販売好調が伝わるレヴォーグの実に半分近くを占めるのが、トップグレードの「STIスポーツ」である。「走り」にこだわった新しいブランドが意図するものは果たして何か。そのエッセンスを開発のキーマンであり、スバルテクニカインターナショナルの開発副本部長 高津益夫氏に訊いた。聞き手はMotor Magazine編集長 千葉知充。(Motor Magazine2021年8月号より)
STIコンプリートカーとSTIスポーツの違いは?
千葉 まずはSTIスポーツ誕生の経緯を教えていただけますか。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
高津 スバルテクニカインターナショナル株式会社(以下、STI)は、モータースポーツを通じて、スバルを世界一のブランドに成長させることを目的として1988年に設立されました。そこからモータースポーツに直結した商品やコンプリートカーの開発に携わってきました。コンプリートカーというのは、量産ラインからベース車を抜き出して作る基本的にハンドメイド的なクルマなので、量産ができません。結果的に価格も高価になってしまいますし、生産台数も限られます。もっと一般のお客様にSTIの商品をお届けしたい。それによってスバルのブランド価値も上げていきたいという思いが、STIスポーツの誕生につながっていきました。
千葉 STIコンプリートカーと、STIスポーツの違いはどこにあるのでしょう。
高津 コンプリートカーはあくまでSTIが企画して開発するもので、あらゆるところに手を加えています。一方、STIスポーツはスバルが企画を提案して、STIが走りの味付けを担当する量産カタログモデルであり、イメージを牽引するという位置づけです。スバルの生産ラインで組み立てられることが前提のクルマなので、主にサスペンションを中心に手を加えています。
千葉 スバル側とのすり合わせが大変なのではありませんか。
高津 それはありません。そもそも両社がめざしている方向性は同じですから。STIにとっていいクルマは、スバルにとってもいいクルマなのです。
公道でもレースでも求められる性能は同じ
千葉 STIスポーツの開発指針はどのようなものなのでしょう。
高津 これはSTIスポーツでもコンプリートカーでも基本的に違いはないのですが、ひと口で言えば「運転が上手くなるクルマ」にすることですね。実は、ドライバーが違和感や疲労感を覚えるのは、車体の応答遅れが原因なのです。STIでは、そこを可能な限り小さくすることを目標に突きつめてセッティングしています。
千葉 応答遅れとは?
高津 たとえば、一見真っ直ぐな道でも、路面が傾いていたりワダチや凹凸があったりと、タイヤの接地荷重も刻一刻変化しています。さらに、横風や横を走るクルマの影響など、さまざまな外乱の要素もあります。ドライバーはそれに抗いながら無意識にハンドルを調整しながら走っています。そこで応答遅れがあるクルマだと、反応が鈍いからドライバーはハンドルを切りすぎてしまう。クルマが反応した時点ではハンドルは切り過ぎているから慌てて戻す。この戻しの反応も遅れて、今度はハンドルを戻しすぎる。その繰り返しで、実際には微妙に蛇行しているのです。これではドライバーにはストレスがたまりますし、同乗者も疲れます。
千葉 その遅れをとにかく小さくして「運転が上手くなるクルマ」に仕上げるわけですね。
高津 レースでもまったく同じで、我々が参戦してきたニュルブルクリンク24時間耐久はその格好の実験場でもあるわけです。ニュルの北コースは道幅も狭いし路面のコンディションも良くないし、連続するブラインドコーナーの先は(クラッシュなど)何が待ち構えているかわかりません。究極の外乱状態です。そこで思いどおりの動きができるクルマというのは、プロレーサーにとっても非常に大事なことです。
動的な質感にこだわったレヴォーグSTIスポーツ
千葉 レヴォーグSTIスポーツの販売が好調ですが、開発過程でエピソードがあれば聞かせて下さい。
高津 レヴォーグは、スバルにとってもSTIにとっても、初めて手掛ける電子制御サスペンションでした。ですから、STIのメンバーとスバルの開発メンバーがまさしく一体となって開発に取り組みました。レヴォーグのイメージをけん引するクルマとして、とにかく動的な質感の向上にこだわりました。ハンドリングだけではなく、振動、騒音など、すべてにおいてワンランク上を目指したのです。幸いレヴォーグに採用されているSGP(スバルグローバルプラットフォーム)は、従来のプラットフォームとは次元が違うレベルでしたので、ごく初期の試作段階から予想を超えたハイレベルな仕上がりで驚きましたね。
千葉 では最後に、これからのSTI、そしてSTIスポーツの抱負を聞かせてください
高津 我々の技術=「運転が上手くなるクルマ」はお客様に安心と愉しさを提供できる技術です。もっと幅広くいろいろなクルマに展開したいですね。一方で、コンプリートカーはもっともっとパフォーマンスを上げて高性能なことでもスバルのブランドを牽引していきたいと考えています。従来のSシリーズを超えた次元に行けるように頑張りたいと思います。
千葉 それはとても楽しみです。今後もSTIの活動から目を離せませんね。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:永元秀和)
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みんなのコメント
またサスの動きも、カーブで適度に車体が傾く方がタイヤの限界を肌で感じる上で重要。全くサスが動かない様だと、タイヤのμ値の限界が突然やってくる様に感じる。
従って、意識して安全領域内に留めておけるセッティングが「上手くなる」と表現されたものと解した。
そうすれば絶対にぶつけたりこすったり出来ないから一つ一つの動作を確実に集中して出来るようになる