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そんなに差がつくはずがない!? フィットVSヤリスの比較ガイド

掲載 更新 48
そんなに差がつくはずがない!? フィットVSヤリスの比較ガイド

 コンパクトカー市場ではヤリスやフィット、ノートが販売合戦を繰り広げているが、そんな中発売後1年で一部改良を行ったホンダフィット。

 ライバルとの販売競争では、フィットは少し苦戦していることもあり、商品力の強化が行われたわけだ。そこで、ライバルと比較したフィットの実力を渡辺陽一郎氏にチェックしてもらった!

価格差約40万円!? 「ノート」と「ノートオーラ」は何がどれだけ違うのか?

文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部

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■フィットの居住性や走りは優秀なのに、なぜ販売面でヤリスに勝てないの?

発売後1年で一部改良を行ったホンダフィット。商品力があがったフィットはヤリスの牙城を崩せるか!?

 最近は安全装備や環境性能が向上して、消費税率も高まったから、クルマの価格も値上げされている。同じ車種同士で比べて、クルマの価格は10年前の1.2~1.3倍に上昇した。

 その一方で平均所得は増えていない。約20年前に比べると下がっているほどだから、小さな車種に乗り替えるユーザーが増えた。今は国内で新車として売られるクルマの内、約38%が軽自動車で、約25%は全長が4m前後のコンパクトカーだ。国内販売全体の60%以上を小さなクルマが占める。

 この中でも特に注目されるのが、コンパクトカーの主力となるヤリス、フィット、ノートだ。売れ筋のカテゴリーで、3車のすべてが2020年に発売されたから設計も新しい。いずれも衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備を充実させ、ハイブリッドも用意する(ノートはハイブリッドのe-POWERのみ)。

 そこで2021年1~6月の1か月平均登録台数を見ると、ヤリスは約9300台(SUVのヤリスクロスとスポーツモデルのGRヤリスを除く)、ノートは約7800台、フィットは約5000台だ。

 ノートはe-POWERだけで7000台を超えるのに、フィットはノーマルエンジンも用意しながら5000台に留まる。ヤリスに比べて大幅に少ない。

 このような事情もあり、フィットは2021年6月に改良を行って通信機能などを進化させ、2種類の特別仕様車も追加した。ヤリスとの比較を交えてながら、フィットが売れていない理由を考えたい。

■ヤリス&フィット、ライバル車同士を徹底的に比較する

トヨタ ヤリス。SUVのヤリスクロスとスポーツモデルのGRヤリスを除いても、その販売台数は9000台を超えるキング・オブ・コンパクトカーだ

 まずは商品力を比べる。内装の質は見る人によって評価が分かれるが、フィットの2本スポークステアリングホイールなどは、好き嫌いがハッキリするだろう。ヤリスの内装も質感が高いわけではないが、万人向けのデザインだ。

 居住性はフィットが優れている。身長170cmの大人4名がヤリスに乗車すると、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ1つ少々だ。4名乗車は可能だが、窮屈に感じる。

 その点でフィットでは、同じ測り方で後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ2つ半だ。ミドルサイズセダン並みの余裕があり、4名で乗車した時の快適性はフィットが明らかに上まわる。

 荷室もフィットが広い。燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室の床が低く、積載容量も十分に確保した。ヤリスはリヤゲートを寝かせた影響もあり、背の高い荷物を積みにくい。

 視界もフィットが優れている。現行型ではフロントピラー(柱)の形状を工夫して、インパネ上面も平らに仕上げたから、前方がヤリスよりも見やすい。ボディ側面の形状も水平基調だから、斜め後方の視界もフィットが上まわる。

 動力性能は、ハイブリッドについては、フィットのe:HEVが勝っている。直列4気筒1.5Lエンジンは主に発電機を作動させ、駆動はモーターが担当するから、フィットはヤリスよりも加速が滑らかでノイズも小さい。

 ヤリスハイブリッドはボディが軽く、走りに軽快感は伴うが、登坂路では直列3気筒エンジン特有のノイズが耳障りに感じる。

 ノーマルエンジンは、フィットは直列4気筒1.3Lのみで、ヤリスは直列3気筒の1Lと1.5Lを用意する。フィットの動力性能は、ヤリスでいえば1Lと1.5Lの中間だ。フィットはボディが重いので、1.3Lではヤリスの1.5Lに比べて動力性能が足りない。

 その半面、4気筒だから、登坂路でアクセルペダルを踏み増した時のノイズはヤリスの1.5Lに比べて気にならない。回転感覚も上質だ。ヤリスの1Lエンジンは、動力性能が低く、登坂路ではノイズが一層拡大する。

■全体的にフィットの優れた面が目立つ

フィットの中でもフィットクロスターはタイヤやサスの設定が柔軟でコンパクトカーの中では快適な部類に入る

 走行安定性と操舵感は互角だ。フィットは走行安定性を重視して、後輪の接地性を優先させた。下り坂のカーブで危険を避けるような時でも挙動を乱しにくいが、峠道などを走ると曲がりにくく感じることもある。

 ヤリスは逆で、今のクルマでは珍しく、後輪の接地性は追求していない。その代わり軽快に良く曲がり、峠道では車両の進行方向を内側へ向けやすい。フィットは安定性、ヤリスは曲がりやすさを重視した。

 乗り心地はフィットが有利だ。全般的に硬いが、突き上げ感は抑えた。特にクロスターは16インチタイヤの扁平率が60%で、サスペンションも比較的柔軟な設定だから、コンパクトカーでは乗り心地が快適な部類に入る。

