9月21日、スポーツランドSUGOで行われたスーパーGT第7戦の公式予選。素晴らしいコースレコードタイムでポールポジションを獲得したSUBARU BRZ R&D SPORTに続く2番手につけたのは、現在ランキング首位のARTA NSX GT3の高木真一/福住仁嶺組となった。一方で、ランキング2位のマネパ ランボルギーニ GT3、3位のK-tunes RC F GT3は苦しい結果に。明暗が分かれる予選となった。
■思わぬ苦戦を強いられたランキング2位・3位
今季のスーパーGTは、雨となった第1戦岡山で優勝を飾った新田守男/阪口晴南組K-tunes RC F GT3が第3戦鈴鹿でも優勝。一気に30ポイントを積み重ねたが、その後は第6戦オートポリスまで無得点。36点となっている。一方、小暮卓史/元嶋佑弥組マネパ ランボルギーニ GT3は、第3戦以外全戦でポイントを重ねており、第2戦・第6戦での3位表彰台で2位につけ36.5点を重ねている。
彼らをリードするのは、高木/福住組ARTA NSX GT3。第1戦・第2戦での連続2位の後も全戦で得点を重ねており、現在41.5ポイントでランキングをリードする。そんなARTA NSX GT3が2番手につける一方、K-tunes RC F GT3は18番手、マネパ ランボルギーニ GT3は26番手に沈んでしまったのだ。
マネパ ランボルギーニ GT3の元嶋に今日のアタックについて聞くと、「Q1はあれでパーフェクトです。現状まわりがあそこまで速い理由が分かっていないので、苦しいところです」という。
またK-tunes RC F GT3については、公式練習で新田がニュータイヤでのアタックをこなせておらず、予想以上にタイヤのウォームアップに苦しんでしまったことがQ1脱落の理由だ。今回のSUGOでは多くのドライバーがウォームアップに苦しんだが、「もう少し緻密に考えられれば良かったけれど……」と大ベテランの新田ですら苦しんだ予選だった。
彼らにARTA NSX GT3の2番手というグリッドについて聞くと、「それはいちばん痛い(新田)」「気にしていますが、とはいえ仕方ないです。今までもレースで上がってきているので、できることをするしかないです(小暮)」という。特にK-tunes RC F GT3にとっては、このSUGOでARTA NSX GT3との差をつめておきたい理由があった。
彼らが使うレクサスRC F GT3は、中高速コーナーが続くコースが得意。今季彼らが勝った鈴鹿、そしてオートポリスやタイは得意だ。一方で最終戦が行われるもてぎのようなストップ&ゴーはかなり苦手。その点で、このSUGOでなるべくポイントを稼いでおきたかったのだ。
「RC Fはもてぎがあまり得意ではないので、このSUGOをなんとか獲って、もてぎでしのぐレースができれば……という部分があった。こういう結果になってしまったので、自分自身も落ち込む部分はあるけれど、落ち込んでいても仕方がない」と新田。
「明日天候が僕たちに味方するのかは分からないけれど、ARTAに有利に働くのは間違いないので、それを無理に追いかけるよりも、あまり離されないようにきちんとレースをするのが大事ですね」
■ARTA NSX GT3は余裕をもって最終戦に臨めるか
一方、ARTA NSX GT3も実はSUGOで得点を稼いでおきたかった理由があった。「この結果はデカい。明日は雨だしね(笑)。それに昨年34号車(Modulo KENWOOD NSX GT3)がもてぎで結果が出にくく、どちらかというとSUGOの方が結果が出やすかったと思う」というのは高木だ。
「そう考えると、ここである程度引き離しておかないと、かなりもてぎはつらい」と高木。その点では、ARTA NSX GT3の今回の予選までの仕事ぶりは、高木と若き福住の好走もあり、パーフェクトに進んでいると言えるだろう。
「どのサーキットにいっても予選ではいつも前にいたいと思いますし、今年は一度もQ1落ちしていないので、ある程度いいポテンシャルで走れていると思っています。今回ウエイトが半分になったとはいえ、いちばん重いなかで予選2番手になったので、チームや高木さんの力のおかげだと思っています。明日に向けてもいい流れですし、タイトル争いのなかでも最低限の順位ではないでしょうか」と福住も口をそろえた。
ただ、そんなARTA NSX GT3もまだ“王手”をかけられたわけではない。2018年も最終戦のレース前までチャンピオンにいちばん近い位置にいながら、手のひらから王座がこぼれ落ちていった。
「こういったところで“SUGOの魔物”が現れるからね。そこを注意しながらレースを戦わなければいけないかな。ここ2戦はチームとしてもペナルティがあったので気を引き締めてここに挑んでいるけれど、まずはミスがまずないようにレースを戦わないと」と高木は気を引き締める。
「チャンピオン争い自体は今までもずっとやってきているけれど、最終戦でうまくかみ合わないことが多かったりする。日ごろの行いから良くしているつもりでもダメなので(苦笑)、何かがあるのかもしれない」
「最終戦、もしかしたら『こんなに楽に獲れたんだ』になるかもしれないし、やっぱり辛くなるかもしれない。毎年タイトルは争っているので、冷静に分析できる部分はありますけどね。まあ楽じゃないですよ」
「今年、初めてのNSX GT3を扱いながら精一杯やってこられた。ブリヂストンもチームもよくやってくれたからこそ、ここまで来られたと思う。その総合力を活かして、今回と最終戦に繋げていきたいですね」
ブリヂストンはウエットが強いこともあり、高木は「ドライバーもチームも含めミスをなくしていけば、最低でも表彰台はいけると思う」と決勝に期待する。
そして、フル参戦初年度からタイトル争いに絡んでいる福住も「いいタイヤを履いて、いいチームで走れていますし、まして高木さんがチームメイトですからね。ランキングでこの順位なのは当たり前だと思っています。自分自身へのプレッシャーというよりも、ドライバーとしていい仕事をしなければと思っています」という。
果たしてARTA NSX GT3が“余裕をもって”最終戦に臨むのか。予選では苦しんだ2台が決勝で逆襲をみせるのか。はたまたランキング4位以下につけるARTA NSX GT3、T-DASH ランボルギーニGT3、GAINER TANAX GT-R、グッドスマイル 初音ミク AMGが“逆襲”をみせるのか。レースの行方は見逃すことはできない。
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