現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 新型GR GTは、なぜV8の過給エンジンを採用したのか?

ここから本文です

新型GR GTは、なぜV8の過給エンジンを採用したのか?

掲載 2
新型GR GTは、なぜV8の過給エンジンを採用したのか?

ついに全貌が明らかとなった新型GR「GT」のメカニズムは、かなり凝っていた! 世良耕太が解説する。

パフォーマンスに振り切ったハイブリッドシステム

ディフェンダーの商用モデル、日本上陸へ!──GQ新着カー

TOYOTA GAZOO Racingは2025年12月5日、「公道を走るレーシングカー」をコンセプトに開発したGR GTとGR GT3を発表、開発中のプロトタイプ車両を初公開した。GR GT3はFIA GT3規格のレーシングカーである。国内のSUPER GTやニュルブルクリンク24時間、ル・マン24時間を含むWEC、デイトナ24時間を含むアメリカのIMSAなどに参戦が可能な車両だ。

公道を走れるレーシングカーのGR GTを先に開発し、これをもとにレーシングカーのGR GT3を仕立てたのではなく、GR GT3の構想を先に固め、公道を走れるようにバランスさせたのがGR GTと考えるのが正解である。手法としては、ラリー競技で活躍できる性能を担保すべく開発した「GRヤリス」と同じだ。

エンジンは排気量4.0リッターV型8気筒ツインターボである。「なぜV8の過給エンジン?」と質問すると、発表会場にいた説明員は次のように答えた。

「エンジンありきで決めたわけではなく、このクルマとしてどういった性格であるべきか。いまの時代にこうしたクルマ(公道を走るレーシングカー)を出すときに、どうあるべきか。サーキットをしっかり走ることができて、日常使いも楽しめるようにと考えた結果、このエンジンになり、このトランスミッションになったということです」

レーシングカーのGR GT3はエンジンのみを搭載するが、公道バージョンのGR GTはエンジンにモーターとバッテリー、PCU(パワーコントロールユニット)を加えたハイブリッドシステムを搭載する。「日常使いも楽しめる」ようにハイブリッドにしたのだろう。しかも、トランスミッションはMTでもDCTでもなく8速ATだ。

ATなら日常の使い勝手に心配は要らない。しかしいっぽうで、「公道を走るレーシングカーとしてはどうなの?」という疑問が湧こうというものだ。

しかし心配は要らない。GRヤリスと「GRカローラ」に設定がある「GR-DAT」の例がある。ドライバーの意思を先読みした巧みな変速制御と電光石火の変速により、ATでも十分、というより、GRが開発したATだからこそ、スポーティな走りが存分に楽しめる仕立てになっている。GR GTのATもその血統を受け継いでいることが容易に想像できる。

前述のようにGR GTは4.0リッターV8ツインターボエンジンをフロントに搭載する。そして、プロペラシャフトによって動力をリヤに伝え、後輪を駆動する。いわゆるFRだ。しかし、一般的なFRと異なる部分がたくさんある。順に説明していこう。

まず、エンジンの搭載位置だ。フロントの車軸より完全に後ろにあり、フロントミッドシップとなっている。重量物を重心点近くに置いて車両運動性能の向上に寄与すると同時に、前後重量配分を適正化するのが狙いだろう。

しかもこのエンジン、極端に低い位置に搭載されている。これは、低いボンネット高を実現すると同時に重心を下げるためだ。

そのために、レーシングエンジンの定番技術であるドライサンプの潤滑方式を採用している。通常はウェットサンプでクランクケースの下にオイルパン(オイル溜まり)が設置されるが、ドライサンプの場合はオイルパンをなくし、スカベンジポンプで強制的にオイルを回収。別体のオイルタンクにオイルをためて循環させる。この方式を採用することで、エンジンの搭載位置を大幅に下げられる。

多くのV8エンジンはVバンク(V8の場合は90度が一般的で、GR GTもそう)の外側が排気、内側を吸気にする。ところがGR GTのV8エンジンは吸気がVバンクの外、排気がVバンクの内側にある、いわゆる「ホットV」のレイアウトを採用する。他社のV8には採用例があり、メルセデスAMG「GT」などが搭載する4.0リッターV8やBMW「M5」などが搭載する4.4リッターV8がホットVだ。

ホットVのメリットはコンプレッサーで加圧し温度が高くなった吸気を冷やすインタークーラーまでの経路と、インタークーラーから吸気までの経路を短く、効率良くレイアウトできる点。さらに、タービン後方の触媒を近くに配置できるのもメリットで、触媒の効率が高くなる。つまり、性能面でも環境面でも利があり、ゆえにGR GTはホットVのレイアウトを採用した。

