現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ブーストアップで292ps アルピーヌA110 S シリアスが良いとも限らない

ここから本文です

ブーストアップで292ps アルピーヌA110 S シリアスが良いとも限らない

掲載 更新
ブーストアップで292ps アルピーヌA110 S シリアスが良いとも限らない

A110はスポーツカーとして非凡な存在

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)

【画像】アルピーヌA110 全78枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


新しく追加された高性能版のアルピーヌA110 Sで、至らない部分を探すのは難しくない。A110のバージョン2というわけではないからだ。

アルピーヌでチーフエンジニアを務めるジャン・パスカル・ドース。以前のデビッド・トーヒッグから新たに就任した彼は、ケーターハムとのジョイントベンチャーだった頃からA110プロジェクトに関わってきた古株。ルノーのモータースポーツ部門に戻った時に、彼が持ち帰って来たものが、返り咲いた。

「(A110の)プロジェクトの当初からSは計画していました。アルピーヌの顧客の希望を理解していましたから。より高いパワーとスピード、グリップ力に正確性。サーキットでの安定性も。シンプルです。環境規制が厳しくなることがなければ、もっと早期に導入できたかもしれません」

「批判に対しての答えではありませんし、弱点に対しての修正版でもありません。(A110に)それほど多くの否定的な意見があるとも考えていません。市場やメディアの反応を見れば理解できます」 彼の意見に沿うかたちで、A110の販売台数に対してA110 Sの販売台数比は、3:1になると見込まれている。

販売台数が結果として現れれば、このA110がどれほど特別で非凡な存在なのかを、立証することになるだろう。このカテゴリーの場合、ドライバーの多くは最もパワフルで走行性能の高いグレードを選択する傾向が強いのだから。

ブーストアップで40ps増しの292psを獲得

アルピーヌのオーナーは、このクルマが備える「レス・イズ・モア(少ない方が素晴らしい)」という哲学に共感してドライブしていることの裏付けにもなる。反面、一般道とサーキットでA110Sを試乗した筆者としては、多くのオーナーが内心感じていることに同意できるとも感じた。

A110 Sは明らかに通常のA110より速く、正確な操縦性を叶えている。サーキットでの周回速度も高い。走行性能を拡張したことで、従来のA110がカバーできていなかった領域まで補うことに成功している。でも、わたしが「S」を選ぶかどうかは別だ。

Sを要約すると、ターボブーストを上げ、車重を軽くし、サスペンション構造を鍛え直したモデル。車重は通常オプションとなる軽量な18インチの鍛造ホイールと、カーボンファイバー製のルーフパネルによって7kgダイエット。

ただし、どちらのパーツも標準モデルでも選択ができるから、最も軽量なA110はエントリーグレードのピュアということにはなる。

1.8Lの4気筒ターボエンジンは、40ps増しの292psを獲得。最大トルクは、トランスミッションの許容値の都合で32.5kg-mと変わりないが、発生回転数は広げられている。加速性能は1kmダッシュで0.5秒短縮しているとはいえ、0-100km/h加速でのカットは0.1秒だけ。最高速度も10km/h増えた程度。

改良を受けたサスペンションは、車高を4mmダウン。スプリングレードは50%のプラスで、アンチロールバーの剛性は倍になっている。ダンパーの減衰力も見直され、タイヤ幅は10mm広げられている。ブレーキも前後に直径320mmのディスクを採用し、力強い制動力も得ている。

高性能版でも外観の主張は少ない

その結果、A110ピュアに比べて操縦性の良さは倍に引き上げられたと、アルピーヌは主張する。与えられたものは、自ら制限してきた内容を考えれば、さほど大きな変化とも呼べないだろう。

A110 Sにはそびえ立つリアウイングはない。レーシングストライプも、自己主張の強いステッカーもないし、「S」のエンブレムすらない。値段の高いグレードを買ったことを見せびらかすことはできないが、走りで違いを証明することはできる。

インテリアには人工スウェードの「ディナミカ」が張り巡らされ、オレンジ色のステッチが彩りを加えている。スポーツシートの背もたれの角度調整は、従来どおりできないが、運転姿勢はとても良い。モニター式のデジタルメーターも利用でき、操作系周りにも変更はない。

トランスミッション・トンネルの、赤く光る大きなボタンを押してエンジンスタート。Dボタンを押して発進し、オートかマニュアルか、変速モードを選ぶ。ステアリングの赤いボタンを押すと、スポーツモードに切り替わる。ステアリング・コラムに取り付けられたシフトパドルで変速を繰り返す。

