■エンジンにストーリーがある方が高値安定!?
生産台数が少なく、ハイパワーで高性能、そして誰もが魅了されるエキゾチックなアピアランスをもったスーパーカーは、当然ながら新車価格は非常に高額である。さらにいうならば、新車で手に入るということ自体が、セレブの格付けを示しているようなものでもある。
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こうしたスーパーカーが、オークションマーケットでどのような評価を下されるのか、RMサザビーズ北米本社が、アメリカ・アリゾナ州スコッチデールにて開催した大規模オークション「ARIZONA」の結果から見てみよう。
●1993 チゼタ「V16T」
最初に紹介するのは、チゼタ「V16T」である。1992年から生産がスタートし、1994年に倒産するまで、わずか8台しか生産されていない。チゼタは倒産後にイタリアからアメリカに本拠地を移し、チゼタ「モロダーV16T」という名で現在もオーダーを受けつけているので、新車で手に入れようと思えば可能なクルマでもある。そのため、1994年以降も細々とだが、生産されているようだ。
チゼタV16Tの特徴は、開発に関わった面々にあるといっていだろう。ボディデザインは、「ミウラ」や「カウンタック」をデザインしたマルッチェロ・ガンディーニで、そもそもカウンタックの後継モデルに描いていたデザイン案が当時の親会社であるクライスラーに却下されたため、このチゼタV16Tに採用されたという経緯がある。
そしてランボルギーニの黎明期にパオロ・スタンツァーニの片腕としてエンジニア経験を積んだクラウディオ・ザンポッリが、チゼタV16Tのプロジェクトを進めた人物だ。スーパーカーに必要なストーリーは、充分に揃っている。
今回のオークションに登場した個体は、シンガポールのディーラーから、ロイヤル・ブルネイのファミリーに代わってオーダーされたもので、理由は不明ながら25年以上にわたって、そのままディーラーに保管されていたという。右ハンドル仕様ながら走行距離はわずか983kmだ。
60万-75万ドル(邦貨換算約6230-7800万円)というエスティメート(予想落札価格)に対して、落札価格は66万5000ドル(邦貨換算約6970万円)という結果であった。
走行距離は少なかったものの、右ハンドル仕様ということと、高温多湿で紫外線の強いシンガポールで長く保管されていたためか、写真で見てもミントコンディションとはほど遠い、車内の傷み具合であったことがネックだったのかもしれない。
ただし、すでに新型車を次々とリリースするようなメーカーではないにも関わらず(事実上存在しないに等しい)、同時代のランボルギーニやフェラーリのフラッグシップモデルと比べると、かなり高額であることは注目に値する。チゼタは今後も大きく値崩れすることはなさそうだ。
●2020 マクラーレン「スピードテール」
ドライバーズシートをセンターにレイアウトするキャビンは、ゴードン・マーレーが設計した「F1ロードカー」から継承されたもので、限定生産数もそれに合わせて106台となる「スピードテール」。
スピードテールの特徴は最高速度が400km/hを上回っているという点だ。スーパーカーは、オーナーが使いこなせない性能を持っていることも重要な要素なのだ。「どこでそんなスピードを出すのか?」という疑問は、このクラスのクルマを購入するカスタマーにとっては愚問以外の何物でもない。
新車価格は175万ポンド(邦貨換算約2億4900万円)からで、106台すでにソールドアウトしており、2020年からデリバリーがスタートしている。新車で手に入れたくても購入者リストに入ることができなかったミリオネアもいたことだろう。
オークションに出品された個体は、106台中36番目の個体だ。ボディカラーはヘリテージ・アトランティック・ブルーと呼ばれる、MSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)のオーダーメイド色で、ボディサイドのピンストライプとのコンビネーションで、雰囲気はかなりスポーティな印象。
インテリアのフィニッシュも、MSOによってヴィンテージタンアニリンレザーやアルカンターラで、美しく仕上げられ、ゴージャスなテイストとなっており、新車価格からさらエクストラが支払われたことが分かる仕様だ。
走行距離はわずかに30マイル(約48km)で、コンディションは新車同然。最低落札価格は、350万-450万ドル(邦貨換算約3億6000万-4億7000万円)であったが、落札価格はそれを下回る327万7500ドル(邦貨換算約3億4400万円)だった。
パーソナライゼーションにかかった費用がどれほどか不明だが、欲しくても手に入らないスピードテールをすぐに入手できるプライスとすれば、妥当ともいえる落札価格といえよう。
●2019 マクラーレン「セナ」
マクラーレンのアルティメットシリーズとして登場した「セナ」の新車価格は、75万ポンド(当時の邦貨換算で約1億1000万円)であった。
500台限定生産で、2018年ジュネーブ・ショーでの正式発表前にすべてソールドアウトであったという。そのため、オークション・マーケットでは約191万ポンド(邦貨換算約2億8000万円)で売買が成立した記録も残されている。
出品された個体は、走行距離わずか800km未満で、36万ドル(邦貨換算約3700万円)以上のオプション装備が備わっており、単純に計算するとおよそ1億4700万円近い新車価格だったということが分かる。
この個体に付けられた最低落札価格は、100万-130万ドル(邦貨換算約1億400万-1億3500万円)と、すでにプレミアムが付くどころか、新車当時の車両価格を下回るエスティメートであった。
最終的な落札価格は、104万4000ドル(邦貨換算約1億950万円)。最新のスーパーカーは、納車後すぐに売りに出すか、それとも将来的な価格高騰を待つかのいずれかが正解なのかもしれない。
■過走行でも車種によっては落札価格に影響なし!