FRレイアウトの場合、エンジンの後部にトランスミッションを締結するのが一般的だが、GR GTはそうしなかった。トランスミッションをエンジンから切り離してリヤに置き、デフと一体化するトランスアクスル方式を採用する。前後重量配分の適正化のためだ。8速ATを内蔵するトランスアクスルの前端にはモーターを配置し、そのモーターの内側にモーター切り離しクラッチと発進クラッチ(どちらも湿式多板)を収めている。

ATの場合、トルクコンバーターを発進デバイスに用いるのが一般的だが、ダイレクト感を重視したのだろう。GR GTは湿式多板クラッチを選択した。いわゆるトルコンレスのATである。湿式多板クラッチと8速ATの組み合わせは、直近ではマツダ「CX-60」や「CX-80」に先例がある。GR GTのトランスアクスル上にはPCU、さらにその上にバッテリーが載る。

前後重量配分は45:55で、フロントエンジンにもかかわらずリヤ寄りなのは、トラクション性能を確保するためだ。タイヤサイズはフロントが265/35ZR20、リヤは325/30ZR20である。いかに太いタイヤを履いていようとも十分な垂直荷重がかからなければパワーは路面には伝わらない。システム最高出力650ps以上、システム最大トルク850Nm以上のパワーとトルクを伝えるには、325幅のタイヤと、前後45:55の重量配分が必要だったというわけだ。ちなみに車重は1750kg以下と発表されている。

モーターは主にターボラグの解消と変速時間の短縮、エンジンが苦手とする低回転域や過渡領域のアシストに使う。モーターのみで走行するEV走行は設定していない。パフォーマンスに振り切ったハイブリッドシステムなのだ。

【GR関連記事】

新型GR GTの全貌判明! トヨタのスーパーカーが凄い!──GQ新着カーGRのスーパーカーが世界に挑む!新型GR GT、遂に登場! “トヨタ流スーパーカー”は高い快適性も魅力か全貌が明らかになった新型「GR GT」は、快適性の高いスーパーカーだった。実車を見た『GQ JAPAN』ライフスタイルエディター、イナガキがリポートする。新型GR GT登場へ! 気合の入ったパワートレインがスゴい!──GQ新着カー新時代のスーパーカーは新しいハイブリッドを搭載!超スポーティなセンチュリー登場! トヨタの超高級車戦略がオモシロい!──GQ新着カー個人ユーザーへのアピールか\!?今がラストチャンスかもしれない──GRスープラRZ試乗記まもなく生産終了となるTOYOTA GAZOO Racingの「スープラRZ」に、『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキが乗った!もし欲しいのなら今、新車で絶対に買うべし!──GRスープラRZ試乗記まもなく生産終了となるTOYOTA GAZOO Racingの「スープラRZ」に、『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキが乗った!新しいGRカローラ登場!──GQ新着カー供給体制も見直しへ。GRヤリスに、Aero performance package登場!──GQ新着カーカタログモデルとして発売開始へ。モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりとは?──新型GRヤリスRZ“High performance”エアロパフォーマンスパッケージ装着車試乗記進化した「GRヤリス」に新たに設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」を装着したモデルに、『GQ JAPAN』ライフスタイル・エディターのイナガキが乗った!やっと買えるようになりました──新型GRヤリスRZ“High performance”エアロパフォーマンスパッケージ装着車試乗記進化した「GRヤリス」に新たに設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」を装着したモデルに、『GQ JAPAN』ライフスタイル・エディターのイナガキが乗った!イエローをまとった特別なGR86登場──GQ新着カー限定300台!文・世良耕太 編集・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)

