■日本人は「限定」がお好き?
自動車メーカーが販売する限定車や特別仕様車といわれるモデルには、発売当日どころか発売からたった数分で完売となるコトも少なくありません。今回は、そんな「即完売」を記録した国産限定スポーツカーを3車種紹介します。
もはや「スカイラインGT-R」は手が届かない存在!? 価格高騰が激しい車3選
●日産「スカイラインGT-R V・spec II Nur」
1999年1月に日産「スカイラインGT-R(BNR34型)」が発売。その後、2000年10月のマイナーチェンジで、NACAインテーク付きカーボン製ボンネットフードを装着した「V・Spec II」を発表しました。
2001年6月には、スカイラインがフルモデルチェンジしますが、GT-Rは追随せず、RBN34型が継続販売されます。しかし、「平成12年排出ガス規制」に対応が困難となり、2002年8月に生産終了してしまいます。
そして、生産終了直前の2月26日、最終記念車「V・spec II Nur」(新車価格約610万円)および「M・spec Nur」(新車価格630万円)が、合計1000台で販売されましたが、発売告知をおこなった2002年1月24日で即日完売となったのです。
なお、2007年に発売となった後継車の日産「GT-R」が「スカイライン」の名称を外したため、スカイラインGT-Rとしては、このBNR34型が最後となっています。
この生産終了を記念した限定モデル「Nur(ニュル)」は、GT-Rがテストコースとして使用していたドイツのサーキット「ニュルブルクリンク(Nurburgring)」の名が由来です。
Nur仕様では、外観部分では専用エンブレムが採用されているぐらいの違いですが、エンジンの各種パーツはすべてN1仕様(JAFの国内競技レースのひとつ)となったほか、スピードメーターが300km/hまで刻まれていました。
V・spec II Nurの流通について、前述とは別の中古車販売店スタッフは以下のように話します。
「V・Spec IIは何度かありますが、Nurは数年前に1度しか取り扱ったことがありません。クルマの状態が良かったので定価以上の価格が付きましたが、店頭に並んだその週には売れてしまったと思います。購入されたお客さまは、SNSでNurが売られているという情報を見て遠方から駆けつけたという人でした」
2020年3月15日現在、大手中古車サイトでも取り扱いはわずか数件、さらにすべての価格が「ASK(要問合せ)」となっています。GT-R最終型のなかでも別格の人気を誇るクルマのようです。
●ホンダ「シビック Mugen RR」
2007年に登場したホンダ「シビック Mugen RR」(以下、無限RR)は、ホンダのワークスである無限の手によるブランド初のコンプリートカーで、300台限定で販売されました。
アルミ製ボンネット、カーボン製フロントバンパー、カーボン製ブレーキ冷却用ダクトなど、FFの弱点となりかねない前部重量を徹底的に軽量化。さらに、レカロと共同開発したフロントシートにもシェルにカーボンを採用するなど、車両重量は30kgのダイエットに成功しました。
エンジンパワーに関する改良も相当で、2リッター4気筒DOHC VTECは、パワーと低騒音性の両立を図ったデュアルエキゾーストシステムとなり、ノーマル比プラス15馬力の最高出力240馬力となっています。
ほかにも、専用開発の減衰力5段階調整式サスペンション、スリットが設けられた前後大型ブレーキローター、専用スポーツブレーキパッド、ステンレスメッシュブレーキホース、さらにノーマルよりリム幅が増された専用鍛造ホイールなど細部まで手が加えられています。
当時の価格は、477万7500円(消費税5%)となり、「秘めた獰猛ともいえる性能は使い手を選ぶ」といわれるほど、その走行性能は発売前から話題を呼びました。
無限RRの人気について、前述の中古車販売店スタッフは以下のように話します。
「V・spec II Nurより販売台数は少ないものの、流通は多い気がします。中古車であれば価格は定価以下のものが多く、そこまで高騰しないため、店舗側もユーザー側も取り扱いやすいのではないでしょうか。しかし、人気は高いです。当店では2、3回取り扱いましたが、すべて販売して1か月以内には売れてしまいました」
2020年3月15日現在、ホンダ認定中古車検索サイト「U-Select」では3台の取り扱いがあり、価格帯は300万円前後とそこまで高額ではありません。
■スバルの限定車はいつも即完売! なかでも印象的なのは…
●スバル「インプレッサ22B-STi Version」
スバルは、1995年から3年連続で世界ラリー選手権(WRC)の総合優勝を飾るコンストラクターズチャンピオンとなっています。
そのWRC3連覇を記念して1998年3月に登場したのが、「インプレッサ22B-STi Version」(以下、22B-STiバージョン)です。タバコブランド「State Express 555」のWRCモデルと同じソニックブルーに塗られた2ドアクーペは、400台限定で発売、新車販売価格は500万円でした。
ベースとなる「WRXタイプR STi Version IV」が299万円だったので、当時のインプレッサとしては破格な価格設定です。しかし、希少性と高スペックが話題になり、発売後わずか2日間で完売しました。
22B-STiバージョンは、インプレッサのクーペボディをベースに、WRCモデルを彷彿とさせる前後ブリスターフェンダー、前後バンパー、リアウイング、サスペンションはWRCモデル同様の専用チューンを受けたビルシュタイン製ダンパーとアイバッハ製スプリングを採用。さらに、ゴールド塗装のBBS製鍛造アルミホイールに235/40R17タイヤを装着しています。
パワートレインには、STI(スバルテクニカインターナショナル)が専用チューニングした22B専用エンジンを搭載、排気量を2212ccに拡大しています。
そして、22B-STiバージョンは、登場から20年以上が経過した現在でも伝説のモデルとして、その人気は衰えません。中古車販売店スタッフは以下のように話します。
「インプレッサは人気車種で、状態が良いクルマはすぐに売れてしまいますが、このモデルはそのなかでも特別だと思います。数年前に1度だけ買取ったことがありますが、査定中の場面を見かけたお客さまが、その時点で予約をされていきました。値段を付ける前でしたが『いくらでも払う』と仰っていたのが記憶に残っており、別格なクルマなんだと感じました」
スタッフの話す通り、大手中古車サイトでも見かける機会は少なく、走行距離の少ない無改造・無修復歴車は1000万円超のプレミアム価格で取引されることもあるようです。
2019年10月には、555台限定のWRX STIの最後の特別仕様車「EJ20 Final Edition」が限定販売されましたが、将来は驚くべき高値を呼ぶクルマになるかもしれません。
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