いい歳の勤め人が独立するときの不安と高揚感はわからんわけでもない。
  • 伊達軍曹頑張れ~清水先生ともども、これからますます大変だけど…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

298.0490.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

14.81790.0万円

中古車を検索
MINIの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

298.0490.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

14.81790.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村