A110はスポーツカーとして非凡な存在
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
新しく追加された高性能版のアルピーヌA110 Sで、至らない部分を探すのは難しくない。A110のバージョン2というわけではないからだ。
アルピーヌでチーフエンジニアを務めるジャン・パスカル・ドース。以前のデビッド・トーヒッグから新たに就任した彼は、ケーターハムとのジョイントベンチャーだった頃からA110プロジェクトに関わってきた古株。ルノーのモータースポーツ部門に戻った時に、彼が持ち帰って来たものが、返り咲いた。
「(A110の)プロジェクトの当初からSは計画していました。アルピーヌの顧客の希望を理解していましたから。より高いパワーとスピード、グリップ力に正確性。サーキットでの安定性も。シンプルです。環境規制が厳しくなることがなければ、もっと早期に導入できたかもしれません」
「批判に対しての答えではありませんし、弱点に対しての修正版でもありません。(A110に)それほど多くの否定的な意見があるとも考えていません。市場やメディアの反応を見れば理解できます」 彼の意見に沿うかたちで、A110の販売台数に対してA110 Sの販売台数比は、3:1になると見込まれている。
販売台数が結果として現れれば、このA110がどれほど特別で非凡な存在なのかを、立証することになるだろう。このカテゴリーの場合、ドライバーの多くは最もパワフルで走行性能の高いグレードを選択する傾向が強いのだから。
ブーストアップで40ps増しの292psを獲得
アルピーヌのオーナーは、このクルマが備える「レス・イズ・モア(少ない方が素晴らしい)」という哲学に共感してドライブしていることの裏付けにもなる。反面、一般道とサーキットでA110Sを試乗した筆者としては、多くのオーナーが内心感じていることに同意できるとも感じた。
A110 Sは明らかに通常のA110より速く、正確な操縦性を叶えている。サーキットでの周回速度も高い。走行性能を拡張したことで、従来のA110がカバーできていなかった領域まで補うことに成功している。でも、わたしが「S」を選ぶかどうかは別だ。
Sを要約すると、ターボブーストを上げ、車重を軽くし、サスペンション構造を鍛え直したモデル。車重は通常オプションとなる軽量な18インチの鍛造ホイールと、カーボンファイバー製のルーフパネルによって7kgダイエット。
ただし、どちらのパーツも標準モデルでも選択ができるから、最も軽量なA110はエントリーグレードのピュアということにはなる。
1.8Lの4気筒ターボエンジンは、40ps増しの292psを獲得。最大トルクは、トランスミッションの許容値の都合で32.5kg-mと変わりないが、発生回転数は広げられている。加速性能は1kmダッシュで0.5秒短縮しているとはいえ、0-100km/h加速でのカットは0.1秒だけ。最高速度も10km/h増えた程度。
改良を受けたサスペンションは、車高を4mmダウン。スプリングレードは50%のプラスで、アンチロールバーの剛性は倍になっている。ダンパーの減衰力も見直され、タイヤ幅は10mm広げられている。ブレーキも前後に直径320mmのディスクを採用し、力強い制動力も得ている。
高性能版でも外観の主張は少ない
その結果、A110ピュアに比べて操縦性の良さは倍に引き上げられたと、アルピーヌは主張する。与えられたものは、自ら制限してきた内容を考えれば、さほど大きな変化とも呼べないだろう。
A110 Sにはそびえ立つリアウイングはない。レーシングストライプも、自己主張の強いステッカーもないし、「S」のエンブレムすらない。値段の高いグレードを買ったことを見せびらかすことはできないが、走りで違いを証明することはできる。
インテリアには人工スウェードの「ディナミカ」が張り巡らされ、オレンジ色のステッチが彩りを加えている。スポーツシートの背もたれの角度調整は、従来どおりできないが、運転姿勢はとても良い。モニター式のデジタルメーターも利用でき、操作系周りにも変更はない。
トランスミッション・トンネルの、赤く光る大きなボタンを押してエンジンスタート。Dボタンを押して発進し、オートかマニュアルか、変速モードを選ぶ。ステアリングの赤いボタンを押すと、スポーツモードに切り替わる。ステアリング・コラムに取り付けられたシフトパドルで変速を繰り返す。
発進時は明確に力強さが増している。標準のA110よりもアクセルレスポンスに優れ、回転の吹け上がりも鋭い。ルノー・メガーヌRSのセッティングよりブースト圧は低めだから、レスポンスだけでなくパワーの発生も直線的で自然。
5万ポンド(695万円)以上するスポーツカー基準で考えれば、盛り上がりに欠ける実用エンジン的ではある。だが、喜びを阻害するほど淡々としたものでもない。
シャープさを増したぶん、しなやかさは減った
低速域の乗り心地は、基本的に硬さを増している。市街地のツギハギの多い路面では、ドライバーはしっかり揺さぶられるが、速度を上げれば滑らかさが戻ってくる。それでも、スポーツカーの水準で考えれば、乗り心地は硬い部類には入らないはず。
反面、標準のA110が備えるしなやかな足さばきによって、英国郊外の道で味わえる流暢さが、Sには備わっていない。見返りとして、タイトな姿勢制御にシャープで直感的な操縦性、コーナリング時の安定性やブレーキング力を獲得している。その多くは、サーキットで高く評価できるものだ。
一般道ではコーナーの切り込み始めがシャープになり、ステアリングフィールもかっしりした。そのぶん、軽快なフィーリングは薄められている。サスペンションも硬くなっているから、底突きすることはない。いずれも、動的性能は引き上げられたと評価するべき内容だ。
サーキットを走れば、標準のA110以上に強い負荷がかかっても、フラットさを保つ。あえて意図的に操作しない限り、オーバーステアにも陥らない。どのコーナーでも従来以上のスピードを保って走れる。
だが、アルピーヌA110 Sが楽しくなったと感じるかどうかは、サーキットをどのように走らせたいかに依存するだろう。間違いなく走行性能は向上している。ニュルブルクリンクも、神経質になって走らせる必要はなくなったはず。
ラップタイムを削りたいなら「S」
A110 Sの鍛え上げられた足まわりと大きなタイヤのグリップ力で、標準のA110以上にサーキットを高速で周回することは可能になった。そのかわり、遊びの自由度も、引き締められてしまった。
ドライバーを試すような、派手なオーバーステア状態に持ち込むことも難しい。丁度いい中速コーナーでの姿勢制御は、それほど簡単なものではなくなっている。
サーキットのラップタイムを0.1秒でも削りたいと考えるドライバーなら、A110 Sを選ぶべきだろう。だが、アルピーヌのドライバーの多くが、それを望んでいるかは疑問だ。
主に一般道を走らせ、時々サーキットで憂さ晴らしをするような筆者なら、17インチホールを履いたA110ピュアを選ぶだろう。オプションは慎重にいくつか選びたいところだけれど。
シリアスなドライビング体験が、高く評価されている時代なのだろうか。わたしとしては、現実世界でより楽しめた方が良いと思うのだけれど。
アルピーヌA110 Sのスペック
価格:5万6810ポンド(789万円)
全長:4205mm
全幅:1800mm
全高:1250mm
最高速度:259km/h
0-100km/h加速:4.4秒
燃費:-
CO2排出量:164g/km
乾燥重量:1107kg
パワートレイン:直列4気筒1798ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:292ps/6400rpm
最大トルク:32.5kg-m/2000-6400rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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