発進時は明確に力強さが増している。標準のA110よりもアクセルレスポンスに優れ、回転の吹け上がりも鋭い。ルノー・メガーヌRSのセッティングよりブースト圧は低めだから、レスポンスだけでなくパワーの発生も直線的で自然。

5万ポンド(695万円)以上するスポーツカー基準で考えれば、盛り上がりに欠ける実用エンジン的ではある。だが、喜びを阻害するほど淡々としたものでもない。

シャープさを増したぶん、しなやかさは減った

低速域の乗り心地は、基本的に硬さを増している。市街地のツギハギの多い路面では、ドライバーはしっかり揺さぶられるが、速度を上げれば滑らかさが戻ってくる。それでも、スポーツカーの水準で考えれば、乗り心地は硬い部類には入らないはず。

反面、標準のA110が備えるしなやかな足さばきによって、英国郊外の道で味わえる流暢さが、Sには備わっていない。見返りとして、タイトな姿勢制御にシャープで直感的な操縦性、コーナリング時の安定性やブレーキング力を獲得している。その多くは、サーキットで高く評価できるものだ。

一般道ではコーナーの切り込み始めがシャープになり、ステアリングフィールもかっしりした。そのぶん、軽快なフィーリングは薄められている。サスペンションも硬くなっているから、底突きすることはない。いずれも、動的性能は引き上げられたと評価するべき内容だ。

サーキットを走れば、標準のA110以上に強い負荷がかかっても、フラットさを保つ。あえて意図的に操作しない限り、オーバーステアにも陥らない。どのコーナーでも従来以上のスピードを保って走れる。

だが、アルピーヌA110 Sが楽しくなったと感じるかどうかは、サーキットをどのように走らせたいかに依存するだろう。間違いなく走行性能は向上している。ニュルブルクリンクも、神経質になって走らせる必要はなくなったはず。

ラップタイムを削りたいなら「S」

A110 Sの鍛え上げられた足まわりと大きなタイヤのグリップ力で、標準のA110以上にサーキットを高速で周回することは可能になった。そのかわり、遊びの自由度も、引き締められてしまった。

ドライバーを試すような、派手なオーバーステア状態に持ち込むことも難しい。丁度いい中速コーナーでの姿勢制御は、それほど簡単なものではなくなっている。

サーキットのラップタイムを0.1秒でも削りたいと考えるドライバーなら、A110 Sを選ぶべきだろう。だが、アルピーヌのドライバーの多くが、それを望んでいるかは疑問だ。

主に一般道を走らせ、時々サーキットで憂さ晴らしをするような筆者なら、17インチホールを履いたA110ピュアを選ぶだろう。オプションは慎重にいくつか選びたいところだけれど。

シリアスなドライビング体験が、高く評価されている時代なのだろうか。わたしとしては、現実世界でより楽しめた方が良いと思うのだけれど。

アルピーヌA110 Sのスペック

価格:5万6810ポンド(789万円)
全長:4205mm
全幅:1800mm
全高:1250mm
最高速度:259km/h
0-100km/h加速:4.4秒
燃費:-
CO2排出量:164g/km
乾燥重量:1107kg
パワートレイン:直列4気筒1798ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:292ps/6400rpm
最大トルク:32.5kg-m/2000-6400rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