●2019 ケーニグセグ「レゲーラ」
今回のオークション「ARIZONA」に出品されたスーパーカー&ハイパーカーで、もっともジャッジが難しかった1台が、ケーニグセグ「レゲーラ」であるかもしれない。
その理由は、ハイブリッドであるという点にある。0-400-0km/h加速・停止の世界記録31.49秒を打ち立てたレゲーラであるが、純粋な内燃機関と違って、エレクトリックモーターならびにハイブリッドの技術は最新が最善であり、さらにイノベーションも日進月歩とあって、わずか数年で最新・最高レベルの技術が霞んでしまうことも珍しくない。スマートフォンなどの電化製品の進歩を思い浮かべてもらえば、納得してもらえるだろう。
チゼタV16TのV型16気筒エンジンは、すでに現在の技術からするとたいしたものではないかもしれないが、そのエンジンだけが持つ特有のフィーリングなどが、コレクションする側にとっては重要である。しかもV型16気筒エンジンを搭載するクルマはそうそう存在しておらず、それだけで価値があるのだ。
今回出品されたレゲーラは、2016年から2020年までの間に80台が生産されたモデルの内の1台となり、2019年式の個体である。走行距離が200マイル(約320km)未満という、新車同然の個体に付けられた予想落札価格は260万-290万ドル(邦貨換算約2億7000万-3億円)であったが、流札となった。現在は270万ドル(邦貨換算約2億8000万円)で継続販売中となっている。
●1998 ルーフ「ターボR」
最後に紹介するのが、ルーフが作った1998年式の「ターボR」だ。ドイツ・ファッヘンハウゼンにあるルーフ本社工場で生産された、ポルシェ「993」ベースのターボRは、RMオークションの調べではわずかに14台のみであるという。
いわゆるエキゾチックカーと呼ばれるようなスーパーカーとは違い、ルーフのようなスーパーカーを新車で購入するカスタマーは、自分で運転することが前提だ。この個体もデリバリー後約10年間で、3万6902マイル(5万9388km)を走行した後、カリフォルニア州ハンティントンビーチにある、気温や湿度管理もおこなわれる倉庫に2008年から保管されていたという。
その後、2020年にレストアを終了し、550マイル(855km)の走行がプラスされている。
このルーフに付けられたエスティメート(予想落札価格)は、52万5000-57万5000ドル(邦貨換算約5440-5960万円)であったが、最終的な落札価格は76万4000ドル(邦貨換算約7920万円)であった。
993型911の3.6リッター水平対向6気筒に、独自のツインターボ・システムを組み合わせ、最高出力490ps、最大トルク450Nmにまで高められ、6速MTのトランスミッションが組み合わせられたルーフ ターボRは、コレクションしてガレージに飾っておくよりも、積極的にドライブを楽しむクルマであろう。
ポルシェは(この個体はルーフだが)走行距離が伸びたとしても、きちんとレストアしてあれば、オークション・マーケットではマイナス要因になることが少ない。それは、ポルシェ自体の機械的信頼と運転して楽しむクルマであるという評価の表れなのであろう。今回紹介した5台のうち、新車同然の走行距離である他の4台と違い、過走行ともいえるルーフだけが、予想落札価格を大きく上回っていたのは、なんとも象徴的である。
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