 ヤリスの乗り心地はフィットよりも硬く、特に幅広いグレードに装着される14インチタイヤ装着車には注意したい。タイヤが低燃費指向で、転がり抵抗を抑えるために、指定空気圧も前輪が250kPa、後輪は240kPaと高い。段差を乗り越えた時など、突き上げ感が気になる。

 WLTCモード燃費(2WD)は、フィットのe:HEVが27.2~29.4km/L、ヤリスハイブリッドは35.4~36km/Lになる。後者の数値は日本で販売される乗用車では最上級だ。ノーマルエンジンの燃費も、ヤリスの1.5Lは優れている(1Lは設計が古く燃費は1.5Lほど良くない)。燃費はフィットよりもヤリスが優秀だ。

 安全装備もヤリスが充実する。後方の並走車両を検知して知らせる機能など、ヤリスはオプションで装着できるが、フィットには設定がない。価格は互角の設定だ。

 以上のように商品力を比べると、視界と取りまわし性、後席の居住性、荷室の広さと使い勝手、走行安定性、乗り心地、ハイブリッドの動力性能では、フィットが勝っている。

 逆にヤリスが優れているのは、走りの軽快感、峠道などにおけるスポーティドライブの楽しさ、燃費性能、安全装備の充実度だ。それでもフィットの優れた面が多い。

■優良車であるフィットがなぜ販売面で負けるのか

ヤリスはグレード構成やトヨタ内での売り分けなど、販売力の面でフィットに優っている

 フィットは優れた商品なのに、なぜ販売面ではヤリスに負けるのか。まず挙げられるのはグレード構成の違いだ。前述の通りヤリスには1Lエンジン搭載車もある。1.0X・Bパッケージは、衝突被害軽減ブレーキを取り去ったから推奨できないが、価格自体は139万5000円と安い。

 フィットで最も安価な1.3ベーシックは155万7600円だから、安さを重視する法人ユーザーなどはヤリスを選びやすい。販売店によると「買い物など近隣の移動だけに使う場合、一般のお客様も、価格が安いことから1Lエンジンで装備を充実させた1.0Gを選ぶことがある」という。

 ヤリスでは2種類のノーマルエンジンを選べるため、販売比率も60%と高い。ハイブリッドは40%だ。逆にフィットでは、e:HEVが60%以上を占める。

 これを2021年1~6月の1か月平均登録台数に当てはめると、ハイブリッドの台数はヤリスが約3700台で、フィットは約3000台だ。フィットハイブリッドの台数はヤリスに近いが、ノーマルエンジンで差を付けられた。

 販売店舗数の違いも大きい。今のトヨタ車は全店で売るから、ヤリスの販売網も約4600店舗に達する。フィットも全店で扱うが、ホンダは約2150店舗だ。販売店舗数に2倍以上の差があると、売れ行きにも多大な影響を与える。

 同じメーカー内の競争も見逃せない。トヨタにはコンパクトカーのルーミーもあり、この登録台数は、2021年1~6月の1か月平均が約1万3000台だ。ヤリスの約9300台を大幅に上まわる。それでも商品特性の違いにより、売り分けを可能にした。

 その点でホンダのフィットは、ユーザーを少なからずN-BOXに奪われている。N-BOXの2021年1~6月における1か月平均届け出台数は2万2000台と超絶的に多く、フィットやフリードの顧客を奪っているからだ。

 N-BOXの売れ行きは、2021年1~6月に国内で新車として売られたホンダ車全体の35%を占める。N-BOXの供給が何らかのトラブルで停止すると、ホンダの国内販売は35%を失って大きな打撃を受けてしまう。

 そこで決算期に実施される低金利キャンペーンやディーラーオプションのサービスなど、N-BOXではすべての恩典を対象外にしているが、それでも絶好調の販売に歯止めが掛からない。ホンダの商品企画担当者は「N-BOXはモンスターだ」と述べる。N-BOXの売れ行きは、もはやメーカーにも止められないからだ。

 このほかフィットの売れ行きについて販売店に尋ねると、以下のように返答した。「フィットでは、半導体不足の影響がほかの車種以上に深刻だ。ETC車載器などのディーラーオプションが滞り、納車できないこともある。最近は収まりつつあるが、今でも遅延は残り、納期の長い仕様は3か月近くに達する」。

■売れていなくても優れた車は多い

「売れているから良いクルマ」というのは真理だが、「売れていないのは良くないクルマ」というのは必ずしも成り立たない。それを見極めるためにも試乗は大切だ

 以上のようにフィットの商品力は高いが、N-BOXとの競争も含め、主に販売面での悪条件が重なってヤリスに差を付けられいる。

 好調に売れる車種は、多くのユーザーが購入しているために優れた商品と判断できるが、売れていないからダメとはいえない。販売が低調でも、機能の優れたクルマは多い。そこを見極めるためにも、ライバル車を交えた試乗が大切だ。

 ヤリスを買いたいユーザーが、念のためにフィットに試乗したら、それが欲しいクルマに変わることもある。クルマは高額商品でもあるから、人気度は参考に留めて、ご自分で確かめることが不可欠だ。

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みんなのコメント

48件
  • 自動車雑誌のライター陣はあえて突っ込まないけど、
    デザインの悪さこそがフィットの最大の難点でしょう。
    なぜ、あんな、どこかにぶつけたようなフロントマスクのデザインになったのか?
    初代や2代目がカッコいいスタイルだっただけに、非常に惜しい部分ですね。

    あと、マーチやミラージュも含めて
    もう少しコンパクトカーのデザインを真剣に考えてほしいと思う。


  • 単純にデザインが受け入れられてないんじゃないの?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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