こんな記事も読まれています

悲願の「全固体電池」が実現間近! ホンダが2020年代後半の量産開始を目標にしたパイロットラインを初公開
悲願の「全固体電池」が実現間近! ホンダが2020年代後半の量産開始を目標にしたパイロットラインを初公開
THE EV TIMES
ホンダ『N-BOX JOY』の走りを変える! ブリッツの「スロコン」「スマスロ」が登場
ホンダ『N-BOX JOY』の走りを変える! ブリッツの「スロコン」「スマスロ」が登場
レスポンス
「えっ…ホント!?」マイ自転車に取り付ければ“電動アシスト化”! フル充電で約50kg走行する「P.Wheel」って何?
「えっ…ホント!?」マイ自転車に取り付ければ“電動アシスト化”! フル充電で約50kg走行する「P.Wheel」って何?
VAGUE
究極の新型「爆速ラグジュアリーSUV」実車公開! 史上最もパワフルな「新型ディフェンダーオクタ」が置かれたイベントとは
究極の新型「爆速ラグジュアリーSUV」実車公開! 史上最もパワフルな「新型ディフェンダーオクタ」が置かれたイベントとは
くるまのニュース
茨城県唯一の本格的石垣城砦「笠間城」に昂る!
茨城県唯一の本格的石垣城砦「笠間城」に昂る!
バイクのニュース
全長3.4m切り! ダイハツ「車中泊“特化型”軽バン」がスゴい! 超デカい2段ベッド×ちょうどいい感じの「シンプル仕様」! カスタムセレクト「コンパクトAS」どんなモデル?
全長3.4m切り! ダイハツ「車中泊“特化型”軽バン」がスゴい! 超デカい2段ベッド×ちょうどいい感じの「シンプル仕様」! カスタムセレクト「コンパクトAS」どんなモデル?
くるまのニュース
【ハーレー】カタルーニャサーキットでレース仕様ロードグライドのテスト走行を実施
【ハーレー】カタルーニャサーキットでレース仕様ロードグライドのテスト走行を実施
バイクブロス
えぇぇぇ!? 三菱製[軽スポーツ]が今めちゃくちゃ[アツい]って知ってた??
えぇぇぇ!? 三菱製[軽スポーツ]が今めちゃくちゃ[アツい]って知ってた??
ベストカーWeb
ダサカッコいいトヨタ「ハイラックス」はレトロ風味に味付け! ナンバープレート「1985」は自身の誕生年のほかにもうひとつ意味がありました
ダサカッコいいトヨタ「ハイラックス」はレトロ風味に味付け! ナンバープレート「1985」は自身の誕生年のほかにもうひとつ意味がありました
Auto Messe Web
緊急避難なら駐車違反が罰せられないなら「腹痛で路駐してトイレに駆け込んだ」ってあり? 違反が免除されるケースとは
緊急避難なら駐車違反が罰せられないなら「腹痛で路駐してトイレに駆け込んだ」ってあり? 違反が免除されるケースとは
WEB CARTOP
スズキ「スイフトスポーツ」生産終了!? 貴重な「めちゃ安いMTハッチ」今後どうなる! 最後を飾る「特別なスイスポ」12月登場も「次期型」のウワサは?
スズキ「スイフトスポーツ」生産終了!? 貴重な「めちゃ安いMTハッチ」今後どうなる! 最後を飾る「特別なスイスポ」12月登場も「次期型」のウワサは?
くるまのニュース
一体なぜ? 自賠責保険への加入が必須の理由とは
一体なぜ? 自賠責保険への加入が必須の理由とは
バイクのニュース
これはリアビューカメラ? ジャガー、次世代EVコンセプトの新たな画像を公開
これはリアビューカメラ? ジャガー、次世代EVコンセプトの新たな画像を公開
AUTOCAR JAPAN
一般車両侵入でSS12中止のラリージャパン、主催者に約800万円の罰金! 執行猶予付き1600万円の追加罰金も
一般車両侵入でSS12中止のラリージャパン、主催者に約800万円の罰金! 執行猶予付き1600万円の追加罰金も
motorsport.com 日本版
日本に世界が注目!? 公道激走バトルの「ラリー」開催! 3年目の「ラリージャパン」どんな感じ? トヨタ会長が語る
日本に世界が注目!? 公道激走バトルの「ラリー」開催! 3年目の「ラリージャパン」どんな感じ? トヨタ会長が語る
くるまのニュース
新型3列シート電動SUV『アイオニック9』正式発表、充電中は4人が広々休憩も…ロサンゼルスモーターショー2024
新型3列シート電動SUV『アイオニック9』正式発表、充電中は4人が広々休憩も…ロサンゼルスモーターショー2024
レスポンス
全国に「警察軽トラ」配備へ なぜ? 警察庁初の取り組み、理由は? ダイハツ製61台を24年度中に導入! 各都道府県警察で運用
全国に「警察軽トラ」配備へ なぜ? 警察庁初の取り組み、理由は? ダイハツ製61台を24年度中に導入! 各都道府県警察で運用
くるまのニュース
転倒時にバイクを守る! エンジンガードは装着した方がいいのか?
転倒時にバイクを守る! エンジンガードは装着した方がいいのか?
バイクのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1040.01610.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

641.71358.0万円

中古車を検索
A110の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1040.01610.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

641.71358.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村