海外製ミニバンの選択肢が増えた今、ユーザーにとって最適なモデルとはいかに? 今尾直樹が考えた! まもなくフルモデルチェンジされるメルセデス・ベンツのミニバン「Vクラス」を予想する。
Sクラスより威圧的
新型トヨタ・アルファード&ヴェルファイア、堂々デビュー!──GQ新着カー
薄暗がりのなか、不気味に輝く、あまりにデカいメルセデス・ベンツ伝統のグリル。なんぢゃ、こりゃ。デカすぎでしょ。
というのが筆者の個人的感想ですけれど、メルセデス・ベンツが自社のメディア向けサイトで、5月16日にアップしたこの画像、ご覧になった方も多いと思う。
ついていた見出しはこんな感じだ。
「新しい中型バンの準備ができました。ファミリーとキャンパーのための手の届くラグジュアリーから、商用のお客さまのためのステートメント(表現)まで」
ここでいう“中型バン”とは、乗用車仕様はVクラス、商用車仕様はVitoという名称で販売されているモデルのことである。その新型を今年の夏に発表する、という予告なのだ。現行Vクラス/Vitoは2014年のデビューで、丸っと9年。全面改良にはいい頃合いである。
同記事によると、新型では最初から内燃機関とモーター駆動を設定し、音声でクルマとやり取りできるMBUXの最新世代を装備するなど、インフォテインメント・システムの充実を図っているという。スリー・ポインテッド・スターならではの高級感を反映させることに重点を置いていて、とはいえ小見出しにあるように、その高級感は家族にもキャンパーにも手が届く高級(Accessible Luxury)だとされる。
そのラグジュアリーを表現しているのが、このフロントの画像だとすると、メルセデス・ベンツはさて、メルセデス・ベンツであることを伝統のグリルの大きさによってストレートに訴えようとしている、のかもしれない。
いま一度、この画像を見てみよう。剣道の防具の面にも似たグリルがフロントの面積の4分の3、75%ぐらいを占めている。メルセデスの旗艦Sクラスのフロントグリルよりデカそうで、水平方向のバーはSクラスの3本に対して5本もある。
当然、数が多いほど手間がかかり、手間がかかっていると人間は高級に感じる。ラジエターグリルを大きくするなんて、あまりにシンプルな手法で意表を突いている。権威主義というか復古主義というか、あるいはそのパロディというか……。
ひと目でわかるアイコンそう思ういっぽう、トヨタの「アルファード」、「ヴェルファイア」、あるいはレクサスの新型「LM」を上まわるインパクトを感じたのも確かである。ちょっと前に衝撃を与えたアウディの「シングルフレームグリル」といい、レクサスの「スピンドルグリル」といい、やっぱりグリルはデカいほうがインパクトがある。後発のアウディもレクサスも、メルセデス、BMWのようなアイコンを手に入れたくて、あのようなデザインの冒険に挑んだ。
やられたら、やり返す。100倍返しだ。というのがビジネスの鉄則だとすると、今度はBMW、メルセデスの番である。目には目を。ドデカグリルにはドデカグリルを。BMWはキドニーグリルの巨大化をすでに始めている。この巨大化競争にメルセデスも参加するとなると、「オラオラ・デザイン」とも呼ばれている威圧的なフロントマスクが世界のトレンドになるやかもしれない。
ヤですねぇ……。という個人の感想はともかくとして、メルセデス・ベンツが本来、権威を必要とするはずの大型セダンではなくて、むしろ権威とは縁の遠そうな、家族向け、キャンプ愛好者向けの仕様もある、日本ではミニバン、彼らの用語だとMPV(マルチ・パーパス・ヴィークル)のVクラス/Vitoから、このようなドデカグリルを採用してきているところはいったいなぜなのか?
と、またもや個人の感想になるわけですけれど、その答は、ファミリー用やキャンプ、ビジネス用の多目的ヴィークルだからこそ、スマホの小さな画面のなかでも、ひと目でわかるアイコンが必要だから、なのではあるまいか。
『ヒロシのぼっちキャンプ』(TBS)が示しているように、都会の喧騒を離れ、ひとり静かに焚き火の炎を見て癒されたい。そう願うひとでさえ、SNSで発信し、癒されている自分が森のなかにぼっちでいることをだれかに伝えたい。そう思うのが現代人であり、それによって「いいね!」がいっぱい集まって注目されちゃったりするのが現代社会というものである。
中古でもいいではないか!では、問題です。メルセデス・ベンツでキャンプに行ったとして、そのメルセデスのスリー・ポインテッド・スター輝くグリルは大きいほうがいいですか、それとも小さいほうがいいですか?
そりゃあ映えたほうがいい。なんせスマホで見るわけだし、それが新型Vクラスだったりしたら、ひと目で新型Vクラスだとわかったほうがいい。
というようなことで、メルセデスは新型バンのグリルをド~ンとでっかくした。というのが筆者の想像です。
メルセデス・ベンツとは、豊かさ、リッチさの象徴であり、メルセデス・ベンツに乗るということは成功のステートメント(表現)である。
早い話、いま日本で売られているVクラスのいちばん安価なモデルは、2.0リッター直4ディーゼル・ターボを搭載する3列7人乗りのV220dアバンギャルドで926万円。受注生産でV220アバンギャルド・エクストラロング・ブラックスイートというのもあって、こちらは1330万円である。高かろう、よかろう。その代表がメルセデスで、だからこそひとはメルセデスに乗りたいと思うのだ。
最後に。メルセデスの新型ミニバンを買いたいけれど、懐具合が少々……という方もいらっしゃると思う。そういうひとには中古のVクラスをオススメしたい。中古車サイトをのぞくと100万円以下のVクラスがいっぱい載っている。
オススメする理由は、メルセデス・ベンツはちょっと古いほうがいい。干物みたいに味が出る。と、徳大寺有恒さんがいっておられたからだ。この説は、おそらく現代でも通用する。
それと、メルセデス・ベンツというのは豊かさと成功のシンボルであると同時に、勤勉実直のシンボルでもある。
だから、安くてもいいから、中古のメルセデスのミニバンでマジメに働き、マジメに遊んでいると、いずれメルセデスにふさわしいひとになれる、と、筆者は思う。
もちろん、人生なにが起きるかわからないので、100%の保証はできません。
でも、マジメがいちばんであることは100%である。
文・今尾直樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
てかステータスから言ってもベンツとトヨタ比べるのはおかしいよ格が違う
日本のトヨタ信者だけたけだからトヨタサイコーとか言ってるのは
アルファードは比較対象にならないでしょうね