文:GQ JAPAN 世良耕太
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

魅惑のハイブリッド──新型メルセデス・ベンツCLA試乗記
魅惑のハイブリッド──新型メルセデス・ベンツCLA試乗記
GQ JAPAN
システム出力は711馬力! ポルシェ新型「911ターボS」の走りは鳥肌が立つほど刺激的!! ハイブリッド化を果たした最新の「ターボ」は速さも快適性もケタ違い
システム出力は711馬力! ポルシェ新型「911ターボS」の走りは鳥肌が立つほど刺激的!! ハイブリッド化を果たした最新の「ターボ」は速さも快適性もケタ違い
VAGUE
トヨタ新型「和製スーパーカー」初公開! 4リッター「V8」搭載で650馬力! 超ロングノーズ&軽量ボディのGR「GT」どんなモデル?
トヨタ新型「和製スーパーカー」初公開! 4リッター「V8」搭載で650馬力! 超ロングノーズ&軽量ボディのGR「GT」どんなモデル?
くるまのニュース
これぞアウディ!──新型アウディA6 アヴァントe-tron パフォーマンス試乗記
これぞアウディ!──新型アウディA6 アヴァントe-tron パフォーマンス試乗記
GQ JAPAN
【トヨタ】世界と戦う国産スーパースポーツ「GR GT」は初の4L V8ツインターボ+ハイブリッド搭載
【トヨタ】世界と戦う国産スーパースポーツ「GR GT」は初の4L V8ツインターボ+ハイブリッド搭載
Auto Prove
新型オペル  アストラ登場!──GQ新着カー
新型オペル アストラ登場!──GQ新着カー
GQ JAPAN
新型GR GT、遂に登場! “トヨタ流スーパーカー”は高い快適性も魅力か
新型GR GT、遂に登場! “トヨタ流スーパーカー”は高い快適性も魅力か
GQ JAPAN
アウディA3スポーツバック アーバン スタイル エディション登場──GQ新着カー
アウディA3スポーツバック アーバン スタイル エディション登場──GQ新着カー
GQ JAPAN
斬新「“4WD”スポーツカー」が凄い! 1.5リッターエンジン搭載で「370馬力以上」発揮! メーカー初「画期的ドア」&“軽量ボディ”採用! 開放感たっぷりのオープンモデルもあるBMW「i8」って?
斬新「“4WD”スポーツカー」が凄い! 1.5リッターエンジン搭載で「370馬力以上」発揮! メーカー初「画期的ドア」&“軽量ボディ”採用! 開放感たっぷりのオープンモデルもあるBMW「i8」って?
くるまのニュース
「リッター約50km」走れる“トヨタ車”に反響殺到!「まさかの2気筒エンジン!」「トヨタ凄すぎる…」の声も! めちゃ低燃費な「“4人乗り”コンパクトカー」! 瑞西公開の「FT-Bh」とは!
「リッター約50km」走れる“トヨタ車”に反響殺到!「まさかの2気筒エンジン!」「トヨタ凄すぎる…」の声も! めちゃ低燃費な「“4人乗り”コンパクトカー」! 瑞西公開の「FT-Bh」とは!
くるまのニュース
トヨタが新型スポーツカー「GR GT」とレーシングカー「GR GT3」を初公開! “4リッターV8ツインターボエンジン”“オールアルミニウム骨格”等の新技術を投入【新車ニュース】
トヨタが新型スポーツカー「GR GT」とレーシングカー「GR GT3」を初公開! “4リッターV8ツインターボエンジン”“オールアルミニウム骨格”等の新技術を投入【新車ニュース】
くるくら
トヨタが次世代スポーツカーの「GR GT」とレーシングカー「GR GT3」を公開
トヨタが次世代スポーツカーの「GR GT」とレーシングカー「GR GT3」を公開
@DIME
知的なステーションワゴン──新型アウディA6 アヴァントe-tron パフォーマンス試乗記
知的なステーションワゴン──新型アウディA6 アヴァントe-tron パフォーマンス試乗記
GQ JAPAN
価値ある398万2000円──新型BYDシーライオン6試乗記
価値ある398万2000円──新型BYDシーライオン6試乗記
GQ JAPAN
ディフェンダーの商用モデル、日本上陸へ!──GQ新着カー
ディフェンダーの商用モデル、日本上陸へ!──GQ新着カー
GQ JAPAN
新しいマツダCX-3登場!──GQ新着カー
新しいマツダCX-3登場!──GQ新着カー
GQ JAPAN
洗練度が光る1.5L HV登場 メルセデス・ベンツCLA ハイブリッド  あえて選ぶ理由は小さい?
洗練度が光る1.5L HV登場 メルセデス・ベンツCLA ハイブリッド  あえて選ぶ理由は小さい?
AUTOCAR JAPAN
新型GR GTの全貌判明! トヨタのスーパーカーが凄い!──GQ新着カー
新型GR GTの全貌判明! トヨタのスーパーカーが凄い!──GQ新着カー
GQ JAPAN

みんなのコメント

2件
  • ********
    老害に忖度したからだろ。
    他にこんな愚かな選択をする理由がない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1650 . 0万円 3258 . 0万円

中古車を検索
マクラーレン GTの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1650 . 0万円 3258 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村